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本編
18 春になって変わったこと
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年が明けてオデットは十三歳になり、季節が巡って春が来た。その日、オデットは定例のジークフリートとの茶会で、王城自慢の庭園で紅茶を飲んでいた。
「ジークフリートさまは、学園に通い始めたのですよね。様子はどうですか?」
「そうですね…。大変なことも多いですが、寮生活や勉強は新鮮で楽しいです」
最近になって、ジークフリートはオデットとの会話にやっと慣れてきたのか、言葉に詰まったり視線をソワソワとさ迷わせたりすることは無くなってきた。
オデットのほうでも、型通りの会話ばかりでは何より自分がつまらないと感じ、気になったことはそれなりに尋ねるようになっていた。そのおかげか、二人の仲は今まででは一番良好である。
といっても所詮、二人は他人以上友達未満程度の仲なのだが。
「放課後、学年を問わずに集まって好きなことや得意なことを行う活動があると聞きましたわ。そちらには参加されていないのですか?」
「はい。放課後は剣の訓練に時間を割きたくて。それに、とくに興味のある活動も無かったので…」
「そうですか」
その訓練を行うような活動は無いのだろうか、とオデットは思ったが言葉にはしなかった。ジークフリートの実力は同年代のなかで頭一つ抜けているらしいし、一人で黙々と取り組む方がやりやすい気持ちは、オデットにもわかる。
「オデット姫さまは…、もう学園入試の対策も始めていらっしゃるのですよね。素晴らしいと思います」
そう言って、ジークフリートはキラキラとした目で見つめてくる。彼は時々、このような真っ直ぐな尊敬の眼差しを向けてくる。しかし、正直言って年上の婚約者からそのような目で見られるのは、居心地が悪い気分だった。
苦笑いを浮かべて、オデットは答える。
「ああ、まあ……。乳兄妹が入試を受けたときに散々脅してきたもので、早くから準備に取りかかりましたの」
「なるほど……確かに、準備のいる試験ですよね。姫さまのいくつ上の方でしたか」
「七つですわ。ジークフリートさまの四つ上ですので、ちょうど入れ違いで卒業して、先月領地に戻ってしまいました」
「…それは寂しいですね」
ジークフリートが同情したようにそう言うが、正直寂しいという感覚はまだ無かった。
生まれる前から傍に居て、例え離れても数日経てばまた会えるのが当たり前だったので、「いない」という実感がまだ持てない。お茶のとき、イヴォのぶんまで用意をしそうになって、「姫さま」と侍女から首を振られるのが一連の流れだった。
「そうですね……。未だに兄離れできていないようでお恥ずかしいですが。
でも、私には他にもきょうだいがいるのが幸いでしたわ。いなかったらきっと私、退屈で死んでしまいますもの」
「はは……。ああ、ユージーン殿下ですね」
「ええ、それと…、」
エウトが、と言葉を続けようとしたとき、「殿下!」「そちらは今、姫さまとご婚約者さまが……!」という使用人たちの騒がしい声が聞こえた、そのとき。
「姉さま!」
元気すぎる声とともに、小さな影がぴょこりとテーブルクロスの下から飛び出してきた。
「ジークフリートさまは、学園に通い始めたのですよね。様子はどうですか?」
「そうですね…。大変なことも多いですが、寮生活や勉強は新鮮で楽しいです」
最近になって、ジークフリートはオデットとの会話にやっと慣れてきたのか、言葉に詰まったり視線をソワソワとさ迷わせたりすることは無くなってきた。
オデットのほうでも、型通りの会話ばかりでは何より自分がつまらないと感じ、気になったことはそれなりに尋ねるようになっていた。そのおかげか、二人の仲は今まででは一番良好である。
といっても所詮、二人は他人以上友達未満程度の仲なのだが。
「放課後、学年を問わずに集まって好きなことや得意なことを行う活動があると聞きましたわ。そちらには参加されていないのですか?」
「はい。放課後は剣の訓練に時間を割きたくて。それに、とくに興味のある活動も無かったので…」
「そうですか」
その訓練を行うような活動は無いのだろうか、とオデットは思ったが言葉にはしなかった。ジークフリートの実力は同年代のなかで頭一つ抜けているらしいし、一人で黙々と取り組む方がやりやすい気持ちは、オデットにもわかる。
「オデット姫さまは…、もう学園入試の対策も始めていらっしゃるのですよね。素晴らしいと思います」
そう言って、ジークフリートはキラキラとした目で見つめてくる。彼は時々、このような真っ直ぐな尊敬の眼差しを向けてくる。しかし、正直言って年上の婚約者からそのような目で見られるのは、居心地が悪い気分だった。
苦笑いを浮かべて、オデットは答える。
「ああ、まあ……。乳兄妹が入試を受けたときに散々脅してきたもので、早くから準備に取りかかりましたの」
「なるほど……確かに、準備のいる試験ですよね。姫さまのいくつ上の方でしたか」
「七つですわ。ジークフリートさまの四つ上ですので、ちょうど入れ違いで卒業して、先月領地に戻ってしまいました」
「…それは寂しいですね」
ジークフリートが同情したようにそう言うが、正直寂しいという感覚はまだ無かった。
生まれる前から傍に居て、例え離れても数日経てばまた会えるのが当たり前だったので、「いない」という実感がまだ持てない。お茶のとき、イヴォのぶんまで用意をしそうになって、「姫さま」と侍女から首を振られるのが一連の流れだった。
「そうですね……。未だに兄離れできていないようでお恥ずかしいですが。
でも、私には他にもきょうだいがいるのが幸いでしたわ。いなかったらきっと私、退屈で死んでしまいますもの」
「はは……。ああ、ユージーン殿下ですね」
「ええ、それと…、」
エウトが、と言葉を続けようとしたとき、「殿下!」「そちらは今、姫さまとご婚約者さまが……!」という使用人たちの騒がしい声が聞こえた、そのとき。
「姉さま!」
元気すぎる声とともに、小さな影がぴょこりとテーブルクロスの下から飛び出してきた。
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