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14章
2 リアムが好き
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「えーと……、恋人……になったんだ。リアムさんと。その、そういうお付き合いをしているんだ」
姉に初めて出来た恋人の存在を告白する。
恋人──自分で言ったその言葉にシロウは面はゆい気持ちになり、顔が少しだけ熱くなった。そのまま姉を見ていられず、思わず下を向く。
「獅郎……。それは本当に恋心なの?」
(え?)
小さなため息とともに言われた言葉が理解できず、今度はシロウが困惑することになった。
仰向くと、真剣な目をしたサクラコに見つめられている。
「あの……、姉さん、その……」
サクラコの言葉に冷や水をかけられた思いで、シロウは二の句がつげれなかった。
どう答えたらわかってもらえるのだろう──。
「リアムさんが好きで……それで」
シロウは愚直に自分の気持ちをサクラコに伝える。どうしたらいいのかもわからずにただ、リアムのことが好きだと思った自分の気持ちを姉に理解してほしい一心だった。
俯きそうになる自分を励まして、目の前の姉を見ると、疑いというには優しすぎる視線を受けて、何も言えなくなる。
「倒れたり、財布や携帯を無くしたりして、心細かった時に親切にされたから……。そういうのじゃないの?」
「否定したい訳ではないけど、簡単に納得もできない」というサクラコにシロウの胸が軋む。
「そういうの」と濁された言葉は暗に「勘違い」と言われているのだから──自分でも少なからず思っていたことを真っ向から突きつけられて、シロウは返答に窮した。
そっと触れてくるサクラコの手は温もりに満ちていて、シロウをいたわる気持ちを伝えてくる。それは姉が自分を傷つけまいという心遣いから出て言葉だとわかった。
「獅郎、あなたを傷つけたいわけじゃないのよ。ただ、心配なの。あなたが傷つかないか」
反論するより前に、姉に畳み掛けるように言われた言葉は、シロウがリアムに抱いている想いすら否定する。
恋人が男性であることには少なからず、何か言われるだろうとは思っていたが、まさか自分のリアムへの気持ちを「勘違い」ではないかと言われるとは、シロウも思っていなかった。
迎えに来てくれて嬉しかったのは確かだ。
でも、それだけじゃない。
シロウだって最初は「何だこの人、変な人」と思っていた。
出会ってからのたったの数週間のうちに起こった出来事はつい最近のことだからということではなく、シロウの中で鮮明に思い出せる。
たった数週間と言われれば短い時間なのかもしれないが、されど濃密な数週間──家族以外の人とあんなに一緒に暮らしたことは無かった。その時間を過ごす間にリアムの優しさに触れて、自分でも気づかないうちにどんどん惹かれていたのだと思う。
狼の姿から戻れないまま、街を放浪したあの夜──迎えにきたリアムの胸に思わず飛び込んだ。
あれは狼の自分がリアムに感じる本能の繋がりなのかもしれない。でも、抱きしめられると心の底から安心するし、一緒にいたいと思う。こんな気持ちを抱く相手に初めて会った。
散々悩んだ。
何度も自分の心に問うて、「やっぱり一緒にいたい」と思ったのは自分の心の底からの気持ちだった。
「この気持ち」から目を逸らさないって決めた。
男同士だとか、メイトだからとか関係ない。
ただ、「リアムが欲しい」それだけ。
姉に初めて出来た恋人の存在を告白する。
恋人──自分で言ったその言葉にシロウは面はゆい気持ちになり、顔が少しだけ熱くなった。そのまま姉を見ていられず、思わず下を向く。
「獅郎……。それは本当に恋心なの?」
(え?)
小さなため息とともに言われた言葉が理解できず、今度はシロウが困惑することになった。
仰向くと、真剣な目をしたサクラコに見つめられている。
「あの……、姉さん、その……」
サクラコの言葉に冷や水をかけられた思いで、シロウは二の句がつげれなかった。
どう答えたらわかってもらえるのだろう──。
「リアムさんが好きで……それで」
シロウは愚直に自分の気持ちをサクラコに伝える。どうしたらいいのかもわからずにただ、リアムのことが好きだと思った自分の気持ちを姉に理解してほしい一心だった。
俯きそうになる自分を励まして、目の前の姉を見ると、疑いというには優しすぎる視線を受けて、何も言えなくなる。
「倒れたり、財布や携帯を無くしたりして、心細かった時に親切にされたから……。そういうのじゃないの?」
「否定したい訳ではないけど、簡単に納得もできない」というサクラコにシロウの胸が軋む。
「そういうの」と濁された言葉は暗に「勘違い」と言われているのだから──自分でも少なからず思っていたことを真っ向から突きつけられて、シロウは返答に窮した。
そっと触れてくるサクラコの手は温もりに満ちていて、シロウをいたわる気持ちを伝えてくる。それは姉が自分を傷つけまいという心遣いから出て言葉だとわかった。
「獅郎、あなたを傷つけたいわけじゃないのよ。ただ、心配なの。あなたが傷つかないか」
反論するより前に、姉に畳み掛けるように言われた言葉は、シロウがリアムに抱いている想いすら否定する。
恋人が男性であることには少なからず、何か言われるだろうとは思っていたが、まさか自分のリアムへの気持ちを「勘違い」ではないかと言われるとは、シロウも思っていなかった。
迎えに来てくれて嬉しかったのは確かだ。
でも、それだけじゃない。
シロウだって最初は「何だこの人、変な人」と思っていた。
出会ってからのたったの数週間のうちに起こった出来事はつい最近のことだからということではなく、シロウの中で鮮明に思い出せる。
たった数週間と言われれば短い時間なのかもしれないが、されど濃密な数週間──家族以外の人とあんなに一緒に暮らしたことは無かった。その時間を過ごす間にリアムの優しさに触れて、自分でも気づかないうちにどんどん惹かれていたのだと思う。
狼の姿から戻れないまま、街を放浪したあの夜──迎えにきたリアムの胸に思わず飛び込んだ。
あれは狼の自分がリアムに感じる本能の繋がりなのかもしれない。でも、抱きしめられると心の底から安心するし、一緒にいたいと思う。こんな気持ちを抱く相手に初めて会った。
散々悩んだ。
何度も自分の心に問うて、「やっぱり一緒にいたい」と思ったのは自分の心の底からの気持ちだった。
「この気持ち」から目を逸らさないって決めた。
男同士だとか、メイトだからとか関係ない。
ただ、「リアムが欲しい」それだけ。
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