溺愛αの初恋に、痛みを抱えたβは気付かない

桃栗

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晴翔 ②

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3ヶ月に一度、どうしても行かなければいけない所がある。
第三月曜日と決まっていた。



15歳のある日、引き合わされたオメガ、婚約者の木崎馨は俺より1つ年下のよく知った顔だった。
日本で有数のホテルチェーンをもつ家の御曹司。
彼とは親に連れて行かれる色んなパーティーでよく顔を合わせていたからだ。

小ぶりの顔にこぼれ落ちそうな大きな瞳。
その横に色気を思わせるホクロ。
高く整った鼻筋に小さな薄い唇。
彼を見れば美しいと皆んながみんな口を揃えて言うだろう。
ニコッと微笑んだ笑みは好ましいと感じるも、彼のフェロモンが鼻について吐き気がする。
きつい百合の花の匂いと言っていいのか、とにかく、自分にとっては心地のいいモノとは全く違った。

もう婚約も結婚も決まっていたから、顔を合わせてすぐに2人でホテルの庭に放り出された。

会わなくても結婚するときに顔を合わせるだけでいいのに、と思ったが、親達の浮き足だった感じを見ると引っ込みが付かなくなっていた。

親は俺が気にいると思っている。

それは彼が綺麗で美しいからか?
間近で俺と智洋を見ているにもかかわらずだ。

親は知っている、俺の運命が智洋だと思っている事に。

何かの間違いで彼の二次検査の際にオメガとわかってもきっと愛人にしろ、としか言わないだろう。

普通の親なら最低だか、俺には何百万の人とその家族の生活がかかっている。
重い枷だ。

気持ちを切り替えて周りを見渡す。

老舗のホテルには広大な庭園が広がっていて、その真ん中には大きな池もあり、とても素晴らしい景色だった。

「綺麗でしょ?これは祖父が造らせたんです」
隣で歩いていた彼は自分の容姿をよく分かっているのか、笑顔を作り首をちょこんと傾げた。

俺でなければこれだけでイチコロだろうな、さっきは好ましいと思った笑顔でさえ嘘に塗れているように見えた。

「これは素晴らしいな、見せてやりたいよ」
智洋に、と声には出さずに景色を眺める。

「晴翔さん、結婚はまだ先ですが、それまで婚約者の決まり事としてのこと、聞いてくださっていますか?」

決まりごと?
なんのことだと問う。

「僕のヒートが先月始まりました。期間も短く、初めてだったので、次のヒートは来月に来るだろと言われています。その時、一緒に乗り越えてもらうのが、婚約者としての決まりごと、聞いてませんか?ご両親には?」

寝耳に水とはこのことだろう。
両親はこの話を俺に話すと今日ここに来ないと言い出す事がわかっていたからだ。
怒りのフェロモンが出そうになる。
だが神戸家の者として弱味になる姿は見せられない。
智洋には黙っていればわからない。
なら受け入れる選択肢しかない。

「わかった、ヒートが来たら知らせてくれ」

「来月の第三月曜日から5日間です、このホテルにいるので、よろしくお願いしますね、晴翔さん」
不敵に笑ったのか、わからない。
が、彼も上位オメガ。
腹の中は俺とそう考えは変わらないだろう。
食えないヤツだ。
だが俺も相当食えないヤツだな、智洋には何もしらせないんだから。
モヤモヤする気持ちを抱えてその日木崎とは別れその足で俺は素知らぬ顔で智洋に会いに行く。
彼の大好きなケーキを携えて。
本当に最低だ。


そして俺は自分の意思とは反して唯のセックスマシーンと化する。
アルファのラットなど、そんなもんだ。
ただ、どんな誘惑にも負けず首だけは噛まないと心に誓う。

半月後、それはあっという間にやって来たのだった。
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