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第4章・郡山市の戦い 編
082:恐るべき武
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082:恐るべき武
越は向かってくる柳本軍に対して「蛇を使うぞ」と部下たちに指示を出すのである。
その瞬間、日中中央軍の陣列が変わる。
中央軍の陣列は後曲が横にずれ、突入点の真後ろに厚みを作るというものに変わった。
そして前曲は大きく折り曲がり、柳本軍の背後まで覆い被さった。
これはもはや守備の陣列では無い。
日中軍は柳本軍を討つつもりだ。
この光景を本陣から見ている元帥は「ありゃあ、一気に行くかと思ったが、越の方が上手だったか」という。
有寿中将も「見事な陣列の変形です」と褒めた。
これは完全な囲い込みだ。
このままでは昨日の左翼軍の二の舞になってしまう。
この状況には、もちろん柳本中将も気がついている。
周りを確認してから「全軍に告ぐ!」と叫ぶ。
歩兵も騎馬隊も全員が、柳本中将の方を見て何をいうのかと思っていると「殺せぇ!」と叫んだ。
それだけかと思うところではあるが、この殺せぇという言葉を聞いた瞬間に全員が「うぉおおお!」と雄叫びを上げて盛り返し始めた。
「殿、これは……」
「はっはっはっ! 面白くなってきたじゃねぇか」
元帥すらも面白いと思う戦いぶりをする。
しかし先頭を切って戦っている以上、敵兵たちは「討ち取れ!」と叫ぶのである。
だが柳本中将の勢いを普通の兵士では止められない。
化け物かと思うほどの勢いで、柳本中将たちは進軍をし続けるのである。
この進撃に越の側近たちが怯える。
「あの男……どうしますか、越さま?」
「かまわん、続けよ……個の力など、たかが知れている」
越は1人だけ凄くても、たかが知れているという。
このまま作戦は続行となる。
それにしても柳本中将の戦いぶりは凄すぎる。
そんな光景を俺たち月虎隊も目撃している。
俺たちは本陣下で待機中である。
こんな光景を見せられてしまったら、柳本中将の実力を信じざるを得ない。
しかし新人である俺でも、ある問題を理解している。
こんな戦いぶりが戦場の真ん中で続くわけがない。
淳士たちは包囲を受けている中で、この戦い方はあまりにも無理があるという。
そういう話をしている中で淳士は、戦場を見つめながら軍師学校の先生である照内司令部長を思い出す。
「腕力で敵わぬ相手を討つ為に武器を使う。強き武将を討つ為に人数を集める。大人数の戦いを有利にする為に策を練る。万を超す規模の今の戦場では策が全て………だが、そうあるが故に全く逆のものを見てみたいと願うこともある」
この事を照内司令部長は淳士に言っていた。
そしてこの続きに「この事を実現できるのは、お前の父親である………宗茂だけだ」と話した。
すると柳本軍を包囲していた日中軍が消えかかる。
淳士は目の当たりにするかも知れない。
力が策を凌駕するところを。
この光景を前に越は「化け物が……いったん退くぞ」と本陣だけを後方に退かせるのである。
まだ柳本軍は包囲を脱出していない。
このままでは敵将・越に逃げられてしまう。
「(柳本よ……貴様の矛は俺には届かないぞ。この首は倉智ほど安くないぞ!)」
そう思いながら越は退却していくのだが、柳本中将の狙いは全くもって別だった。
「(ふっ! 越よ、何を勘違いしている………貴様如きの首に全く興味は無いわ!)」
そう心の中で叫ぶと歩兵と騎馬隊に向かって「全軍に告ぐ! 蹂躙せよ!」と指示を出した。
そのまま柳本軍は越軍の残兵を攻撃し始めた。
この行為は何を意味しているのかと、俺たちは考えているが元帥は意味を理解している。
「残兵とは言えど2万はいる。それを葬ってくれるのならば絶大な戦果だと言えるだろう」
「相手は武将が離脱してしまった。今の柳本軍ならば一方的でしょうな」
2人の言う通り指揮官を失った残兵たちは、柳本軍に蹂躙され始めたのである。
こんな光景を見ている元帥は若干引く。
「あの斜列からの囲い込みを力のみで打ち破るとはな。これじゃあ兵法なんて馬鹿みたいなものだな」
「はい! 全くもって反則的です!」
「これは策で戦う人間には衝撃的だな。しかし困った事に、奴らは成長過程にある………」
このまま今日1万を喰らう事ができれば柳本軍は、さらに強大な力を持つ事になる。
柳本中将は大和全土に名は広がっているが、その評価については未だに定まってはいない。
駒井外務卿が手元に置いておきたいという為、前線に出る回数が少ない事が、その原因である。
1人よがりに暴走する武将という噂が広まっているのだが実像は全く異なる。
柳本中将の軍に関する理解は非常に深い。
あの照内司令部長と共に成長してきた影響だ。
「ここにきて主攻をはれる軍が現れたのは、とても喜ばしい事ですね」
「まぁそう言い切るのは時期尚早だが………今回が偶然という事もありえる。柳本の評価をするのは、ここからさらに1・2戦してからでも遅くない」
中央の越軍が崩壊した事で背後を突かれる恐れがあるとして、日中左翼軍は早々に引き上げた。
これで2日目の戦いは幕を下ろした。
俺たちの出番は2日目には無かった。
淳士と実里は2日目の総括を夜に行なう。
実里は淳士の実の父親である柳本中将の戦いぶりに感動すら覚えているのである。
それには淳士も同意している。
「あぁ力で、ねじ伏せてしまった。話には聞いていたけど、あそこまで剛腕だったとは思わなかった………軍師を目指す立場の僕としては正直、認め難い事実だ」
「父が力技の武将で、その子供が軍師か………親子なのに真逆だね、仲悪い?」
「あの人にとって親子なんて関係は大した事じゃない。大和最強に至る道こそ、あの人の人生の意義なんだ」
「大和最強かぁ……あの人らしいよねぇ」
淳士は昔から感じていたのだ。
柳本中将は家族とか、そういう枠組みに興味はなく、興味があるのは自分が大和最強になる事だけだ。
それこそが、あの人の人生の意義である。
「全く馬鹿げた話だよ。この時代に武力だけで大和最強になるなんて………宗茂の戦い方は明らかに時代と逆行している。大和最強なんて漠然としているが、もしそれに当てはまるような武将がいるとすれば………それは高度な知略を起こし実行できる武将のはずだ」
「でも、それを覆そうとしているのが淳士の父親なんだろ? 逆に凄い事じゃないの?」
どうやら軍師として淳士も複雑な気持ちがあるみたいだが、やはり腐っても父親なので応援している。
これだけ掻き乱しているのだから、まだまだ柳本中将を中心に戦争が進みそうだと淳士は考える。
越は向かってくる柳本軍に対して「蛇を使うぞ」と部下たちに指示を出すのである。
その瞬間、日中中央軍の陣列が変わる。
中央軍の陣列は後曲が横にずれ、突入点の真後ろに厚みを作るというものに変わった。
そして前曲は大きく折り曲がり、柳本軍の背後まで覆い被さった。
これはもはや守備の陣列では無い。
日中軍は柳本軍を討つつもりだ。
この光景を本陣から見ている元帥は「ありゃあ、一気に行くかと思ったが、越の方が上手だったか」という。
有寿中将も「見事な陣列の変形です」と褒めた。
これは完全な囲い込みだ。
このままでは昨日の左翼軍の二の舞になってしまう。
この状況には、もちろん柳本中将も気がついている。
周りを確認してから「全軍に告ぐ!」と叫ぶ。
歩兵も騎馬隊も全員が、柳本中将の方を見て何をいうのかと思っていると「殺せぇ!」と叫んだ。
それだけかと思うところではあるが、この殺せぇという言葉を聞いた瞬間に全員が「うぉおおお!」と雄叫びを上げて盛り返し始めた。
「殿、これは……」
「はっはっはっ! 面白くなってきたじゃねぇか」
元帥すらも面白いと思う戦いぶりをする。
しかし先頭を切って戦っている以上、敵兵たちは「討ち取れ!」と叫ぶのである。
だが柳本中将の勢いを普通の兵士では止められない。
化け物かと思うほどの勢いで、柳本中将たちは進軍をし続けるのである。
この進撃に越の側近たちが怯える。
「あの男……どうしますか、越さま?」
「かまわん、続けよ……個の力など、たかが知れている」
越は1人だけ凄くても、たかが知れているという。
このまま作戦は続行となる。
それにしても柳本中将の戦いぶりは凄すぎる。
そんな光景を俺たち月虎隊も目撃している。
俺たちは本陣下で待機中である。
こんな光景を見せられてしまったら、柳本中将の実力を信じざるを得ない。
しかし新人である俺でも、ある問題を理解している。
こんな戦いぶりが戦場の真ん中で続くわけがない。
淳士たちは包囲を受けている中で、この戦い方はあまりにも無理があるという。
そういう話をしている中で淳士は、戦場を見つめながら軍師学校の先生である照内司令部長を思い出す。
「腕力で敵わぬ相手を討つ為に武器を使う。強き武将を討つ為に人数を集める。大人数の戦いを有利にする為に策を練る。万を超す規模の今の戦場では策が全て………だが、そうあるが故に全く逆のものを見てみたいと願うこともある」
この事を照内司令部長は淳士に言っていた。
そしてこの続きに「この事を実現できるのは、お前の父親である………宗茂だけだ」と話した。
すると柳本軍を包囲していた日中軍が消えかかる。
淳士は目の当たりにするかも知れない。
力が策を凌駕するところを。
この光景を前に越は「化け物が……いったん退くぞ」と本陣だけを後方に退かせるのである。
まだ柳本軍は包囲を脱出していない。
このままでは敵将・越に逃げられてしまう。
「(柳本よ……貴様の矛は俺には届かないぞ。この首は倉智ほど安くないぞ!)」
そう思いながら越は退却していくのだが、柳本中将の狙いは全くもって別だった。
「(ふっ! 越よ、何を勘違いしている………貴様如きの首に全く興味は無いわ!)」
そう心の中で叫ぶと歩兵と騎馬隊に向かって「全軍に告ぐ! 蹂躙せよ!」と指示を出した。
そのまま柳本軍は越軍の残兵を攻撃し始めた。
この行為は何を意味しているのかと、俺たちは考えているが元帥は意味を理解している。
「残兵とは言えど2万はいる。それを葬ってくれるのならば絶大な戦果だと言えるだろう」
「相手は武将が離脱してしまった。今の柳本軍ならば一方的でしょうな」
2人の言う通り指揮官を失った残兵たちは、柳本軍に蹂躙され始めたのである。
こんな光景を見ている元帥は若干引く。
「あの斜列からの囲い込みを力のみで打ち破るとはな。これじゃあ兵法なんて馬鹿みたいなものだな」
「はい! 全くもって反則的です!」
「これは策で戦う人間には衝撃的だな。しかし困った事に、奴らは成長過程にある………」
このまま今日1万を喰らう事ができれば柳本軍は、さらに強大な力を持つ事になる。
柳本中将は大和全土に名は広がっているが、その評価については未だに定まってはいない。
駒井外務卿が手元に置いておきたいという為、前線に出る回数が少ない事が、その原因である。
1人よがりに暴走する武将という噂が広まっているのだが実像は全く異なる。
柳本中将の軍に関する理解は非常に深い。
あの照内司令部長と共に成長してきた影響だ。
「ここにきて主攻をはれる軍が現れたのは、とても喜ばしい事ですね」
「まぁそう言い切るのは時期尚早だが………今回が偶然という事もありえる。柳本の評価をするのは、ここからさらに1・2戦してからでも遅くない」
中央の越軍が崩壊した事で背後を突かれる恐れがあるとして、日中左翼軍は早々に引き上げた。
これで2日目の戦いは幕を下ろした。
俺たちの出番は2日目には無かった。
淳士と実里は2日目の総括を夜に行なう。
実里は淳士の実の父親である柳本中将の戦いぶりに感動すら覚えているのである。
それには淳士も同意している。
「あぁ力で、ねじ伏せてしまった。話には聞いていたけど、あそこまで剛腕だったとは思わなかった………軍師を目指す立場の僕としては正直、認め難い事実だ」
「父が力技の武将で、その子供が軍師か………親子なのに真逆だね、仲悪い?」
「あの人にとって親子なんて関係は大した事じゃない。大和最強に至る道こそ、あの人の人生の意義なんだ」
「大和最強かぁ……あの人らしいよねぇ」
淳士は昔から感じていたのだ。
柳本中将は家族とか、そういう枠組みに興味はなく、興味があるのは自分が大和最強になる事だけだ。
それこそが、あの人の人生の意義である。
「全く馬鹿げた話だよ。この時代に武力だけで大和最強になるなんて………宗茂の戦い方は明らかに時代と逆行している。大和最強なんて漠然としているが、もしそれに当てはまるような武将がいるとすれば………それは高度な知略を起こし実行できる武将のはずだ」
「でも、それを覆そうとしているのが淳士の父親なんだろ? 逆に凄い事じゃないの?」
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