断罪回避でスローライフ希望〜平凡令息は意外とお人好し〜

桃栗

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ヒルロースの決意表明

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「うわっ…めっちゃ不細工」
翌日、制服に着替え鏡を見た僕は泣き腫らして腫れた目を見て驚いた。
自分で言うのも何だけど、僕は意外と切り替えが早い。
気持ちはまだまだ、助けて!ヒルロース!なんて思ってるけど”運命”なんて言われちゃうと邪魔は出来ない…。
けど、ショックだったな、もう僕の横にヒルロースがいなくなる事が。
計画を見直すしかない…よね…。
氷魔法で目を冷やしながらもう一度鏡を見る。
うん、さっきよりマシ。
「頑張ろう!」
気合を入れてドアを開けると、そこにはヒルロースが立っていた。
「おはよう」
一瞬、言葉に詰まったけど、思いっきり笑顔を作って笑いかけた。
「おはよう!」
顔見られたくなかったけど、仕方ないよね。
早足でヒルロースの前を通り過ぎようとしたら腕を掴まれた。
「どうしたの?早く行かないと遅刻しちゃうよ?」
余所余所しく通り過ぎようとしたのに、腕を引く力が強くて離れない。
「送る、そう言う約束だ」
「あー、それはもういいよ、気にしなくても。逆にごめんね、僕の裏工作でヒルロースを悩ませちゃって!」
「送ってく…」
「いいよ…迷惑かかっちゃう、1人でなんとかするから大丈夫」
何度も何度も腕を振り払おうとしたけど、それでもやっぱり離れない。
あ…ダメだ泣きそう。
「頼む、側に居させてくれ。俺の本心じゃない。だって俺は…」
「言うな!言わないで!僕は1人で大丈夫。」
溢れる涙を見られたくなくてヒルロースから顔を背けようとしたのに、空いてる手で頬を掬い取られ顔を覗かれる。
「腫れてる、治癒魔法かけさせろ…」
心配なんていらない。
治癒もしなくていい。
そう言うつもりだったのに、ヒルロースが小さな声で
「頼む」
と懇願してきた。
そんなの言われちゃうともう何も言えなくなった。
ヒルロースの手の平からキラキラとした光が溢れ出て、僕の目元を覆うと一瞬で瞼が軽くなった。
腫れたままでいいのに…。
「…ありがとう、もういいから離して」
床から顔を上げずに僕を掴んだ手を引き剥がした。
「じゃあ」
足早にその場を立ち去ろうとしたら膝裏を掬われて横向きに抱き上げられた。
「俺はアンブローズの側からは絶対離れない、自分の意思じゃないものに飲み込まれるなんて真っ平ごめんだ」
抱えた腕の温もりに身を委ねてしまいそうになる。
僕はヒルロースの首筋に顔を埋めた。
「裏切り者…」
「うん、ごめん」
「いっぱいいっぱい泣いた」
「うん」
「…運命の彼はいいの?」
「あんなの運命じゃない」
「僕、辛くて悲しくて…寂しかった…」
「ごめん…もう辛い思いさせないから」
「バカヒルロース…」
「…うん」
強い力で首にしがみつき、首筋を噛んでやった。
「!!」
「今度運命に翻弄されたらこの痛みと僕を思い出せ」
「おう、任せとけ!」
校舎の中に入ると登校途中の生徒達が僕とヒルロースを見てヒソヒソ話ししているのが分かったが、そんなの今はどうでもいい。
昔から間近にいて僕が勝手に舎弟扱いしているが、ヒルロースはただの優しいやつだからそれに甘んじてくれている。
だからそんな彼が僕以外を優先させるなんて絶対に嫌だ。
「もう下ろして」
床に足を下ろし、ヒルロースを見上げる。
何も言わず彼の手が目元を押さえ、泣き腫らした目に治癒魔法をかける。
「裏切りは許さない」
僕は悪役令息だ、ヒルロースに関しては強気に出てもいいよね。
「わかってる、だからもう泣くな」
「うん」
「じゃあ行ってくる」
ヒルロースの足が止まる、どうしたんだろう?そう思って自分の手を見たら彼の制服の裾を握っていた。
「あ、ごめん」
困った様子で微笑んで、僕がその手を離すと”大丈夫”そう言って隣の教室に消えて行った。
その姿を眺めていると、後ろから
「今日もお熱いですね、アンブローズ様」
ドキッとして声をかけてきた本人を振り返ると、マッシュウルフのフィンがそこにいた。
「フィン…おはよ!」
「おはようございます」
教室に入って席にカバンを置きながらフィンに話しかける。
「様はやめてくれない?ここは学園だし、身分なんて関係ないからさ、敬語も禁止!」
「了解です、で、何かありました?」
「えっ?なんで?」
「何でって、校舎に入ってから、2人注目の的でしたよ?なんか意味深な表情してましたし」
皆んなやっぱり見てたんだ。
「あー、うん。ちょっとね、喧嘩しちゃってたんだけど、仲直りしたとこだったから…かな?」
喧嘩でもないけど、何かあるとヒルロースが折れてくれてたから、こんなギクシャクするのは初めてだったかもしれない。
「そうなんだ、でも甘~い雰囲気だったよ?」
小声で言われて、何故だか急に恥ずかしくなった。
「あっ…ははははっ」
ここは笑って誤魔化しちゃえ。
「でもいいの?アンブローズってここの王子様と婚約してなかったっけ?」
昨日から色々あってその存在をコロッと忘れていた。
「いいのいいの。昨日言質とってあるから、あの人には」
「そんな言い方して不敬罪にならない?」
「名前言ってないから大丈夫でしょ?しかもあの人僕に興味なんてないよ、僕ってきらわれてるからねー」
「そうなの?昨日の一件僕見てたけど…」
「あの人、僕の顔が嫌みたい。月に一度の茶会もすぐ帰るし、あの人が開いたパーティーには理由つけて僕は部屋に閉じ込められるからねー、よっぽどこの平凡顔が嫁になるって事知られたくないんだろうな、あの人が」
授業の用意が終わり、椅子に腰掛けた。
何だか一息ついたら疲れちゃった…。
「そうなんですか…アンブローズ可愛いのにね」
え?フィン?目大丈夫ですか?
「そんな事言われた事ないから今ビックリしちゃったよ」
ハハハと照れ笑いをした。
「本気で言ってます?街じゃあ皆んなアンブローズの笑顔に癒される~って評判ですよ、愛嬌もあるし、気さくだしって」
「それ、平凡ってことじゃん、でもま、僕も街の人たちは大好きだよ、皆んな元気があって暖かいよねー」
「そーゆーとこが可愛いんです、あの人の周りにいる”顔だけ美人”の人達よりよっぽど素敵です」
「なんか誉め殺しで背筋が痒くなるな…あははっ」
「そう言えばアンブローズ、来週街でお祭りあるの知っています?」
はて?お祭りなんてあったかな??
「そんなのあるんだ!街にはよく遊びに行ってたけど、そんな話聞いた事なかったなー」
「そうなんだ、なら僕と行きませんか?」
後からやって来て話を聞いていたスリーブも会話に入って来る。
「僕も行きたいです!」
友達とお出かけ!
なんていい響きだ!
「行こう!3人で行こう!」
「「はい!!行きましょう!」」
お互い笑い合って約束ゲンマンって指切りをした。
現実逃避かもしれないけど、暫くは色々な事を忘れたい。
ヒルロースのこと。
王子のこと。
物語のこと。
未来の事なんて分からなければ良かったのに…。
そうしてお祭りに出かけた先で、僕は散々な目に遭うのだった。

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