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魔界の少女
「期待」
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「サファ、お前なぁ……」ナウントレイはあきれ果て、そろえた指を眉間に当てた。
「温泉休暇に目がくらんでうっかり口すべらせちゃって……ごめん! ごめんなさいっ!」サファイアはあやまるよりほかなかった。
「口をすべらせたことはもちろんだけどさ。ドラジャ王子は人間界に潜伏するんじゃなくて征服するおつもりなんだろ? そういうの、間違えるなよ」
「あたし言い間違えちゃった? けど、どっちも似たよおなもんじゃん」
「人間界なんて前代未聞だ。王子をお止めするべきかどうか……」
「で、でもさっ。王のお許しが得られれば別に問題はないでしょ!? お許しが得られなければ、王子だってあきらめるしかないだろおし」
「あきらめられると思うか? あの王子が……」
「あきらめない!? あきらめないよね、やっぱ……」
朝の空がだんだんと濃くなってきた。青く色づいてはいるが、今朝はあいにくところどころで雲が層をなし、陽光が地上に届きにくくなっている。
ナウントレイとサファイアは、日差しの弱いボツオール橋で欄干にもたれ、第一王子ギリザンジェロを待っていた。ナウントレイは時々、手首をもう片方の手でかばうように押さえている。
「痛むんだね。大丈夫?」
「ジンジンしびれてるんだよ。レオンの指摘通り、しばらく実戦から離れていたせいだろうな。情けないよ。ファーストシェードの名が泣くよな」
「仕方ないよ。あのジブ先輩と真っ向から渡り合ったんだもん。あたしなんか感情的になるばっかでなんの役にも立てなかったし」
サファイアは、ナウントレイとジブノッカの激闘、力と力が衝突する迫力を間近で体感し、如何ともしがたい男女の腕力の差を改めて思い知らされはがゆかった。
女子シェードは皆、膂力では男子にかなわない分、戦術や技、スピード、魔力、それらにとりわけ磨きをかけるべく精進してきた。それでも、男に対する劣等感、どうにもならない不公平感は完全に捨てきれるものではなく、今日みたいな戦いを前にすると己の無力さを痛感して内心はモヤモヤとしたやるせなさでいっぱいだった。
「……ナウくん、毅然とした戦い方でかっこ良かったよ。見直しちゃったわ」
「見直すって……サファは知ってるだろう? 僕はホントは逃げ出したいくらいビビッてたんだ。ほぼほぼ押され気味だったのに『かっこいい』とか、からかうなよ」
ナウントレイはナウントレイで同じく無力感にとらわれているようだ。浮かない顔でぼんやりと空を仰いでいる。
「事を大きくしないよおに、あえて本気出さなかったんでしょ? ビビッていながらジブ先輩相手にあんな冷静に立ち合えるなんて、マジすごいよ」
「ジブノッカだって本気じゃなかったさ。それに僕は、ゼスタフェさんの手を煩わすことなく事態を収拾するのに躍起になってただけなんだ。ちっぽけな見栄っていうか、しょうもない意地みたいなもんだよ。結末はまさかの野良犬に救われる形であえなく終了だったけど、犬に感謝してる自分が情けないよ」ナウントレイは苦笑いした。
ナウントレイは、サファイアのシェード相棒だが年齢もシェード歴もサファイアよりずっと先輩だ。生まれ育った環境も、みなしご孤児院育ちのサファイアに対し、ナウントレイは名門貴族の嫡嗣で雲泥の差がある。
年齢や経験年数、生い立ち、身分など、そんなものはシェードにはいっさい関係ない。実力だけが全て、それ以外は通用しない世界なのだ。
「ねえ。ギリザ王子、遅くない?」
「まだ王にお会いできてないんじゃないのか?」
「ゲッ! そんじゃあ、あたしらいつまで待たされんの?」
「こんなこと珍しくもないだろ?」
「そりゃそおだけど、ジブ先輩のせいでドッと気疲れしちゃったからさ……」
「僕たちの都合でもの言っちゃダメだ。僕たち楯守シェードはいつだって、王子のご都合に合わせなきゃならないんだからさ」
「さすがだね、ナウくん。なんだかゼスタフェさんみたいだよ」
「だから、からかうなって。僕みたいな臆病者、ゼスタフェさんみたいには到底なれやしないんだからさ」
欄干から背中を放したナウントレイは身体の向きを180度変え、今度は橋の下を流れる川を俯瞰した。空を仰ごうが川を俯瞰しようがやはり浮かない顔つきでネガティブモードは続いているようだ。
ナウントレイもまた、ゼスタフェを尊敬し憧れている。シェード達はたいていそうだ。ゼスタフェを目標に日々努力を重ねているのだ。
ゼスタフェを見習い、ナウントレイはファーストシェードである事や、第一王子付きのシェードである事を常に意識している。だからこそ、何かある度に自分で自分を問責し、とことん猛省するのだ。
「毎度毎度、ナウくんは自分に厳しいよねぇ~ センジとは正反対だわ」
「センジって、お前の幼なじみのか?」
サファイアがポロリとこぼした名前にナウントレイは敏感に反応した。互いに信頼し合っているナウントレイには、サファイアは自らの過去を大まかに話していた。
「うん。いい加減なポンコツ野郎だよ。今頃人間界でどおしてんだろ。おっきくなってるだろ~なぁ。ポンコツのまんまなのかなぁ?」
「……なあ、サファ。あんまり期待するなよ?」ナウントレイは横目でサファイアを見た。
ナウントレイの目は硫黄色だ。目と同色のサラサラの髪が朝の陽光に輝いている。その鮮やかさが、色は違えどセンジの種を思わせ、サファイアは束の間、見入っていた。
「サファ。お前、人間界に行けることをひそかに期待してるんだろう? もし行けたところでセンジに会えるとは限らないぞ? 人間界だって狭くはないだろうからさ」
「わ、分かってるよっ。だいたいあたしは人間界行けるなんて期待、してな……い……」言い返しながら実は図星で言葉に詰まり、サファイアの語尾は尻すぼみになった。
「……おおいにしてるのかも。期待」
サファイアもまたおもむろに身体の向きを変え、ナウントレイと肩を並べて欄干から川を見下ろした。橋の下を蛇行するその川は、「龍の崖路」を挟む底深いスドロオウン峡谷へつながる渓流だ。
シェードの住処の部屋にも、辺りが静まり返っていると川の流れる音が聞こえてくる。
「センジの家の近くにも川があってさ。時々水遊びしたっけなぁ」サファイアは子供の頃を懐かしんだ。
「孤児院の仲間より、センジとの思い出の方が多いんだな」
「だってあたし、孤児院なんて大嫌いだったもん。話したでしょ? しょっちゅう抜け出して夜遅くまで街をプラプラしてたって」
そしてある夜、人身売買の組織に拉致されそうになったサファイアを、センジの母ベクセナが助けてくれた。それをきっかけにベクセナ、センジ親子と仲良くなったのだ。
「センジのお母さん……おばさんは、あたしを養女にするって言ってくれたんだ…… 」
目をつぶると、二人と過ごした日々がまぶたに映し出される。サファイアは渓流に耳をすまし、記憶の中にある川のせせらぎを重ね合わせた。
あの頃が一番幸せだった。母と慕うベクセナからセンジと共に護身術を学び、孤児院ではなかなか馴染めず身の置きどころがなかった自分にようやく本当の居場所ができたと喜んだ。
ベクセナの養女になっても生活は決して楽ではなかっただろうが、三人で協力し合いずっと一緒に居られると信じていた。
あの悲劇が起こるまでは……
ナウントレイには悲劇の事は話していない。そんな簡単に話せることではないし、口にするのもつらく、おぞましい惨事だったからだ。
「王子! おはようございます!」
ナウントレイの声で、サファイアは追想から一気に現実へと呼び戻された。待っていたギリザンジェロが王城インリオ嶽から出て来たのだ。
「ナウントレイ、サファイア。予定通りこれから人間界へ行くぞ」
ギリザンジェロはスタスタと、サファイア達の前を横切った。
「では……王の許可をいただけたのですか?」
ナウントレイの眉は下がり気味だ。王が承諾するとは、よほど意外だったのだろう。サファイアも例外ではなかった。
「この俺は愚弟とは違い、父上に信用があるからな」多くは語らず、ギリザンジェロは前進あるのみといった感じだ。
(へっ? 信用なんかいつどこのゴミ箱で拾ってきたの?)サファイアは心の中ですかさず突っ込んだ。
城門へ続く「龍の崖路」とは真逆の方向へギリザンジェロは早足になり、ナウントレイとサファイアはただただ付き従った。
たどり着いた場所は、ノムゾイ連峰のゴクリード嶽だ。
ゴクリード嶽は、ドリンケルツ城が誇る無数の山々の中で最も強烈なエネルギーゾーンで、異世界へのゲートとなっている。
「あやつらはひと足先に発ったようだな」
不自然に草木のない巨大な星型の地点に立ち、ギリザンジェロはドラジャロシーのオーラの余韻を嗅ぎとっていた。余韻を嗅ぎつつ目を閉じ、手の平を天に向け神経をとぎすましている。すると、ギリザンジェロの体内から種がスッと現われ出た。
髪色の深緑に目の色の赤がまじり、まるで密林に飛び散った血しぶきみたいな、ブラッドストーンのごとき種だ。
種の閃光がギリザンジェロの全身にかぶさると頭上一面にはどす黒い渦が発生し、種と同色の大穴、すなわちジオードがつくり出された。
「ジオードをつくるなど久しいが、我々王家の魔力をもってすれば造作ないこと。ナウントレイ、サファイア。お前たちファーストシェードにとってもたやすいことであろう。出来るな?」
「はい、王子」「えっと、もちろんです!」ナウントレイとサファイアは片手を胸に当てて即答した。
サファイアはハラハラドキドキ、そしてワクワクしていた。ジオードをつくりそれに乗って行けばその先は夢にまでみた人間界だ。未知なる異世界への好奇心と、何より、万が一にもかなうかもしれない幼なじみセンジとの再会を、頭の中でスケッチするようにざっくりと描き興奮をおさえきれずにいた。
(どおか、どおか、昔とおんなじセンジの笑顔に会えますよおに!!)
「温泉休暇に目がくらんでうっかり口すべらせちゃって……ごめん! ごめんなさいっ!」サファイアはあやまるよりほかなかった。
「口をすべらせたことはもちろんだけどさ。ドラジャ王子は人間界に潜伏するんじゃなくて征服するおつもりなんだろ? そういうの、間違えるなよ」
「あたし言い間違えちゃった? けど、どっちも似たよおなもんじゃん」
「人間界なんて前代未聞だ。王子をお止めするべきかどうか……」
「で、でもさっ。王のお許しが得られれば別に問題はないでしょ!? お許しが得られなければ、王子だってあきらめるしかないだろおし」
「あきらめられると思うか? あの王子が……」
「あきらめない!? あきらめないよね、やっぱ……」
朝の空がだんだんと濃くなってきた。青く色づいてはいるが、今朝はあいにくところどころで雲が層をなし、陽光が地上に届きにくくなっている。
ナウントレイとサファイアは、日差しの弱いボツオール橋で欄干にもたれ、第一王子ギリザンジェロを待っていた。ナウントレイは時々、手首をもう片方の手でかばうように押さえている。
「痛むんだね。大丈夫?」
「ジンジンしびれてるんだよ。レオンの指摘通り、しばらく実戦から離れていたせいだろうな。情けないよ。ファーストシェードの名が泣くよな」
「仕方ないよ。あのジブ先輩と真っ向から渡り合ったんだもん。あたしなんか感情的になるばっかでなんの役にも立てなかったし」
サファイアは、ナウントレイとジブノッカの激闘、力と力が衝突する迫力を間近で体感し、如何ともしがたい男女の腕力の差を改めて思い知らされはがゆかった。
女子シェードは皆、膂力では男子にかなわない分、戦術や技、スピード、魔力、それらにとりわけ磨きをかけるべく精進してきた。それでも、男に対する劣等感、どうにもならない不公平感は完全に捨てきれるものではなく、今日みたいな戦いを前にすると己の無力さを痛感して内心はモヤモヤとしたやるせなさでいっぱいだった。
「……ナウくん、毅然とした戦い方でかっこ良かったよ。見直しちゃったわ」
「見直すって……サファは知ってるだろう? 僕はホントは逃げ出したいくらいビビッてたんだ。ほぼほぼ押され気味だったのに『かっこいい』とか、からかうなよ」
ナウントレイはナウントレイで同じく無力感にとらわれているようだ。浮かない顔でぼんやりと空を仰いでいる。
「事を大きくしないよおに、あえて本気出さなかったんでしょ? ビビッていながらジブ先輩相手にあんな冷静に立ち合えるなんて、マジすごいよ」
「ジブノッカだって本気じゃなかったさ。それに僕は、ゼスタフェさんの手を煩わすことなく事態を収拾するのに躍起になってただけなんだ。ちっぽけな見栄っていうか、しょうもない意地みたいなもんだよ。結末はまさかの野良犬に救われる形であえなく終了だったけど、犬に感謝してる自分が情けないよ」ナウントレイは苦笑いした。
ナウントレイは、サファイアのシェード相棒だが年齢もシェード歴もサファイアよりずっと先輩だ。生まれ育った環境も、みなしご孤児院育ちのサファイアに対し、ナウントレイは名門貴族の嫡嗣で雲泥の差がある。
年齢や経験年数、生い立ち、身分など、そんなものはシェードにはいっさい関係ない。実力だけが全て、それ以外は通用しない世界なのだ。
「ねえ。ギリザ王子、遅くない?」
「まだ王にお会いできてないんじゃないのか?」
「ゲッ! そんじゃあ、あたしらいつまで待たされんの?」
「こんなこと珍しくもないだろ?」
「そりゃそおだけど、ジブ先輩のせいでドッと気疲れしちゃったからさ……」
「僕たちの都合でもの言っちゃダメだ。僕たち楯守シェードはいつだって、王子のご都合に合わせなきゃならないんだからさ」
「さすがだね、ナウくん。なんだかゼスタフェさんみたいだよ」
「だから、からかうなって。僕みたいな臆病者、ゼスタフェさんみたいには到底なれやしないんだからさ」
欄干から背中を放したナウントレイは身体の向きを180度変え、今度は橋の下を流れる川を俯瞰した。空を仰ごうが川を俯瞰しようがやはり浮かない顔つきでネガティブモードは続いているようだ。
ナウントレイもまた、ゼスタフェを尊敬し憧れている。シェード達はたいていそうだ。ゼスタフェを目標に日々努力を重ねているのだ。
ゼスタフェを見習い、ナウントレイはファーストシェードである事や、第一王子付きのシェードである事を常に意識している。だからこそ、何かある度に自分で自分を問責し、とことん猛省するのだ。
「毎度毎度、ナウくんは自分に厳しいよねぇ~ センジとは正反対だわ」
「センジって、お前の幼なじみのか?」
サファイアがポロリとこぼした名前にナウントレイは敏感に反応した。互いに信頼し合っているナウントレイには、サファイアは自らの過去を大まかに話していた。
「うん。いい加減なポンコツ野郎だよ。今頃人間界でどおしてんだろ。おっきくなってるだろ~なぁ。ポンコツのまんまなのかなぁ?」
「……なあ、サファ。あんまり期待するなよ?」ナウントレイは横目でサファイアを見た。
ナウントレイの目は硫黄色だ。目と同色のサラサラの髪が朝の陽光に輝いている。その鮮やかさが、色は違えどセンジの種を思わせ、サファイアは束の間、見入っていた。
「サファ。お前、人間界に行けることをひそかに期待してるんだろう? もし行けたところでセンジに会えるとは限らないぞ? 人間界だって狭くはないだろうからさ」
「わ、分かってるよっ。だいたいあたしは人間界行けるなんて期待、してな……い……」言い返しながら実は図星で言葉に詰まり、サファイアの語尾は尻すぼみになった。
「……おおいにしてるのかも。期待」
サファイアもまたおもむろに身体の向きを変え、ナウントレイと肩を並べて欄干から川を見下ろした。橋の下を蛇行するその川は、「龍の崖路」を挟む底深いスドロオウン峡谷へつながる渓流だ。
シェードの住処の部屋にも、辺りが静まり返っていると川の流れる音が聞こえてくる。
「センジの家の近くにも川があってさ。時々水遊びしたっけなぁ」サファイアは子供の頃を懐かしんだ。
「孤児院の仲間より、センジとの思い出の方が多いんだな」
「だってあたし、孤児院なんて大嫌いだったもん。話したでしょ? しょっちゅう抜け出して夜遅くまで街をプラプラしてたって」
そしてある夜、人身売買の組織に拉致されそうになったサファイアを、センジの母ベクセナが助けてくれた。それをきっかけにベクセナ、センジ親子と仲良くなったのだ。
「センジのお母さん……おばさんは、あたしを養女にするって言ってくれたんだ…… 」
目をつぶると、二人と過ごした日々がまぶたに映し出される。サファイアは渓流に耳をすまし、記憶の中にある川のせせらぎを重ね合わせた。
あの頃が一番幸せだった。母と慕うベクセナからセンジと共に護身術を学び、孤児院ではなかなか馴染めず身の置きどころがなかった自分にようやく本当の居場所ができたと喜んだ。
ベクセナの養女になっても生活は決して楽ではなかっただろうが、三人で協力し合いずっと一緒に居られると信じていた。
あの悲劇が起こるまでは……
ナウントレイには悲劇の事は話していない。そんな簡単に話せることではないし、口にするのもつらく、おぞましい惨事だったからだ。
「王子! おはようございます!」
ナウントレイの声で、サファイアは追想から一気に現実へと呼び戻された。待っていたギリザンジェロが王城インリオ嶽から出て来たのだ。
「ナウントレイ、サファイア。予定通りこれから人間界へ行くぞ」
ギリザンジェロはスタスタと、サファイア達の前を横切った。
「では……王の許可をいただけたのですか?」
ナウントレイの眉は下がり気味だ。王が承諾するとは、よほど意外だったのだろう。サファイアも例外ではなかった。
「この俺は愚弟とは違い、父上に信用があるからな」多くは語らず、ギリザンジェロは前進あるのみといった感じだ。
(へっ? 信用なんかいつどこのゴミ箱で拾ってきたの?)サファイアは心の中ですかさず突っ込んだ。
城門へ続く「龍の崖路」とは真逆の方向へギリザンジェロは早足になり、ナウントレイとサファイアはただただ付き従った。
たどり着いた場所は、ノムゾイ連峰のゴクリード嶽だ。
ゴクリード嶽は、ドリンケルツ城が誇る無数の山々の中で最も強烈なエネルギーゾーンで、異世界へのゲートとなっている。
「あやつらはひと足先に発ったようだな」
不自然に草木のない巨大な星型の地点に立ち、ギリザンジェロはドラジャロシーのオーラの余韻を嗅ぎとっていた。余韻を嗅ぎつつ目を閉じ、手の平を天に向け神経をとぎすましている。すると、ギリザンジェロの体内から種がスッと現われ出た。
髪色の深緑に目の色の赤がまじり、まるで密林に飛び散った血しぶきみたいな、ブラッドストーンのごとき種だ。
種の閃光がギリザンジェロの全身にかぶさると頭上一面にはどす黒い渦が発生し、種と同色の大穴、すなわちジオードがつくり出された。
「ジオードをつくるなど久しいが、我々王家の魔力をもってすれば造作ないこと。ナウントレイ、サファイア。お前たちファーストシェードにとってもたやすいことであろう。出来るな?」
「はい、王子」「えっと、もちろんです!」ナウントレイとサファイアは片手を胸に当てて即答した。
サファイアはハラハラドキドキ、そしてワクワクしていた。ジオードをつくりそれに乗って行けばその先は夢にまでみた人間界だ。未知なる異世界への好奇心と、何より、万が一にもかなうかもしれない幼なじみセンジとの再会を、頭の中でスケッチするようにざっくりと描き興奮をおさえきれずにいた。
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