傾国の魔女が死んだら、なぜか可愛いお姫様に転生していた。

夜のトラフグ

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03 寂しい気持ち

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 オデットは、幼くか弱い人間の身体を、甘く見ていた。知識として、いや常識として生まれたばかりの女の子が、五百年を生きた魔女よりずっと弱くて体力の無いことを分かっていたはずなのに、それを計算に入れていなかったのだ。

(…まさか、数日程度の寝不足で熱を出すとは思わないわよね)

 睡眠を削って、王城の豊富な図書をこっそり読み漁っていたオデット姫の幼い身体は、一週間ともたず限界を迎え倒れた。

(これじゃあ、研究以前に身体を鍛えるところから始めないとならないわ。人の子の身体についても、今度調べておこうかしら)

 オデット姫は熱に浮かされながら、ガンガン痛む頭に少しばかりの悔いを覚えた。


「姫さま~! しっかりなさってください!」
「私どもはここにおります。しっかり眠っていれば、すぐに良くなりますからね」
「ええ、ありがとう…」

 口々に励ましの言葉を言う侍女たちに、オデットは精一杯取り繕って礼の言葉を言った。

(結局、彼女の言うとおりだったかもしれないわね。年長者の言葉には、それなりに耳を傾けるべきということかしら)

 今、この場には居らずオデット姫の食べられるものを手配するため奔走している、乳母の顔を思い浮かべた。
 彼女のことを思い浮かべた途端、胸に、言いようのない感覚が走った。うずうずするような、一人でぽつんと取り残されたような、とにかくかつての『魔女』としては感じたことのない思いだった。これを言葉にするなら、そう――

(寂しい、かしら)

 周りに侍女もいるというのに、不安で、彼女の姿を探したい気持ち。幼い身体で引いた風邪のせいか、いっそうそんな気持ちが強くなって、とうとうオデットにも自覚できるほどになってしまった。

「…メリッサ」
「姫さま」

 力なく言葉にしたとき、ちょうど扉が開いて乳母のメリッサが入ってきた。彼女はそのままオデットに駆け寄り、そっと手を握ってくれた。

「…わたし、こっそり夜に起きて本を読んだの。だから熱が出たのよ」
「そうでしたか。姫さまは、もっとお勉強がしたかったのですよね」

 怒られるかと思ったが、メリッサは優しく笑ってそう言った。

「…次からは、昼間だけにするわ」
「はい。大切な姫さまのお身体ですから、大切になさってください」

 メリッサがそう言って撫でてくれると、心が軽くて温かくなった。そして訪れた微睡みに身を任せ、オデット姫は優しい夢を見ることができた。
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