日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第4章・郡山市の戦い 編

085:立花という男

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085:立花という男
 北星右翼軍は兼田少将が塩丈を引き付けている間に、村松少将が山中に侵攻する最中だった。
 中央軍は柳本軍が正面から越・渋川の両軍を突き破る最中だったのである。
 北星左翼軍は着々と山中の砦を攻略している最中だ。
 そんな中に染谷の伝令は伝わった。
 全武将が反応したが、その中で最も伝令にものを感じたのは渋川だった。


「(早めに踏み切ったな。こうなった以上、その手は上策であろう………次の戦を仕掛けるには、軍隊の戦力を保つのは当たり前の事だ)」


 これまでの戦いから一転して、戦況が大きく変わろうとしているのである。
 その戦況を変える人間は、もう戦場に到着している。
 その人物は山中を登っている。


「馬で迂回した方が良かったんじゃないですか?」

「いえ! こっちの方が近いと聞きましたので!」


 山中を登っているのは灰色の髪の毛をしている男と、黒髪ロングを後ろでポニーテールにしてる女性だ。
 この2人は色々と話しながら山中を登る。
 そして見晴らしの良い崖のところまで来た。


「おぉ! やってるやってる間に合いましたね。ほらほらご覧なさい、美玖っ!」

「えぇ見てますよ」

「さぁ皆さんっ! 望里がやって来ましたよ!」


 この男は《立花 元春たちばな もとはる》と言い、女性の方は《千代田 美玖ちよだ みく》と言うのである。
 この2人が見つめる先には苛烈な戦いが写っている。

 一方で俺たちは山中の砦攻略に取り掛かっている。
 上から矢の雨が降ってくるので、盾を使いながら山中を登り続けるのである。
 向こうも登って来られないように必死に弓を引く。
 それに対抗するべく俺は「黄担、行くぞ!」と腕力がある黄担を使って防壁を壊す作戦だ。
 しかし黄担伍長だけでは良い的になるので、近野伍長と安土伍長に援護するように指示を出した。

 その指示通り近野伍長と安土伍長は、弓矢隊を翻弄しながら防壁に近づいて先頭の奴らを斬る。
 近野伍長は「お膳立てはした………行け黄担!」と言って道をスッと開けるのである。
 黄担伍長は金棒を振り上げると、一気に防壁を殴って期待以上の働きをしてくれた。
 俺は「開いたぞ! 流れ込め!」と続けて指示する。
 そのまま俺たちは雪崩れ込む。

 このまま攻略しようとし始めたところで、生山少将と田野丘少将は日中軍の伝令兵が来た事に気がつく。
 その伝令兵が緊急司令を伝える旗を掲げていた。
 これを見る限りでは、本陣で何かあったのかと考える方が適切だと思えるのである。
 しかしどういう事なのか。
 日中兵が退却して行った。

 俺たちは何が起きているのかと理解できていないが、遠くから見ている淳士たちは状況が無くとなる分かる。
 合衆国の中央軍が左右に割れて行った。
 これでは柳本中将の前に本陣が丸見えである。
 軍師たちは何をやっているのかと困惑している中、淳士は「既に本陣を移動してある!?」と考えた。


「へぇ早くも日中軍は雲隠れするみたいですねぇ」

「そんな事よりも先客がいるみたいですよ?」


 淳士たちが話していると、そこに立花と千代田たちがやって来たのである。
 こんなところに人が来るなんておかしいと、軍師たちは警戒するが、立花の方は「どうもぉ~」と言う感じで軽く接してくる。

 2人に警戒しているうちに俺たちは山頂に登り、急いで日中軍の軍旗を折って倒す。
 そして自分たちの旗を掲げる。
 すると自分たちが勝ったのだと勘違いする歩兵たちが現れるのである。
 それを伍長たちが否定する。


「ここはもぬけの殻だったろ。奴らは戦力を、そのままで本陣の位置を変えたんだ」

「い 今から追いかけるのか!?」


 矢沼伍長は状況を理解している。
 それに対して正は、命懸けで登って来たばかりなのに今から追いかけるのかとオドオドする。
 そんな正に俺は「当たり前だろ!」と言う。


「ここまで来て逃すわけにはいかねぇだろ! 今すぐに追えば士気の差を、そのままに一気に討つ事ができる」


 俺は今からでも追えば、士気を保ったまま逃げて行った本陣の背を討てると考えている。
 それにしても軍団長たちは何をしているのかと思う。
 こんなところでモタついていたら追いつかなくなる。
 そんな風に俺が考えている時、軍団長たちは話し合いをしているのである。


「しかしこれでは敵が、どこにいるのか分からぬな」

「そうでもないぞ? 山が切り立っているからこそ、万の軍隊がどこに配置されているのか読める。上から眺めれば場所なんて一目瞭然だ」


 村松少将は森の中に入られてしまったら、どこにいるのかを判別するの無理だと話す。
 それに否を唱えたのが曄道少将である。
 曄道少将は万の数が居るからこそ、この森の中で配置されたのかを確認する事ができると言う。
 しかし曄道少将は付け足すように続ける。


「だが、もちろん向こうも気がついているだろう。奴らは場所がバレている前提で対応するはずだ」

「曄道は追うべきだと思うのか?」

「田野丘、俺に聞くなよ。昨夜の会議で殿が言っていただろうが………それを決めるのは柳本中将だ」


 曄道少将に田野丘少将は、それならば追うべきなのかと質問をするのであるが答えなかった。
 その答えを出すのは自分では無く、ここにいる全指揮権を持つ柳本中将だと言った。

 そんな事を言われた柳本中将は、昨夜の会議を静かに思い出していたのである。
 全軍の指揮権を持つように言われた後に、元帥は1つ付け加える事があると言っていた。


「日中本陣の山を制圧しても、本陣自体は討たれる前に後方の山に逃げる事も考えられる。追うか、追わないかの判断は日中軍と我らの軍の状態を見る必要があり、その判断ができるのは現場の武将だけ………つまり柳本、お前が決めるんだ」


 元帥は追うか、どうかの判断は当日の状況を見た上で現場の武将しかできないと言う。
 つまり柳本中将に決定権があると話した。


「理解していると思うが山間の戦いは、友軍との連携が至難だ。その時は冷静に対応しろ」


 元帥は山間の戦いは連携が取りづらく、とてつもない危険を伴うと話すのである。
 そして柳本中将に何かあった時は、冷静に判断して対応するように話す。
 この事を思い出していた。
 その記憶を踏まえた上で、柳本中将は「無論追う」と想定内の答えを出した。


「異論はありませんな。しかしその前に大事な確認をさせていただきます………昨夜、牛丸元帥が話されていた約束を覚えていますか?」


 昨日の夜、柳本中将は突撃するにあたって約束事を元帥としていたのである。
 それは〈範囲〉だ。
 追い討ちをかけて良いのは、合衆国の本陣があった山が見える範囲までと言うものだ。
 それだけは破らないように念を押した。


「あぁもちろん分かっている」

「そうですか。それでは向かいましょう」


 それを確認が取れた後に、追い討ちをかけに向かう。
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