日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第4章・郡山市の戦い 編

084:シーソーゲーム

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084:シーソーゲーム
 昨日の作戦を装っていたのは、合衆国だけではなく王国側も同じだったのである。
 スパイの可能性を考え、作戦を全軍に伝えたのは陣列を取って出陣をする直前だった。


「な なに!? 全軍で合衆国の本陣を討つ!?」

「お おい! 大きな声を出すなと言ってるだろ!」


 俺は驚きすぎて声を出してしまって、伝令にやってきた兵士に頭を小突かれる。


「それとお前たち月虎隊は、第4軍に組み込まれる事となったぞ」

「第4軍ですか!? それって田野丘少将のところか」


 俺たちは指示通りに第4軍の方に移動する。
 ここら辺で良いのかと場所を、イマイチ理解できていない感じでいると歩兵たちがザワザワしている。
 何か見られているような感じがして、何で見られてるんだろうと思ったら、月虎隊が武将・倉智を討ち取った事が広がっていたのである。
 その為、俺たちの方を見ていた。
 そして歩兵たちは俺の事を若いのに剣が上手い凄い人間だと褒めてくれるのである。


「来たか、月虎隊っ! 貴様らの奮戦期待しているぞ」


 俺たちが照れているところに、第4軍の軍団長である田野丘少将がやってきた。
 やはり倉智を討ち取った事で、田野丘少将にも少しは認めて貰っているみたいだ。


「小僧、今日も再び激戦となる覚悟しておけ!」

「そんなの望むところですとも!」


 俺は激戦になるなんて覚悟をしているつもりだ。
 どんなところでも結果を残してやるという意思があると、田野丘軍団長に伝えるのである。

 かくして開戦4日目にして、この戦いで最も苛烈な戦いがスタートしようとしている。
 4日目の口火を切ったのは、もちろん柳本中将だ。
 柳本中将の「全軍突撃ぃいいい!!!!」という言葉と共に柳本軍は突撃を開始する。

 柳本中将たちが突撃したのを隣の戦場から見ている塩丈は「直ぐに会いにいく」と思っていて、それに対して饒平名は「焦るな、染谷の合図を待て」という。
 いつ来るのかと思っている塩丈たちに対し、染谷はジッと本陣で柳本たちを見つめている。


「(まだだ、塩丈・饒平名。背後を取るのは、柳本が深くまで入って来てからだ………柳本軍が半ばを、過ぎた時に全身を開始すれば良い)」


 そんな事を考えていて柳本軍が、日中中央軍の半ばを過ぎるのを確認してから「今だ!」と判断する。
 そのタイミングで「出陣だぁ!」と生山少将が突撃して来たのである。
 それに染谷は「なに!? 中央後衛の軍が動くだと!?」という風に驚いている。
 この生山少将の突撃を皮切りに、全軍団長の軍が中央に向かって突撃を開始した。

 敵将たちは直ぐに理解した、これは俺たちが日中軍本陣である染谷を狙っているという事に。
 染谷は「牛丸……貴様は4日目にして全軍で攻めてくるというのか………」と言葉を失う。
 しかし染谷は「失敗すれば、取り返しのつかない致命傷になりかねないんだぞ」と考える。
 だが牛丸は失敗するとは思っていない。
 それは柳本中将が先陣を切っているからだ。

 俺は軍団長の後ろを走って追いかけるのであるが、とてもじゃないが呼吸なんてできないくらい張り詰める。
 仲間ですら、これなのに敵本陣はどんな気持ちなんだろうかと笑みが溢れてしまう。
 どういう気持ちなのかというと染谷は思った。


「(国境を越え侵攻して来たのは合衆国俺たちであり、向こうは防衛している………守備に回るのは、お前たちであるはずだ。だが、これが牛丸の戦い方か)」


 染谷は守っているはずの北星軍が、攻める方向に転じている事に驚いているのである。
 染谷は信じられないが、柳本中将が引っ張るように全軍が覇気を纏っているように戦う。
 しかしそんな北星軍の前に塩丈が立ち塞がる。


「何を血迷っているか。田舎の猿どもが攻めてくるとは身の程、知らずも甚だしいな!」

「お前こそ何を寝言を言っている。豚は、いつの時代も人間に追われる身だろうが」


 塩丈の前に現れたのは栄通少将である。
 栄通少将は塩丈の太っている見た目を豚と揶揄して、大勢の前で馬鹿にした。


「あまり背伸びをすると恥ずかしい死に方をするぞ?」

「やはり豚の言葉は、何を言っているのか理解する事なんてできぬな」

「なにぃいいい。あんたは、もう死んだよ」


 ここで栄通少将と塩丈の戦いが始まろうとしている。
 一方で俺たちのところは、柳本軍の方に気が散ってしまって楽に戦いが進んでいる。
 俺たちはその隙に本陣へと進んでいく。
 このまま俺たちは生山少将・田野丘少将と共に、本陣の山の麓に侵入しようとしていた。

 軍師たちは戦場を見ている中で、とてつもない事になって来たと話しているのである。
 両軍が総攻撃を開始したからだ。
 そしてもしかしたら今日で決着が着くかもしれない。


「既に左から山に入った軍があったぞ………まさか、このまま一気に片付くんじゃ」

「でもあの軍は素通りだったよ? ちょっと気になると思うんだけど………」

「おそらく山中に守備隊がいるんだ。しかも地の利は、どうしても向こうにある………」


 淳士たちの予想通りだった。
 俺たちが山を登って見ると、山の中腹あたりに木材で防壁を作ったりと自然の要塞化が行われていた。
 こんなのを登るのは、とてもじゃないが大変だ。
 田野丘少将もチッと舌打ちをするレベルである。
 しかし生山少将は「怯むな! 駆け上がれ!」と叫んで注目を集めると「ここを抜ければ本陣だ! 敵味方は関係なく骸を盾にしてでも駆け上がれ!」と指示する。
 何より生山少将が考えているのは、この場面は血を流さなければ先に進み道は無いと。

 本陣の喉元まで迫っている事に、軍師である染野は気にしてはいなかった。
 それよりもこれからの全体の動きが気になる。
 この染谷の当初の予定では、回数をかけて北星軍の兵力を削り続け、痩せ細ったところを最上を当てる。
 これで一気に元帥の首を取れるはずだった。
 だが蓋を開けてみたら、4日で逆に本陣まで迫られているという状況である。


「(今の北星軍の主力は柳本軍だ。もし倉智が居たとするならば、越と組んで柳本を早い段階で討ち取るはずだった………だが牛丸は初日に倉智を狙い撃ちした。続いて4軍で柳本を討ち取ろうとしたが、今度は総攻撃を受けて、それも差し止められた)」


 この全軍統率できる将がいない中で、ガラにもなく総大将代理を務めた染谷は、策の駆け引きでは元帥にも引を取らぬ自信があったからだ。
 しかし元帥の手は常に染谷よりも一手先を行く。
 この状況に染谷は「俺では及ばぬか……」と思った。


「(山中に砦を築いたが、これもいずれ突破してくるだろう。本陣も持って半日か………)」


 こんな風に諦めてもおかしくは無い状況だが、まだ行けると染谷は「本陣を動かすぞ!」と指示を出した。
 伝令兵に各武将に伝令をしろと伝える。
 しかし伝令兵は、どこに陣を動かすのかと聞く。
 その質問に染谷は「後ろだ」とだけ言う。
 
 何よりも、この戦争は普通じゃないと思っている。
 この戦争は元帥か、それとも最上のどちらかが死ぬまで終わりはしないだろう。
 これが本当の事実だとして、染谷は「どんな手を使っても勝利を掴む」と誓った。
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