[完結】うちの第二隊副隊長さまはモテ過ぎるのでとっとと結婚してほしい

いかくもハル

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【プロローグ】絶対に!公務員に!なる!!

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グリーンエンド魔術学校。
この学校の高等部3年生には伝説級に人気の先輩達がいる。

ウォルフ・コルド先輩。
ベージュの髪、水色の透明感のある瞳。品の良い佇まい。
宰相の息子で、成績優秀、穏やかで微笑みを絶やさない優しげな美貌だが、切れ物で、見かけによらずドSとも言われる。そのギャップが堪らないと人気の先輩だ。

クリストファー・フェブル先輩。
プラチナブロンドの髪、深い紫の瞳。
御年13歳。あまりに膨大な魔力量と魔術師として優秀な為、飛び級した天才。
浄化師のお家で、次代の浄化師。魔術と魔力量、その人外の美貌からすでに魔王とさえ言われる。
一緒にいるお付きのアルスさんも怜悧な美貌で注目の的であり、近寄り難いが目の保養と、年下だが人気の先輩だ。

グラント・ロックス先輩。
アッシュブロンドの髪、知性と冷静さを備えたブルーグレーの瞳。
騎士団第二隊隊長の息子で、小さい頃から英才教育を受け、剣と体術の天才とも言われる。
才能に奢る事なく努力する姿勢、さりげない気遣い、誰に対しても公平な態度に男女問わず尊敬する人続出。
関わる人々を虜にすると言われる人気の先輩だ。

私はミランダ・デパル。中等部3年生。
図書委員をしている。

中校一貫のグリードエンド魔術学校では、女子からこの3人の名前を聞かない日が無いほどだ。
遠目からしか見たことの無い私でも、この3人は知っているのがその証拠。

どこそこで、ウォルフ先輩を見ただの、クリストファー先輩は今日も可愛い、お付きのアルスさんも素敵だの、グラント先輩の剣の実技が震えるほどカッコイイだの。

よくもまぁ、毎日毎日キャアキャア飽きもせず言ってられるな、と思う。
私はそれほど暇では無い。

家は貧乏では無いが、家族はまだ弟も妹もいる。
父は売れない俳優ヴィクトル・デパルだ。
その為父の収入は多いとは言い難く、母は公務員で特殊な部署に勤めているから生活が成り立っているようなものだ。

母はそんな父を大好きで大ファンなのだ。
誰よりも夢を応援する姿勢の為に、父は俳優の仕事以外にまともに働いた事がない。

確かに、父は顔が良い。役者を目指すだけはある。
ハニーブロンドの明るい髪、ピーコックグリーンの印象的な瞳。細く高い鼻梁に弧を描く魅力的な唇。

俳優といっても、本当にチョイ役。
出ても撃たれて死ぬ役だったり。
ミステリー映画の最初に殺される役だったり。
その他大勢の群衆役だったり。
極たまにCMやナレーションの仕事もある。
新聞のチラシのモデルなどもある。

夢はいいのだが、そろそろ見切りをつけて真面目に働いてほしい。
人も良いし、バイトも色々やってて器用なんだから普通の仕事はやれば出来ると思う。

そんな父に見た目はそっくりな私は、絶対にあんな夢追い人なるまいと決意している。

結婚にも恋愛にも夢は持っていない。
私は公務員になりたい。母のように。

栗色の髪に若草色の瞳。
出来る女!って感じでカッコイイのに、男の趣味はよろしくない。
母は美人だからモテたと思う。絶対に。
父のファンになってしまったのが運の尽きだ。
恋愛って恐ろしい。


安定大事。一生働ける仕事について、誰にも頼らず生きて行く。
だから今から勉強している。
いわゆるガリ勉だ。成績もトップクラスを維持している。

夢は趣味の中だけで良い。
私の密かな趣味はBL小説を読む事。
たまたま入った本屋で見つけた本の表紙の絵が美しく、中身もろくに見ないで買って読んでハマってしまった。
その時読んだのが、マリモリ先生の騎士団シリーズの一つ『青薔薇騎士団~禁断の扉が開く時~』だったのだ。
今考えたらタイトルからしてヤバイんだけど、その時は気付きませんでした。本当に禁断の扉だったなんて♡


きゃーとか、わーとか言いながら読んでいる。
BLはファンタジーだと思う。
人気の先輩達を見ても、ハッキリ言ってBLに変換して妄想してる方が楽しい。
同じ同志のローザと、みんなとは違った角度でキャアキャア言ってる。楽しい。

眼鏡属性アルスさんも外せない。
しかし私の推しは青薔薇騎士団の団長マクシミリアン様を彷彿とさせるグラント先輩だ。
本当、作者マリモリ先生はこの学校の人かなってくらい、出てくる人が人気の先輩たちによく似てる。
もし本当なら、凄いけど。





そんなある日、私はたまたまローザと図書館の受付当番の日だった。
グラント先輩が何かを探してるのか、ウロウロしている。珍しい。

この学校は図書館は別館になっており、委員は中高等部どちらの生徒も受け持っていた。
広い為、慣れないと中々探せない。

仕方ない、声をかけるか・・・
私は受付から立ち上がった。

人気の先輩達に、関わると後から何言われるかわからないから嫌なのだ。
幸い今日は人も居ない。高等部の先輩はサボっているのだろう。
いれば皆の憧れのグラント先輩を間近で拝めたのに。

「あの、何かお探しですか?」
「ああ、すまない。頼まれた本なんだが場所がわからなくて」

一枚のメモを差し出された。
ふむ。

・異世界語の辞典
・渡り人歴代記録と時代背景
・渡り人の輝かしい功績 ジュンジ・サカタ

渡り人や異世界に関する本だな。

「異世界関連をまとめて置いてあるコーナーがあるのでご案内します」
「助かる。早く持って来るよう言われてるんだ」
「それなら私もお手伝いします」
「ありがとう。えーっと」
「中等部3年のデパルです」
「デパルさんか、よろしく」

コーナーに到着して、グラント先輩と手分けして本を探す。
すぐに本は見つかったが、辞典は何種類かあった。

「あの、この辞典がよく使われるタイプなんですけど、こちらの辞典はジュンジ・サカタの独特な言い回しを忠実に再現するのに適した辞典として人気なんです」
「何故ジュンジに関する辞典だと?」
「え?いや、彼に関する本ががあったので・・・すみません。余計でしたか?」
「いや、助かった。こちらを借りよう」

戻っていたローザと共に手続きをちゃっちゃと済まし、グラント先輩は何故か少し驚いた顔をしていたが、ニコリとしてすぐに帰って行った。

近くで見たの初めてだったけど、噂以上にイケメンで背が高く、騎士を目指す人だけあってガッチリしている。
The 騎士って感じ。妄想が膨らむ。

うん、目の保養。ローザと目が合い頷き合う。
考えてる事は同じ様だ。

しかしそれ以降、グラント先輩と図書館で会う事はなかった。












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