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初めて晴臣が予約をしてから、季節は一つ進んでいた。
一体いつまでこんなことを続けるつもりなのか──。
それからしばらくすると、晴臣は会えたとしてもほとんどが挿入の伴わない、ちょっとした性的な接触だけになっていた。
セックスらしいセックスをしたのは最初の数回のみ……。
(なんで抱かない?)
亜季は晴臣が自分とセックスをすることに飽きたのかと思った。
それならば、もう予約も入れずに会いもしなければいい。
それなのに、晴臣は相変わらず連日のように予約をいれてくる。
亜季には長男の行動の意味がまったく理解できないでいた。
そんな日々を過ごしたある日、今日も服を脱いでない晴臣から「自分にはオメガの兄弟がいた」という話をされる。
「へぇ……」
亜季はそんな話をされても、どう反応したらいいのかわからなかった。
それに、「いた」という過去形の言い方に、家族の中では亜季はいないものとして扱われている……亜季の帰るべき家ではなくなっているということがわかる。
分かりきっていたこととはいえ、この言葉は亜季の心を深く傷つけた。
「亜季……末っ子のオメガに出来なかったことを君にしたい」
(はぁ?)
何度もセックスしておいて、繰り返し触れておいて、何を今更と亜季は思う。
しかも、先ほどまでの性的な触れ合いの名残を流すために、風呂に入ったあとである。さんざんいちゃついた後の男娼に対するピロートークとしてふさわしい話題だとはまったくもって思えない。
完全に痛い客のそれだ……。
亜季は腹の中で長兄をあざけり、馬鹿にした。そして、この際その弟の振りでもして搾り取れるだけ金を搾り取ってやろう、そう思った。
(まぁ、実際僕がその弟なんだけど……)
それから長兄は予約をしても、挿入を伴うような性行為を一切しなくなった。
快楽に慣れた亜季の身体には物足りない。触れて甘やかされて、さんざん蕩かされる。
だが、最後まではしない。
ただ身体に熱を溜めるだけの行為は、亜季の……心を蝕む。
高められるだけで解放されない熱。
熟れるだけで摘み取られない身体。
初めての発情期か、何度もの一人の発情期を超えて覚え慣れた自慰行為でもそれは発散しきれない。
それとは逆にデートのたびに増えていく、かつての亜季が着ていたような清楚で上品なおぼっちゃん風の服。
そして、昔と同じように自分の名前を呼んで笑いかける兄との思い出──。
とうとう亜季の苦悩は限界を超えた。
「不能かよ!!」
「荒れてるわね」
「荒れてるね」
一人はこの店の古株ナミ、もう一人は亜季をこの店に引きずりこんだ張本人のハルだ。
「なんかすっごい羽振りのいい客らしいじゃん。不満なんだったらこっちにまわしてくれていいんだよ?」
ハルが茶化してくるが亜季はそれどころじゃない。
きっとハルのことを睨みつける。
最初こそ騙されはしたが、この二年でハルは亜季の親友になっていた。
「ハール、ふざけないの。アキちゃん、なにかあったの?」
ナミがハルを窘めて、そう尋ねる。
「別に」
不貞腐れた態度だとわかっているが、古参でこの仕事をよく知っていて、なおかつ優しいナミにはついつい店のみんなが甘えてしまう。
亜季もその一人だった。
「そう? なんだか聞き捨てならない言葉が聞こえたけど……」
「なになに? 勃たせられないって?」
「違う!」
不名誉なことを言われて、亜季は即座に否定した。
実際、晴臣は不能なわけでも、亜季が勃たせられないわけでもない。ズボン越しに見る限りばっきばきに勃起させているのに、亜季の身体を弄りまわして満足しているのか、挿入だけは頑なにしてくれない。
ハルが手招きする。「何?」と不満げな顔を隠さずにそれでも亜季はハルに顔を近づけた。
「薬、使っちゃばいいじゃん」
「ハル!」
こそこそと亜季の耳元で囁いたつもりだったが、どうやらナミには聞こえていたようで、ハルは怒られる。
「ダメよ! うちは優良店なのよ。……っていうか、あなたそんなものお客さんに使ってないでしょうね!?」
「えーどうかなぁ」
「ハル!」
二人がわちゃわちゃと話している中で、亜季は「その手があったか」と金言を得た気持ちになった。
「いいよ、もう。二人とも仕事は?」
亜季はその考えを悟られないように、この話を終わらせて、別の話題を振る。
だが、頭の中では、次の予約のときに使ってやろうと考えていた。
一体いつまでこんなことを続けるつもりなのか──。
それからしばらくすると、晴臣は会えたとしてもほとんどが挿入の伴わない、ちょっとした性的な接触だけになっていた。
セックスらしいセックスをしたのは最初の数回のみ……。
(なんで抱かない?)
亜季は晴臣が自分とセックスをすることに飽きたのかと思った。
それならば、もう予約も入れずに会いもしなければいい。
それなのに、晴臣は相変わらず連日のように予約をいれてくる。
亜季には長男の行動の意味がまったく理解できないでいた。
そんな日々を過ごしたある日、今日も服を脱いでない晴臣から「自分にはオメガの兄弟がいた」という話をされる。
「へぇ……」
亜季はそんな話をされても、どう反応したらいいのかわからなかった。
それに、「いた」という過去形の言い方に、家族の中では亜季はいないものとして扱われている……亜季の帰るべき家ではなくなっているということがわかる。
分かりきっていたこととはいえ、この言葉は亜季の心を深く傷つけた。
「亜季……末っ子のオメガに出来なかったことを君にしたい」
(はぁ?)
何度もセックスしておいて、繰り返し触れておいて、何を今更と亜季は思う。
しかも、先ほどまでの性的な触れ合いの名残を流すために、風呂に入ったあとである。さんざんいちゃついた後の男娼に対するピロートークとしてふさわしい話題だとはまったくもって思えない。
完全に痛い客のそれだ……。
亜季は腹の中で長兄をあざけり、馬鹿にした。そして、この際その弟の振りでもして搾り取れるだけ金を搾り取ってやろう、そう思った。
(まぁ、実際僕がその弟なんだけど……)
それから長兄は予約をしても、挿入を伴うような性行為を一切しなくなった。
快楽に慣れた亜季の身体には物足りない。触れて甘やかされて、さんざん蕩かされる。
だが、最後まではしない。
ただ身体に熱を溜めるだけの行為は、亜季の……心を蝕む。
高められるだけで解放されない熱。
熟れるだけで摘み取られない身体。
初めての発情期か、何度もの一人の発情期を超えて覚え慣れた自慰行為でもそれは発散しきれない。
それとは逆にデートのたびに増えていく、かつての亜季が着ていたような清楚で上品なおぼっちゃん風の服。
そして、昔と同じように自分の名前を呼んで笑いかける兄との思い出──。
とうとう亜季の苦悩は限界を超えた。
「不能かよ!!」
「荒れてるわね」
「荒れてるね」
一人はこの店の古株ナミ、もう一人は亜季をこの店に引きずりこんだ張本人のハルだ。
「なんかすっごい羽振りのいい客らしいじゃん。不満なんだったらこっちにまわしてくれていいんだよ?」
ハルが茶化してくるが亜季はそれどころじゃない。
きっとハルのことを睨みつける。
最初こそ騙されはしたが、この二年でハルは亜季の親友になっていた。
「ハール、ふざけないの。アキちゃん、なにかあったの?」
ナミがハルを窘めて、そう尋ねる。
「別に」
不貞腐れた態度だとわかっているが、古参でこの仕事をよく知っていて、なおかつ優しいナミにはついつい店のみんなが甘えてしまう。
亜季もその一人だった。
「そう? なんだか聞き捨てならない言葉が聞こえたけど……」
「なになに? 勃たせられないって?」
「違う!」
不名誉なことを言われて、亜季は即座に否定した。
実際、晴臣は不能なわけでも、亜季が勃たせられないわけでもない。ズボン越しに見る限りばっきばきに勃起させているのに、亜季の身体を弄りまわして満足しているのか、挿入だけは頑なにしてくれない。
ハルが手招きする。「何?」と不満げな顔を隠さずにそれでも亜季はハルに顔を近づけた。
「薬、使っちゃばいいじゃん」
「ハル!」
こそこそと亜季の耳元で囁いたつもりだったが、どうやらナミには聞こえていたようで、ハルは怒られる。
「ダメよ! うちは優良店なのよ。……っていうか、あなたそんなものお客さんに使ってないでしょうね!?」
「えーどうかなぁ」
「ハル!」
二人がわちゃわちゃと話している中で、亜季は「その手があったか」と金言を得た気持ちになった。
「いいよ、もう。二人とも仕事は?」
亜季はその考えを悟られないように、この話を終わらせて、別の話題を振る。
だが、頭の中では、次の予約のときに使ってやろうと考えていた。
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