日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第4章・郡山市の戦い 編

075:祖国の為に

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075:祖国の為に
 士気が下がり始めている月虎隊の歩兵を集めて、緊急の部隊会議を開くのである。


「200人弱で万の武将のところに行く為には、余計な戦いをしている暇はねぇぞ。だからこの縦長の陣形で、敵将めがけて一直線に突っ込むぞ!」


 俺は余計な戦いをしていれば、敵将・倉智のところに行く前に潰されてしまうと考えた。
 そこで縦長の陣形のままで、倉智のところまで一直線に突撃する事を指示した。


「問題は突入の瞬間だ。ここから先は、さすがに向こうも気づいて守って来る。その防御を薙ぎ飛ばして、突入口を開く為に先頭には4人の馬鹿力伍長を並べる」


 ここから先は向こうも俺たちの存在に気がついて、守りの陣形をとって来るのは予想ができる。
 なので突入の切り口を作る為に、俺は馬鹿力を持っている4人の伍長を先頭に据える事にした。
 俺が選んだ4人の伍長は仲野・田邑・茅、そして第20伍長である《黄担 光瑠おうたん ひかる》の4人である。


「黄担伍長、3人と違ってアンタとは初めてだが期待してるぞ! 何しろ田邑が言うには、馬鹿力は田邑の2人分くらいはあるって話だからな」


 この黄担伍長は田邑伍長の推薦で選ばれた人間で、馬鹿力でいえば剛力で有名な田邑伍長の2倍あるという。
 だからこそ俺は期待しているのだ。
 しかし黄担伍長は表情が固く顔色が悪かった。
 その事に俺は気が付かなかったが、香さんは気がついて「どうした? 顔色が悪いぞ」と聞いた。
 それに同調するように茅伍長は「怖気付いたのか?」と、ど直球な言い方で本人に言うのである。
 するとそれを庇うような事を近野伍長が理由を話す。


「先日男の子ガキが生まれたんだとさ。察してやんなよ、ここで死にゃ可愛いガキの顔は見れねぇし、いきなり片親になっちまう」


 そんな事を言われたら、この茅伍長以外にも当てはまる人間が大勢いるのである。
 その人たちは心の中で「自分だって」と思う。
 死にたく無いと必死に思い始めてしまった。
 このままでは士気以前に、戦場に立っていられなくなってしまうと香さんは感じた。

 しかしそんな不安を全て掻き消すように俺は「話の続きをするぞ」と言ったのである。
 そのいきなりさに歩兵たちは驚く。
 まず俺は「この少数部隊を矢に例える」と言った。


「武将のところまで行けば、その首を取る事はできる。届かなければ、そこで落とされて全員漏れなく死ぬ」


 俺たちが武将のところまで届けば、俺が確実に武将・倉智の首を取ってやると約束する。
 だが届かずに負けてしまったら、そこで俺たちは1人残らず死ぬ事になるだろうと言う。
 俺の演説は、ここからが本番である。


「そして俺らが失敗したら、目の前で戦っている左翼軍の皆んなも全員死ぬ………お前らの帰りを待っている村の人間たちもな!」


 俺は自分たちが作戦を失敗したら左翼軍は間違いなく全滅し、歩兵たちの帰りを待つ家族も死ぬと言った。
 その言葉に歩兵たちはハッとする。


「忘れたのか? この戦争に負けたら王国内に、合衆国軍が雪崩れ込んでくる。そうしたら白河のように、そこら中で虐殺が起きるぞ」


 このまま戦争に負けたら国内に、合衆国軍が雪崩れ込んできて色々なところで虐殺が起きる。
 俺は話を聞いているが、ここにいる歩兵たちは詳しくどんな虐殺が起きたのかは聞かされていない。
 というよりも伏せられていたという方が合っている。


「白河の赤子は1人残らず頭を潰され、血の池に捨てられたって話だ。なんでそこまでするのかは俺にも分からないが、アイツらは本気マジだ!」


 白河では理由が分からないが、赤子も1人残らず頭を潰されて殺されているというのである。
 この話を聞いた歩兵たちは、全身が震えるほどの怒りを感じている。
 どうして赤子まで殺すのかと。


「黄担伍長っ! 勝たなきゃ、お前のガキもそうなりかねないぞ………お前ら頭に叩き込んでおけ。これはそういう戦いなんだ!」


 俺は勝たなければ自分の子供も白河で起きたような事が、これから起こると言った。
 この戦いはそういう戦いなんだと付け足す。
 すると黄担伍長は、拳で地面を殴った。
 地面は割れて拳から少しの血が流れる。
 しかし気合を入れるには十分な流血だ。


「行こう隊長っ! オイラたちで、まず左翼軍の勝利を掴み取ろう!」


 さっきまでの恐怖心が黄担伍長からは消えた。
 そしてそれに続くように歩兵たちは、自分の家族を殺させて溜まるものかと気合を入れる。
 完全に息を吹き返したところで突撃を開始しようとする中で、俺は水城と花菱にいう。


「俺が先頭を切るから、お前たちは殿でタイミングを測りながら指示を出してくれ」

「了解ぃ」

「言われなくてもしようと思ってた」


 2人には殿を頼んで細かい指示を出すように頼む。
 俺は突進して開いた突破口から、切り開く事だけに集中しようと考えているのである。
 少しの心配と気合が入りながら俺たちは突撃する。

 すると直ぐに敵兵たちは気がついて「敵襲っ!」と叫ばれてしまったのである。
 しかし気づかれる事は前提の作戦だ。
 日中軍は盾を持った重歩兵たちを前に配置した。


「あ あの盾は左翼を止めたのと同じやつだ!」

「くそっ! 中に潜んでやがったのか!」

「あれは俺らじゃ、びくともしないぞ!」


 この重歩兵たちと俺たちの歩兵では衝突した瞬間、見るも無惨に砕け散るのが目に見える。
 どうしたら良いのかと思ったら、先頭を走っている4人の伍長の内に黄担伍長が飛び出す。
 さすがの黄担伍長だとしても、このままでは蜂の巣にされて戦死してしまうと歩兵たちが叫ぶ。


「(田邑さん、あんたは1つ勘違いしてる!)」


 黄担伍長は頭の中で妻と子供の事を思い浮かべる。
 そして田邑伍長に勘違いしている事があると考えた。
 全員が心配する中で、黄担伍長は金棒を振って重歩兵を簡単に吹き飛ばしたのである。
 これが田邑伍長が勘違いしている事だ。
 黄担伍長は田邑伍長の3倍の馬鹿力があるのだ。

 俺は凄い奴を連れてきたと興奮した。
 この勢いを殺すわけにはいかないと思って、歩兵たちに「月虎隊、突撃だぁ!」と叫び突撃する。

 この光景は本陣にいる元帥も見えていて「突入は成功したみたいだな」と言ったのである。
 突入は成功したのだが、ここから2つの問題があると有寿中将に話す。
 このまま敵将である首を取れるか。
 そしてもう1つは、と言ったところで有寿中将が先に答えるのである。


「それまで左翼軍が耐えられるのか………ですね?」

「その通りだ。左翼軍の被害が思ったよりも大きくなりそうだからな」


 俺たちが敵将・倉智を討ち取るまで、この左翼軍が持ち堪えられるかが問題の争点となる。
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