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13章
2 ノエル
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リアムはこの伯父のことが好きだった。
よく見ると、父のリチャードと顔がよく似ている。
だが、醸す雰囲気はまるで正反対で、穏やかで控えめで、いつ会っても柔らかな笑みをたたえている。
同じように優しい叔母と一緒に、小さな頃はよくリアムを甘やかしてくれた。
性格は真逆、一見全く違う二人の顔が、本当はとても似ていることに気づけるのは、ごく身近な家族だけだろう。
ちなみに、その実子であるノエルとは顔も性格も似ていない。
ノエルの性格は良くも悪くも、リアムと似ていて、明るく自信家でぐいぐいと人を引っ張るリーダー気質だった。
典型的なαタイプ。
その上、リアムと違ってノエルは忍耐強くもあった。おちゃらけているように見せかけて、真面目で実直。
そうでなければ、いくらメイトとは言え──15年越しの相手を射止められはしないだろう。
ノエルが彼のメイトを知り合ったのはまだ高校生の頃のことだった。そのメイトは遠く日本から一年の期限付きで、ノエルの高校に短期留学をしていた。
人狼がこの世に存在するなどとは露ほども思っていない、別のコミュニティの女の子。
一年経ったら、国に帰ってしまう、そんな相手。
それだけ聞いたら、せっかくメイトに巡り会えたのにと、誰もがその境遇を嘆くことだろう。
だが、ノエルは諦めなかった。
何年かかっても、メイトがなんの不安も抱かないほどの力をつけてから、再度会いに行こうと心に決めて、その時には何も告げずにあっさりと友情のまま別れた。
家族はもちろんノエルがメイトと出会ったことを知っていた。どうにかしてその女の子をアメリカに連れてくることを考えなかったわけではない。ノエルの家にはそれを可能に出来るだけの力もあった。
その時のリアムも「さっさと愛の告白をして、連れて来てしまえばいいのに」と思っていた。
人狼の中には一生自分のメイトに出会えないものもいる。出会えたのなら、その手を離すなんて有り得ない。
何も言わずに別れるなんて、愚かなことだとすら思っていた。
だが、サクラコと実際に会ってみて、それでは上手くはいかなかったことが今ならわかる。
当時のシロウはまだ8歳か、9歳か。
そんな歳の弟を一人日本に残して、無責任にも彼女が渡米したとは考えられない。それほど、サクラコがシロウを大切にしていることはリアムにだってわかる。
メイトと出会ったにもかかわらず、そのメイトと離れ離れで暮らさなければならなかったなんて、想像を絶する苦しみだ。
それに辛抱強く耐えた。己の力をつけて、なんの憂いもなく相手が受け入れるように、周到な準備をして、ようやくメイトを手に入れたのだ。
今やノエルの忍耐力に尊敬すら抱いている。
リアムはシロウと引き離されるなんて考えられない。シロウと片時も離れたくない。シロウと二度と会えないと想像することは身を裂かれるより辛いことのように感じる。
やりたいことをやりたいようにやってきて、運良くメイトと出会えた自分とは違うのだ。
近くで見てきたからこそわかる。ノエルの方がよっぽど群れの統率者に向いているとリアムは思った。
それなのにどうして、父は自分に群れを継がせようと考えるのか。ノエルでは駄目なのか、リアムには理解出来なかった。
そんなことを考えているうちに、ダイニングルームの入り口まで来ていた。
リアムもポールに続いて部屋に入ろうとしたところで、「リアム」と後ろからノエルに声をかけられる。
よく見ると、父のリチャードと顔がよく似ている。
だが、醸す雰囲気はまるで正反対で、穏やかで控えめで、いつ会っても柔らかな笑みをたたえている。
同じように優しい叔母と一緒に、小さな頃はよくリアムを甘やかしてくれた。
性格は真逆、一見全く違う二人の顔が、本当はとても似ていることに気づけるのは、ごく身近な家族だけだろう。
ちなみに、その実子であるノエルとは顔も性格も似ていない。
ノエルの性格は良くも悪くも、リアムと似ていて、明るく自信家でぐいぐいと人を引っ張るリーダー気質だった。
典型的なαタイプ。
その上、リアムと違ってノエルは忍耐強くもあった。おちゃらけているように見せかけて、真面目で実直。
そうでなければ、いくらメイトとは言え──15年越しの相手を射止められはしないだろう。
ノエルが彼のメイトを知り合ったのはまだ高校生の頃のことだった。そのメイトは遠く日本から一年の期限付きで、ノエルの高校に短期留学をしていた。
人狼がこの世に存在するなどとは露ほども思っていない、別のコミュニティの女の子。
一年経ったら、国に帰ってしまう、そんな相手。
それだけ聞いたら、せっかくメイトに巡り会えたのにと、誰もがその境遇を嘆くことだろう。
だが、ノエルは諦めなかった。
何年かかっても、メイトがなんの不安も抱かないほどの力をつけてから、再度会いに行こうと心に決めて、その時には何も告げずにあっさりと友情のまま別れた。
家族はもちろんノエルがメイトと出会ったことを知っていた。どうにかしてその女の子をアメリカに連れてくることを考えなかったわけではない。ノエルの家にはそれを可能に出来るだけの力もあった。
その時のリアムも「さっさと愛の告白をして、連れて来てしまえばいいのに」と思っていた。
人狼の中には一生自分のメイトに出会えないものもいる。出会えたのなら、その手を離すなんて有り得ない。
何も言わずに別れるなんて、愚かなことだとすら思っていた。
だが、サクラコと実際に会ってみて、それでは上手くはいかなかったことが今ならわかる。
当時のシロウはまだ8歳か、9歳か。
そんな歳の弟を一人日本に残して、無責任にも彼女が渡米したとは考えられない。それほど、サクラコがシロウを大切にしていることはリアムにだってわかる。
メイトと出会ったにもかかわらず、そのメイトと離れ離れで暮らさなければならなかったなんて、想像を絶する苦しみだ。
それに辛抱強く耐えた。己の力をつけて、なんの憂いもなく相手が受け入れるように、周到な準備をして、ようやくメイトを手に入れたのだ。
今やノエルの忍耐力に尊敬すら抱いている。
リアムはシロウと引き離されるなんて考えられない。シロウと片時も離れたくない。シロウと二度と会えないと想像することは身を裂かれるより辛いことのように感じる。
やりたいことをやりたいようにやってきて、運良くメイトと出会えた自分とは違うのだ。
近くで見てきたからこそわかる。ノエルの方がよっぽど群れの統率者に向いているとリアムは思った。
それなのにどうして、父は自分に群れを継がせようと考えるのか。ノエルでは駄目なのか、リアムには理解出来なかった。
そんなことを考えているうちに、ダイニングルームの入り口まで来ていた。
リアムもポールに続いて部屋に入ろうとしたところで、「リアム」と後ろからノエルに声をかけられる。
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