前世で悪帝と呼ばれた令嬢は、婚約者の王子に一目惚れをする。

夜のトラフグ

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さん

chapter31 踊りましょう

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「思いの外、中はクラシカルなんですね。好感が持てます」
「まあ、歴史も長いし…………なにを飲む?」

尋ねられて、グルリと会場を見渡す。シーズン初めてということもあって人は多く、中には知ったような顔ぶれもあった。

「ま、泥酔するわけにもいきませんよね………軽めのシャンパンにします。殿下は?」
「え、飲むのか? ジュースにしておいたらどうだ?」

ちょっと心配そうな顔をされたことが、アビゲールは意外だった。前世でも今世でも、酒に酔ったことはない。

(……というか私の動向が心配なら、適当に酔い潰して帰らせればいいのに……)

相変わらず外道寄り思考のアビゲールだった。

「心配いりませんよ。お酒には強いほうです」
「そういう問題じゃないだろ………」
「まあまあ」

くい、とアビゲールはグラスを傾けて煽った。

「ふふふ。美味しいですね」
「………なんか、もう酔ってる?」
「まさか」

アビゲールは楽しそうに笑った。

「私、ずっと楽しみにしてたんです。ねえ、殿下」
「………」
「踊りましょう」
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