断罪回避でスローライフ希望〜平凡令息は意外とお人好し〜

桃栗

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閑話 ジルベールの初恋 1

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俺はこの街、いやこの国1番の豪商の息子で、跡取り息子。
小さな頃から身体も大きく、喧嘩も強かったからこの辺の悪ガキのまとめ役みたいなことをしていた。
親父曰く、そんな奴を今纏めて大人になったら手下にしたほうが、街中の情報戦には有利だし、何よりこの街の貧困を食い止める策にもなる、そう言ってある程度子供達に渡す金を子供頃から俺は持たされていた。
昔貧乏だった親父はその身一つで商家を立ち上げ、ここまで大きくした。
俺と弟は一応金持ちの息子だが、一度だってそんな風に育てられたことはない、感覚としては街の人達と同じ一般庶民並。
だからこの国に蔓延る貧富の差をどうにかしたいと俺も親父と同じように思っていた。
今の王様はまだ頑張ってるほうだ!と親父は言うが、時期王となる息子の方は色々悪評が聞こえてきて、うんざりするばかりだ。
そんな折、見慣れない子供がよく現れると手下から情報が上がってきてた。
何やらプラプラ歩き回っては街の子供達と遊んだり、屋台で買い物をしたり老人達とおしゃべりしては何処かに帰っていく…と。
何だ、変な奴。
その時の俺はそう思っていた。


ある日俺は屋台の果物を食べながらプラプラと街を散策していた。
その日は朝から勉強漬けで家庭教師が逃してくれず、終わるとすぐさま気分転換に街へ繰り出した。
今日はどんな物が売れているのか?屋台を見るのも好きだし、女腹の人達の噂話も聞き漏らさず、歩き回っていた。
すると目の前で貴族の馬車がものすごい勢いで走ってきたのを避けた老人が抜かるんだ地面に足を取られてしりもちをついていた。
助けに行こうと足を向けた時、ふわふわとした茶色の髪をした小さな子供がハンカチを取り出して泥を拭き、立ち上がるのを助けていた。
彼は道の脇にある木箱に老人を座らせ、どこかに行ったかと思うと、それまで持っていなかった布を広げてその老人の身体にかけてやり、飲み物まで差し出してニコニコと話し始めた。
暫くするとその老人の家族らしき人が現れてその茶髪に頭を下げて、老人は帰っていった。
変わったやつもいるもんだ、と一瞬目を離した隙にそいつは何処かへ消えてしまった。
何日か後のある日、またあの茶髪を見かけた。
よく見ると、顔は普通。特に特徴もなくたぶん女腹体。
服装もこ綺麗にしている、いいところの息子か?ってくらい。
ただ決定的に違うのは瞳の色が、この街の人とは違う。
この国の庶民の瞳はほとんどが茶色か濃い焦茶色だ。
彼の瞳は緑眼、あれは貴族の色。
なんでこんな所で貴族様がフラフラ歩いてんだ?
それも気になって暫く跡をつけた。
スキップしながら歩いては街の人達とヘラヘラと会話し、屋台へ行ってはあれやこれやと買いつまむ。
口にべっとり肉汁をつけ、また街を歩いては困っている人を助けたり、お喋りしたりと忙しなく動く。
その彼は街中の人に”アレン”と呼ばれ、とても人気者になっていた。
今日からはあいつがどこの貴族様なのか、それを調べるために1日中張り付いていたら、最後帰っていったのはある侯爵家のタウンハウスだった。
え?
あいつ侯爵家の人間なの??
あんな庶民感覚に近い貴族なんているのか?
中には入れないし、確認する事もできない。
なら今度見かけたら声をかけてみよう、それで確認すればいい。
そうしてその日は侯爵家から離れ、帰途に着いた。

10日後、家庭教師の授業を終え、街中に繰り出すとふわふわ茶髪がパン屋の前でパンをかじりながら近所の人達と笑いながら話していた。
何なんだこいつ?
と思ったら立ち上がり周りの人に挨拶をしてスキップしながら今度は病院に入っていく。
そこで小一時間してから出てきて、またフラフラ~と歩き回り、重い荷物を持った人を助け、小さい子供達にポケットから出したお菓子を渡し、道に迷った老人を家まで送り届けていた。
貴族じゃないだろ?普通に俺達と同じ庶民じゃねーか。
しかもめちゃくちゃいいやつ!!
それにちょーっと可愛いし。
いや、別に見た目は普通なんだよ?どこにも引っかからないくらい普通、なのになんだ?あの笑った顔!!
食べ物を頬張るリスのようなほっぺ!
子供達に歌ったあの下手くそな歌声!
ダメだな!ダメだ!可愛いすぎて胸が痛い!
胸の辺りを服の上からギュッと握りしめてしゃがみ込んだ。
ああ、ダメだ、射抜かれたハートは元に戻りそうにない。
仕方ないな、会ってみるか。
そうして後日、待ち伏せたパン屋の前でふわふわ茶髪の”アレン”と初めて対面する事になった。




 





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