4 / 11
03 寂しい気持ち
しおりを挟む
オデットは、幼くか弱い人間の身体を、甘く見ていた。知識として、いや常識として生まれたばかりの女の子が、五百年を生きた魔女よりずっと弱くて体力の無いことを分かっていたはずなのに、それを計算に入れていなかったのだ。
(…まさか、数日程度の寝不足で熱を出すとは思わないわよね)
睡眠を削って、王城の豊富な図書をこっそり読み漁っていたオデット姫の幼い身体は、一週間ともたず限界を迎え倒れた。
(これじゃあ、研究以前に身体を鍛えるところから始めないとならないわ。人の子の身体についても、今度調べておこうかしら)
オデット姫は熱に浮かされながら、ガンガン痛む頭に少しばかりの悔いを覚えた。
「姫さま~! しっかりなさってください!」
「私どもはここにおります。しっかり眠っていれば、すぐに良くなりますからね」
「ええ、ありがとう…」
口々に励ましの言葉を言う侍女たちに、オデットは精一杯取り繕って礼の言葉を言った。
(結局、彼女の言うとおりだったかもしれないわね。年長者の言葉には、それなりに耳を傾けるべきということかしら)
今、この場には居らずオデット姫の食べられるものを手配するため奔走している、乳母の顔を思い浮かべた。
彼女のことを思い浮かべた途端、胸に、言いようのない感覚が走った。うずうずするような、一人でぽつんと取り残されたような、とにかくかつての『魔女』としては感じたことのない思いだった。これを言葉にするなら、そう――
(寂しい、かしら)
周りに侍女もいるというのに、不安で、彼女の姿を探したい気持ち。幼い身体で引いた風邪のせいか、いっそうそんな気持ちが強くなって、とうとうオデットにも自覚できるほどになってしまった。
「…メリッサ」
「姫さま」
力なく言葉にしたとき、ちょうど扉が開いて乳母のメリッサが入ってきた。彼女はそのままオデットに駆け寄り、そっと手を握ってくれた。
「…わたし、こっそり夜に起きて本を読んだの。だから熱が出たのよ」
「そうでしたか。姫さまは、もっとお勉強がしたかったのですよね」
怒られるかと思ったが、メリッサは優しく笑ってそう言った。
「…次からは、昼間だけにするわ」
「はい。大切な姫さまのお身体ですから、大切になさってください」
メリッサがそう言って撫でてくれると、心が軽くて温かくなった。そして訪れた微睡みに身を任せ、オデット姫は優しい夢を見ることができた。
(…まさか、数日程度の寝不足で熱を出すとは思わないわよね)
睡眠を削って、王城の豊富な図書をこっそり読み漁っていたオデット姫の幼い身体は、一週間ともたず限界を迎え倒れた。
(これじゃあ、研究以前に身体を鍛えるところから始めないとならないわ。人の子の身体についても、今度調べておこうかしら)
オデット姫は熱に浮かされながら、ガンガン痛む頭に少しばかりの悔いを覚えた。
「姫さま~! しっかりなさってください!」
「私どもはここにおります。しっかり眠っていれば、すぐに良くなりますからね」
「ええ、ありがとう…」
口々に励ましの言葉を言う侍女たちに、オデットは精一杯取り繕って礼の言葉を言った。
(結局、彼女の言うとおりだったかもしれないわね。年長者の言葉には、それなりに耳を傾けるべきということかしら)
今、この場には居らずオデット姫の食べられるものを手配するため奔走している、乳母の顔を思い浮かべた。
彼女のことを思い浮かべた途端、胸に、言いようのない感覚が走った。うずうずするような、一人でぽつんと取り残されたような、とにかくかつての『魔女』としては感じたことのない思いだった。これを言葉にするなら、そう――
(寂しい、かしら)
周りに侍女もいるというのに、不安で、彼女の姿を探したい気持ち。幼い身体で引いた風邪のせいか、いっそうそんな気持ちが強くなって、とうとうオデットにも自覚できるほどになってしまった。
「…メリッサ」
「姫さま」
力なく言葉にしたとき、ちょうど扉が開いて乳母のメリッサが入ってきた。彼女はそのままオデットに駆け寄り、そっと手を握ってくれた。
「…わたし、こっそり夜に起きて本を読んだの。だから熱が出たのよ」
「そうでしたか。姫さまは、もっとお勉強がしたかったのですよね」
怒られるかと思ったが、メリッサは優しく笑ってそう言った。
「…次からは、昼間だけにするわ」
「はい。大切な姫さまのお身体ですから、大切になさってください」
メリッサがそう言って撫でてくれると、心が軽くて温かくなった。そして訪れた微睡みに身を任せ、オデット姫は優しい夢を見ることができた。
2
あなたにおすすめの小説
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
素直になるのが遅すぎた
gacchi(がっち)
恋愛
王女はいらだっていた。幼馴染の公爵令息シャルルに。婚約者の子爵令嬢ローズマリーを侮辱し続けておきながら、実は大好きだとぬかす大馬鹿に。いい加減にしないと後悔するわよ、そう何度言っただろう。その忠告を聞かなかったことで、シャルルは後悔し続けることになる。
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる