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本編
19 身内のようなもの
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「姉さま、遊んでください!」
そう言ってオデットとそっくりの瑠璃色の瞳で見上げてくる年の離れた弟に、オデットは思わず格好を崩す。
「あら……ごめんねユージーン。私いまはジークフリートさまとお話ししているのよ。あとでね」
「いえ、オデット姫さま。私はもうお暇しても」
ジークフリートはそう申し出てくれたが、流石にそんなわけにもいかない。いつもあと一時間くらいは話していくし、後にも色々と段取りがある。
「そのようなわけには。…ユージーン、一人でここに来たの? 乳母のリビアは?」
「隠れてここにきました! 僕たちは今、秘密の任務の最中なのです」
「任務? ……いや待って、いま僕たちって…」
ニコニコと笑うユージーンに、ちらっとオデットが騒ぎのあった方へ視線を走らせると……そこに控えていたのは、悪びれる様子のないエウトだった。
「……あなた、止めもせずに四歳の子と一体何をやっていたのかしら?」
思わず素でそう言ったオデットに、見た目だけは優雅に笑うエウトが答える。
「いえいえ姫さま。私は王子殿下と庭園のお散歩をしていただけにございますよ。そこへ、姫さまとご婚約者殿がいらっしゃったので、ご挨拶に」
「あのね、僕の宮殿から姉さまの宮に抜ける秘密の通路を見つけたんですよー! あとは城下へ抜ける道と、裏の森へ行く道も!」
「まあ……。まったく、相変わらず二人は仲が良いのねえ」
オデットは、後ろに控えていた近衛隊長の顔色が真っ青になっているのが気にかかった。もしや、その見つけたという抜け道は、「古井戸」のような戦禍のための隠し通路なのではないだろうか。
それはともかく、オデットはすっとぼけて慇懃に振る舞うエウトの手をがっと捕まえて、他の二人に会話の聞こえない距離まで引っ張った。
「何をやってるのよ、エウト」
「いやあ、断り切れなくてつい」
「あなたの方でもノリノリじゃない。ともかく、ユージーンを連れてさっさとこの場を離れなさい」
「ごめんごめん。貴重な逢瀬を邪魔しちゃってさ」
「何言ってるの」
からかうようなことを言うエウトの肩にバシッと一発お見舞いして、取りあえずこの場は済ませた。エウトはオデットの言葉に素直に従って、「行きましょうか、殿下」とユージーンの手を引く。
「失礼いたしました、ジークフリートさま」
「え、あ……いいえ。とんでもないです。謝っていただくようなことでは」
「そう申していただけますと、幸いですわ」
取りなすように笑うオデットに、少し何かに気を取られていたようなジークフリートが答える。そして少し考えるようにした後、彼はこう尋ねた。
「あの方は……、どなたでしたか? 姫さまとも王子殿下とも親しい間柄のように見えましたが」
「ああ…。あれは私の乳母弟ですわ。先ほど申し上げた乳母兄の弟の」
「そ、そうでしたか……」
「私と同い年なのですが、落ち着きがなくて。弟と一緒になって遊んでいたようですわ」
呆れたように、しかし楽しそうに笑うオデット。そんな彼女に、ジークフリートは合わせるように微笑む。
「…信頼しておられるのですね」
「えっ、まあ……。身内のようなものですもの」
「そうですか…」
しばらく考えたあと、彼はポツリとこう言った。
「…あの方は、婚約してる方がいらっしゃるのですか?」
その質問にオデットは虚を突かれた。
「え? いいえ、してませんわ。女の子のお友達はたくさんいるようですが」
「……」
オデットの答えに、ジークフリートはしばらく黙ったままだった。あまりの無礼に呆れているのかな、と思った。しかし、その後は普通に会話をして普通に別れたため、この出来事がオデットの頭に強く残ることはなかった。
そう言ってオデットとそっくりの瑠璃色の瞳で見上げてくる年の離れた弟に、オデットは思わず格好を崩す。
「あら……ごめんねユージーン。私いまはジークフリートさまとお話ししているのよ。あとでね」
「いえ、オデット姫さま。私はもうお暇しても」
ジークフリートはそう申し出てくれたが、流石にそんなわけにもいかない。いつもあと一時間くらいは話していくし、後にも色々と段取りがある。
「そのようなわけには。…ユージーン、一人でここに来たの? 乳母のリビアは?」
「隠れてここにきました! 僕たちは今、秘密の任務の最中なのです」
「任務? ……いや待って、いま僕たちって…」
ニコニコと笑うユージーンに、ちらっとオデットが騒ぎのあった方へ視線を走らせると……そこに控えていたのは、悪びれる様子のないエウトだった。
「……あなた、止めもせずに四歳の子と一体何をやっていたのかしら?」
思わず素でそう言ったオデットに、見た目だけは優雅に笑うエウトが答える。
「いえいえ姫さま。私は王子殿下と庭園のお散歩をしていただけにございますよ。そこへ、姫さまとご婚約者殿がいらっしゃったので、ご挨拶に」
「あのね、僕の宮殿から姉さまの宮に抜ける秘密の通路を見つけたんですよー! あとは城下へ抜ける道と、裏の森へ行く道も!」
「まあ……。まったく、相変わらず二人は仲が良いのねえ」
オデットは、後ろに控えていた近衛隊長の顔色が真っ青になっているのが気にかかった。もしや、その見つけたという抜け道は、「古井戸」のような戦禍のための隠し通路なのではないだろうか。
それはともかく、オデットはすっとぼけて慇懃に振る舞うエウトの手をがっと捕まえて、他の二人に会話の聞こえない距離まで引っ張った。
「何をやってるのよ、エウト」
「いやあ、断り切れなくてつい」
「あなたの方でもノリノリじゃない。ともかく、ユージーンを連れてさっさとこの場を離れなさい」
「ごめんごめん。貴重な逢瀬を邪魔しちゃってさ」
「何言ってるの」
からかうようなことを言うエウトの肩にバシッと一発お見舞いして、取りあえずこの場は済ませた。エウトはオデットの言葉に素直に従って、「行きましょうか、殿下」とユージーンの手を引く。
「失礼いたしました、ジークフリートさま」
「え、あ……いいえ。とんでもないです。謝っていただくようなことでは」
「そう申していただけますと、幸いですわ」
取りなすように笑うオデットに、少し何かに気を取られていたようなジークフリートが答える。そして少し考えるようにした後、彼はこう尋ねた。
「あの方は……、どなたでしたか? 姫さまとも王子殿下とも親しい間柄のように見えましたが」
「ああ…。あれは私の乳母弟ですわ。先ほど申し上げた乳母兄の弟の」
「そ、そうでしたか……」
「私と同い年なのですが、落ち着きがなくて。弟と一緒になって遊んでいたようですわ」
呆れたように、しかし楽しそうに笑うオデット。そんな彼女に、ジークフリートは合わせるように微笑む。
「…信頼しておられるのですね」
「えっ、まあ……。身内のようなものですもの」
「そうですか…」
しばらく考えたあと、彼はポツリとこう言った。
「…あの方は、婚約してる方がいらっしゃるのですか?」
その質問にオデットは虚を突かれた。
「え? いいえ、してませんわ。女の子のお友達はたくさんいるようですが」
「……」
オデットの答えに、ジークフリートはしばらく黙ったままだった。あまりの無礼に呆れているのかな、と思った。しかし、その後は普通に会話をして普通に別れたため、この出来事がオデットの頭に強く残ることはなかった。
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