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薬を使うことは決めたもののどうやって飲ませたものか──。
「はい。飲んで」と渡したところで素直に飲むはずがない。
亜季は頭を悩ませた。
自分の発情期を起こして誘発させる? と考えて思い出す。亜季の初めて発情期の時……冬紀と夏輝との乱痴気騒ぎを発見し、終わらせたのは晴臣だった。
冬紀も夏輝も亜季の発情期に煽られて、アルファの発情の状態になった。というより、発情にでもならなかったら、あんなことにはなっていない。だが、晴臣は発情にならずに、その場を収拾したのだから、亜季の発情期で発情にならないかもしれない。アルファ用の抑制剤を打っていた可能性もなくはないが、確実さがほしい。
そうなると、亜季の発情期で発情を誘発させるより、晴臣に直接、発情促進剤を盛って、発情を起こさせる必要がある。
飲み物に混ぜる?
そう考えたが、晴臣が亜季と一緒にいるときはホテルの冷蔵庫の中の瓶のミネラルウォーターしか飲んでいない。水では味や色でバレる。
酒でも飲んでくれたら……。
そこで亜季は思いついた。
前回会った際に、誕生日の話題になっていた。晴臣の誕生日は元より知っていたが、素知らぬ顔で「へぇーそうなんだ。もう終わっちゃったね」とかなんとか言ったことを思い出したのだ。
亜季は自分の誕生日が末っ子オメガと同じだと、「私がその末っ子オメガです」と自白するようなものなので、まったく違う……それでも忘れないハルの誕生日を答えていたのだが、いまそれはどうでもいい。
「誕生日祝いってことで、ワインを用意したら……」
亜季の用意したものなら、躊躇なく飲むだろうという自信はあった。
次の予約は明後日。
どんなワインを用意しよう──。
決行の予定日に亜季はホテルに行きしな、百貨店で赤ワインを購入した。赤ワインなら促進剤を混ぜたところで色でも味でも見抜かれることはあるまい。
(澱もあるし……)
それに酒と一緒に飲ませたら……効果はどうなるのか亜季にはわからなかったが、失敗したらそれまで。
これ以上、セックスしないなら出禁にすると言えばいい。
そうしたら流石に何とかするのではないか──。
出禁が嫌なら、挿入するだろうし、ならば「出禁で」ということなら、亜季は別の客に身体を鎮めてもらえる。
出禁を選ばれたらそれは仕方がない……そんな当たり前のことを考えるだけで、理由はわからないが胃の辺りがキリキリする。
「ふぅ……」
亜季は深呼吸をして、気分を変える努力をする。
腕時計を見ると、もう夕方だった。夏は日が長い。外の明るさから、まだまだ昼だと思っていたが、思ったよりワインを選ぶのに時間がかかっていたようだ。
亜季は時計を見ながら、「もしかしたら、今日は来られなくなるかもしれないし……」と小さくつぶやく。
紙袋に入った綺麗にラッピングされたワインを片手に、足早にいつものホテルに向かった。
今日も亜季が来るより前に晴臣は来ていない。だが、ホテルへの言伝では、今日は来られるらしい……。
亜季は部屋にグラスとワインオープナーがあることを確かめる。
グラスをテーブルに、ワインは隠しておく。
ちょうどその時だった。
部屋のドアががちゃりと鳴って、扉が開く。
亜季は驚いて、悪戯がバレた子どもように跳ねあがった。だが、晴臣が中に入ってくる頃にはいつもの亜季の顔に戻っている。
「おかえりなさい」
「あぁ……ただいま」
以前、戯れに「おかえりなさい」と声をかけたとき、晴臣がえらく喜んでいたから、夜にホテルで会うときは、「おかえりなさい」といって出迎えている。いつも通り、なにも変わったことなどないと、笑顔で出迎える。
「? グラス」
「そう。なんでだと思う?」
亜季はいたずらっぽく笑って、晴臣に尋ね返す。答えが返ってくるかなんてどうでもいい。少し、自分が落ち着く時間稼ぎがしたいだけ……。
「さあ、わからないな」
グラスがワイン用なので、それはわかるが、なぜそれが用意されているのかは晴臣にも皆目見当がつかないようだった。
亜季は隠したワインを取り出して、「じゃーん」と言って、晴臣に見せる。
心臓が早くもばくばくしている。
「どうして?」
当然といえば、当然の質問をされる。なにせ今まで酒を用意したことなどない。
「この間、誕生日の話をしたでしょ? 終わってしまっていたけど、これ僕からの誕生日プレゼント」
亜季は晴臣によく見えるようにボトルを見せる。晴臣なら、「一緒に飲もう」と言ってくるはず。もらったプレゼントが食品なら、開けずに持って帰るのは失礼だから……。
「一緒に飲んでくれる?」
亜季は心の中でガッツポーズをした。
「もちろん!」
不自然なほど大きな声で返事をしたのではないかと、心臓が跳ねあがる。
「じゃ、あ、開けるから待ってて」
今だ──。
「はい。飲んで」と渡したところで素直に飲むはずがない。
亜季は頭を悩ませた。
自分の発情期を起こして誘発させる? と考えて思い出す。亜季の初めて発情期の時……冬紀と夏輝との乱痴気騒ぎを発見し、終わらせたのは晴臣だった。
冬紀も夏輝も亜季の発情期に煽られて、アルファの発情の状態になった。というより、発情にでもならなかったら、あんなことにはなっていない。だが、晴臣は発情にならずに、その場を収拾したのだから、亜季の発情期で発情にならないかもしれない。アルファ用の抑制剤を打っていた可能性もなくはないが、確実さがほしい。
そうなると、亜季の発情期で発情を誘発させるより、晴臣に直接、発情促進剤を盛って、発情を起こさせる必要がある。
飲み物に混ぜる?
そう考えたが、晴臣が亜季と一緒にいるときはホテルの冷蔵庫の中の瓶のミネラルウォーターしか飲んでいない。水では味や色でバレる。
酒でも飲んでくれたら……。
そこで亜季は思いついた。
前回会った際に、誕生日の話題になっていた。晴臣の誕生日は元より知っていたが、素知らぬ顔で「へぇーそうなんだ。もう終わっちゃったね」とかなんとか言ったことを思い出したのだ。
亜季は自分の誕生日が末っ子オメガと同じだと、「私がその末っ子オメガです」と自白するようなものなので、まったく違う……それでも忘れないハルの誕生日を答えていたのだが、いまそれはどうでもいい。
「誕生日祝いってことで、ワインを用意したら……」
亜季の用意したものなら、躊躇なく飲むだろうという自信はあった。
次の予約は明後日。
どんなワインを用意しよう──。
決行の予定日に亜季はホテルに行きしな、百貨店で赤ワインを購入した。赤ワインなら促進剤を混ぜたところで色でも味でも見抜かれることはあるまい。
(澱もあるし……)
それに酒と一緒に飲ませたら……効果はどうなるのか亜季にはわからなかったが、失敗したらそれまで。
これ以上、セックスしないなら出禁にすると言えばいい。
そうしたら流石に何とかするのではないか──。
出禁が嫌なら、挿入するだろうし、ならば「出禁で」ということなら、亜季は別の客に身体を鎮めてもらえる。
出禁を選ばれたらそれは仕方がない……そんな当たり前のことを考えるだけで、理由はわからないが胃の辺りがキリキリする。
「ふぅ……」
亜季は深呼吸をして、気分を変える努力をする。
腕時計を見ると、もう夕方だった。夏は日が長い。外の明るさから、まだまだ昼だと思っていたが、思ったよりワインを選ぶのに時間がかかっていたようだ。
亜季は時計を見ながら、「もしかしたら、今日は来られなくなるかもしれないし……」と小さくつぶやく。
紙袋に入った綺麗にラッピングされたワインを片手に、足早にいつものホテルに向かった。
今日も亜季が来るより前に晴臣は来ていない。だが、ホテルへの言伝では、今日は来られるらしい……。
亜季は部屋にグラスとワインオープナーがあることを確かめる。
グラスをテーブルに、ワインは隠しておく。
ちょうどその時だった。
部屋のドアががちゃりと鳴って、扉が開く。
亜季は驚いて、悪戯がバレた子どもように跳ねあがった。だが、晴臣が中に入ってくる頃にはいつもの亜季の顔に戻っている。
「おかえりなさい」
「あぁ……ただいま」
以前、戯れに「おかえりなさい」と声をかけたとき、晴臣がえらく喜んでいたから、夜にホテルで会うときは、「おかえりなさい」といって出迎えている。いつも通り、なにも変わったことなどないと、笑顔で出迎える。
「? グラス」
「そう。なんでだと思う?」
亜季はいたずらっぽく笑って、晴臣に尋ね返す。答えが返ってくるかなんてどうでもいい。少し、自分が落ち着く時間稼ぎがしたいだけ……。
「さあ、わからないな」
グラスがワイン用なので、それはわかるが、なぜそれが用意されているのかは晴臣にも皆目見当がつかないようだった。
亜季は隠したワインを取り出して、「じゃーん」と言って、晴臣に見せる。
心臓が早くもばくばくしている。
「どうして?」
当然といえば、当然の質問をされる。なにせ今まで酒を用意したことなどない。
「この間、誕生日の話をしたでしょ? 終わってしまっていたけど、これ僕からの誕生日プレゼント」
亜季は晴臣によく見えるようにボトルを見せる。晴臣なら、「一緒に飲もう」と言ってくるはず。もらったプレゼントが食品なら、開けずに持って帰るのは失礼だから……。
「一緒に飲んでくれる?」
亜季は心の中でガッツポーズをした。
「もちろん!」
不自然なほど大きな声で返事をしたのではないかと、心臓が跳ねあがる。
「じゃ、あ、開けるから待ってて」
今だ──。
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