溺愛αの初恋に、痛みを抱えたβは気付かない

桃栗

文字の大きさ
7 / 59
1

回想 ②

しおりを挟む
その後、どうやって家まで帰ってきたのか。

晴翔の表情が、どんなだったか。
僕の笑顔が彼にどう映ったのか。
それさえも薄ぼんやりしていて思い出せない。

ただ、手には晴翔から渡された封筒を持っていて、自分の部屋に戻り、それを机の上に放り投げ僕はベットの上に倒れ込んだ。


「ちゃんと言わなきゃと思ったのに、結局また言えずじまいだな……」

「ダメダメじゃん、僕……」

洗い立てのシーツから香る柔軟剤の匂い。
晴翔のフェロモンに似ていた気がして使い続けている。



ベータの僕にわからないはずの晴翔の匂い。

出会った頃から少しだけど甘く香るんだ。


なんでだろう?

って晴翔に聞くと彼はいつも


「運命だからだろ」

て言うんだ。


あ……
泣きたくなってきちゃった。


夏祭りの日、晴翔に友達以上のものを感じた。
だから触れ合うだけのキスをされて胸が震えた。


でもすぐにこの気持ちは晴翔に知られちゃいけない、隠さなきゃダメなんだって。

「婚約者ができたんだ」
なんて言葉を聞いたから。

あの時決めたはず、僕達は友達、それ以上でも以下でもない、ただの友達なんだって。


でもダメだな、僕。

あの時より好きになってるじゃん。


自然と溢れる涙が頬を伝う。


明日また考えよう。

考えて考えてもきっと答えなんて出ないだろう。
でも、朝が来ない夜はないんだから……

なんとかなるよね?

楽観視できるのが僕の良いところ。


グルグル、グルグル出ない答えを探し、止まらない涙と共に静かに夜は明けていった。







☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


朝、迎えに来た同じクラスの瀬川凌太が僕の腫れた目を見て驚いて肩からかけたリュクを取り落とした。

「またべったりと……智大丈夫か?これって晴翔様となんかあったりするん?」
「大丈夫じゃない、慰めて凌ちゃん」
「うー、抱きしめてやりたいけど、俺怖くて無理やわ。頭くらいなら撫でたってもええで!」
「抱きしめるって、それは違うでしょ、でも頭は撫でて欲しいかも……」

ちょっとスキンシップの激しいこの同級生は3年生になって大阪から引っ越してきた瀬川凌太。
身長も晴翔と同じくらいあって、勉強も運動も出来たりする。
母方に北欧の血が混ざってるらしく、はっきりした顔立ちのイケメンだ。
言葉もだけど芸人みたいに面白くて気持ちのいいヤツなんだ。
うちの高校はほとんどがベータの生徒ばかりだから、凌太みたいなヤツは凄く目立つ。
仲良くなった時はアルファだよね?
って声掛けたくらい僕達とは出来が違った。

なのに本人は”アルファなわけないやん、あの人達には足元もおよばんよ~”
って否定された。
だから本当のところはわかんない。

僕が晴翔関連で悩んでいると
「またなん?そんなに悩むんやったら早めに離れてしまった方がええで!離れたら俺が智の面倒みたるで!」
ちょっとおちゃらけた雰囲気で僕を慰めてくれる。

晴翔と色々あった日は、そんな彼に甘えたくなるんだ。

髪をぐちゃぐちゃにかき回され
「今日、ベータの奴らでも智には近づかれへんと思うから、俺の近くにおったらええわ!ほんま晴翔様の独占欲強すぎやで!」

「うん、なんかわかんないけど、凌ちゃんが近くにいればいいや、一緒にいてね?」

昨日から一睡もできていない僕は今日1日きっとポンコツなはず。
凌太に助けてもらわないと何もできない気がする。
乱れた髪もそのままに助けを求め頭をちょこんと胸に押し当てた。

「ありがとう、頼りにしてます」

「もー、自分そーゆーとこやで!!反則やわ!逆にムカついてきた!!」

ムカついている割には撫でてくる手は優しくて、抱きしめてくれないって言ってたから、両手で彼の制服の裾を掴んだら大きなため息をつかれて

「だからそーゆーとこ!!」

「ん、ごめんなさい、凌ちゃん」

学校行くで、って手を引かれた。
僕って手を引かれてばかりだな、って考えてたんだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

処理中です...