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05 転機
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八歳の誕生日を迎えた頃のある日。オデット姫は両親に呼ばれて、王の執務室へ向かっていた。
親子として私室で話すことはあれど、こうして改まって話すのは生まれて初めてだった。
「緊張していますか?」
人目があるため、改まった言葉遣いで後ろを歩くイヴォが尋ねた。
「そうね」
「大丈夫だよ、オデット。怒られるようなことはしてないじゃんか」
イヴォの弟で、オデットと同い年の乳姉弟であるエウトが気楽にそうやって答えた。そして、そんな弟にイヴォが素早く小言を言う。
「『姫さま』だろ、エウト。言葉遣いにも気を付けろ」
「誰も聞いちゃいないって。三人のときは、兄ちゃんだってタメ口使うくせに」
「ここの廊下は官僚や商人達のような外の人々も出入りするんだ。貴族として恥ずかしくない振る舞いをしろ」
「王さまたちの前では、ちゃんとするって」
いつも通りの兄弟たちの様子に、オデットは微笑みを浮かべた。
真面目なイヴォに比べて、エウトは要領の良い性格をしていた。相変わらず本の虫で、いつしか分厚い眼鏡までかけるようになったオデット姫は、学問でも優秀な成績を収めている。しかしそんな彼女と並んでも、決して見劣りしないほどエウトもまた頭の回転がとても早く、何より記憶力がとても良かった。優秀な魔法使いであった前世の「魔女」の目から見ても、エウトの頭脳はずば抜けていた。
(ただ、この空気を読まない性格が問題だわ)
##
執務室で知らされたのは確かに、叱りの言葉ではなかった。しかし同時に全く予想外のことだった。
「弟?」
「そうだよ。オデットはお姉さんになるんだ」
父である王がそう口にした。横で、幸せそうに笑う母が寄り添っていた。
「驚いたかい?」
「……まあ。そうですね、驚きましたわ」
しかし、起こってしまえば必然だとも思う。この国で女性が玉座に就いた前例はないから、オデットは王にはなれないし、いずれ弟は生まれた筈なのだ。
ちなみに「弟」と解っている理由は、神官の占いだった。この国の神官は不思議な力を持っていて、未来の出来事や災いを「予知」できる。そして、今回の懐妊でお腹の子は「勇敢な男児」と結果が出たらしい。
「おめでとうございます。王国の未来に光がありますように」
取り合えず優雅なカーテシーとともに型通りの挨拶をしたオデット。しかし、顔を上げてみると両親は二人とも苦笑いを浮かべていた。
「……? いかがしましたか?」
「……いや。ありがとう、オデット」
何か間違えたのかと思ったが、王は何も言わずにそのまま言葉を続けた。
「それでね。この出来事を祝うとともに、この機会にもう一つめでたい話を進めようと思うんだ」
「はい。何でしょうか」
オデットは直感した。このことがきっとオデットにとって本題であり、遠い執務室へ呼ばれた理由なのだろう。
「魔女を倒した英雄――」
「……!?」
「彼の息子と、君の縁談の話が持ち上がっている。私はこの話を進めようと思っているんだ」
王は、嬉しそうにオデットへ笑いかけた。
「どう思うかな?」
親子として私室で話すことはあれど、こうして改まって話すのは生まれて初めてだった。
「緊張していますか?」
人目があるため、改まった言葉遣いで後ろを歩くイヴォが尋ねた。
「そうね」
「大丈夫だよ、オデット。怒られるようなことはしてないじゃんか」
イヴォの弟で、オデットと同い年の乳姉弟であるエウトが気楽にそうやって答えた。そして、そんな弟にイヴォが素早く小言を言う。
「『姫さま』だろ、エウト。言葉遣いにも気を付けろ」
「誰も聞いちゃいないって。三人のときは、兄ちゃんだってタメ口使うくせに」
「ここの廊下は官僚や商人達のような外の人々も出入りするんだ。貴族として恥ずかしくない振る舞いをしろ」
「王さまたちの前では、ちゃんとするって」
いつも通りの兄弟たちの様子に、オデットは微笑みを浮かべた。
真面目なイヴォに比べて、エウトは要領の良い性格をしていた。相変わらず本の虫で、いつしか分厚い眼鏡までかけるようになったオデット姫は、学問でも優秀な成績を収めている。しかしそんな彼女と並んでも、決して見劣りしないほどエウトもまた頭の回転がとても早く、何より記憶力がとても良かった。優秀な魔法使いであった前世の「魔女」の目から見ても、エウトの頭脳はずば抜けていた。
(ただ、この空気を読まない性格が問題だわ)
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執務室で知らされたのは確かに、叱りの言葉ではなかった。しかし同時に全く予想外のことだった。
「弟?」
「そうだよ。オデットはお姉さんになるんだ」
父である王がそう口にした。横で、幸せそうに笑う母が寄り添っていた。
「驚いたかい?」
「……まあ。そうですね、驚きましたわ」
しかし、起こってしまえば必然だとも思う。この国で女性が玉座に就いた前例はないから、オデットは王にはなれないし、いずれ弟は生まれた筈なのだ。
ちなみに「弟」と解っている理由は、神官の占いだった。この国の神官は不思議な力を持っていて、未来の出来事や災いを「予知」できる。そして、今回の懐妊でお腹の子は「勇敢な男児」と結果が出たらしい。
「おめでとうございます。王国の未来に光がありますように」
取り合えず優雅なカーテシーとともに型通りの挨拶をしたオデット。しかし、顔を上げてみると両親は二人とも苦笑いを浮かべていた。
「……? いかがしましたか?」
「……いや。ありがとう、オデット」
何か間違えたのかと思ったが、王は何も言わずにそのまま言葉を続けた。
「それでね。この出来事を祝うとともに、この機会にもう一つめでたい話を進めようと思うんだ」
「はい。何でしょうか」
オデットは直感した。このことがきっとオデットにとって本題であり、遠い執務室へ呼ばれた理由なのだろう。
「魔女を倒した英雄――」
「……!?」
「彼の息子と、君の縁談の話が持ち上がっている。私はこの話を進めようと思っているんだ」
王は、嬉しそうにオデットへ笑いかけた。
「どう思うかな?」
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