断罪回避でスローライフ希望〜平凡令息は意外とお人好し〜

桃栗

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閑話 ジルベールの初恋 2

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「おいそこのふわふわ」
揚げパンを頬張りながらきょとんとこっちをみる可愛いふわふわ茶髪。
「にゃに??」
ムシャムシャ口を動かし応えようとすると何を言っているのかわからない。
「何で貴族様がここに居るんだ?」
さっきまで木箱の上に座っていた俺は、周りに聞こえないようにふわふわのところまで行き、耳元で囁いた。
急に的を得た答えに、食べかけのパンを詰まらせる。
「何でわかったのー??」
口にいっぱいパン屑をつけている間抜けな顔、間抜けな筈なのに、これを可愛いと思う自分。
「ったく、俺もよっぽど物好きだ…」
小声で自分に言い聞かせるように呟く。
「何で街なんかに出てきてるんだ?貴族なら不自由なんてないし、庶民の生活なんて興味ないだろ?」
未だモグモグとパンを頬張っていたふわふわ茶髪が、口を拭ってパンを横に置いた。
「ねぇ?君ってもしかしてジルベール?」
「何でお前が俺の名前を知ってる?」
ふふふふっ…
なんだか不気味な顔をしながらガバッと近寄って来たふわふわ茶髪が俺に体当たりで抱きついてきた。
「やっと会えたー!君を探してウロウロしてたんだけど、なかなか会えなくてさ!こんなイケメンだったんだね~」
抱きつきながら顔を上げ微笑んだ。
「うっっっ!」
可愛い!!超絶可愛いだろ!!
何だよそのうるうるとした小さな瞳に小ぶりのぷくっとした真っ赤な唇!
「ねぇ、ジルベール?僕と商談しない?きっと君に得になる商売相手だと思うよ、僕」
「わかった、とりあえず話聞かせろ!」
残りの揚げパンを口に入れ、周りの人達に笑顔で挨拶をして俺の手を引いた。
「お前さ、名前は?」
「アレンだよ?」
「じゃなくて本当の名前!」
「あぁ!僕はアンブローズ・フォン・ファブロス」
やっぱり…当たりだな。
「ファブロス侯爵家か…」
「うん!」
「俺まだ子供だぜ?親通して商談した方が良いんじゃね?」
「僕だって子供だし、子供同士の方がいいじゃん、それに僕の発明品だから僕のお金になるんだし、これは僕個人の資産にしたいから、内緒にしときたいんだよね!」
「なんでまた侯爵家の人間が?」
「んー、ジルベールって口硬いよね?商売人の息子なら」
当たり前だ。
この仕事で口が軽かったら、信用されないのは当たり前のことだし、お前だって俺のこと、見た目と名前しか知らないだろう?それなのにいいのか?何を話そうとしているのか知らないが…。
「お前が信用してくれるなら俺はそれに答えるだけだよ」
「うん、やっぱり大丈夫だね、商談の前に僕の話聞いてくれる?」
そう言ってアンブローズがポツポツと話し出した。
自分が王家から断罪され辺境の鉱山送りになる未来を持っているそうだ。
それを知っているのは前世の記憶があるからで、その断罪劇を阻止する為にもう少ししたら動き出す運命に立ち向かうべくいろんな工作をしている事。
そしてもし、無事に断罪だけで終えた時、庶民として生きる為に侯爵家のものじゃないお金が必要な事。
前世の記憶で、商品化ができそうなものが結構ある、らしい。
俄には信じられない話だが、俺の商売人としての感がこの話には乗るべきだと言っている。
ここは即決すべきでは?
少しの間考えあぐね、本人に幾つか質問をしようと顔を上げたが、そこにアンブローズはいず、辺りを見回すと子供達と何やら遊んでいた。
長い紐を2人で回し、その合間をぬってその回した紐の中に入って飛んで遊んでいた。
子供達は大喜びで、アンブローズも一緒になって遊び笑いが絶えない空間になっていた。
話の途中で居なくなるのは良くないが、あの楽しげな場所で笑い合っている子供達はとても幸せそうだ。
「アンブローズ!!」
声を張り、彼を呼ぶ。
「あれは何の遊びだ?」
「あれはね、縄跳びって言うんだ、前の世界で子供の頃に遊んでた遊具なんだよー!」
「…そうか…」
「本当はね、紐じゃなくてもう少し弾力のあるゴムって言うものを使うんだけど、この世界ではそう言った素材がないんだよね、どう?ジルベールならどうにかできるんじゃない?」
どうにかできる…??俺はまだ子供だぞ??
「君ならできるでしょ?絶対商才あるもん」
うっ…、こいつ何でこんなに俺の欲する言葉を言ってくるんだ。
魔性だな、しかも無自覚無天然の…。
「しかもさ、今作るとなるとちょっとお金はかかっちゃうと思うんだけど、これを銅貨1枚くらいで売ったら?」
「そんな安く??」
「そう、でもさ、もしこれをこの国、いや、大陸全土の子供達が持つとなったらその金額って凄い事にならない?」
「どうやって全土に広める?」
「ふふふっ…それを作って売る前にまずやる事があるんだよね、それにはとてつもなく莫大なお金も時間もかかる、けど、ハキル商会はそれ以上に儲かる事を保証するよ!この僕がね!」
アンブローズはそう言って不敵な笑みを浮かべた。





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