溺愛αの初恋に、痛みを抱えたβは気付かない

桃栗

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聞きたい言葉

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終わりそうにないので長編に変更します。
甘々な場面が少なくてすみません。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


カーテンの隙間から一筋の陽が差し込む。

目が覚めたら晴翔のベットの上で、今目の前に初めて見る晴の寝顔があった。

いつも不機嫌な顔がただの少年の姿に見える。

「いつみても綺麗な顔」
顔に掛かった薄茶の髪を耳にかける。

昨日のことが嘘みたいに静かな寝顔。


晴がドアの向こうにいる、そう感じたのはとてつもない怒りと悲しいフェロモンが肌に痛みを感じるほど伝わってきたからだ。

ああ、僕は彼の琴線に触れてしまった、そう心が語りかけてくる。

あれは凌ちゃんが何かした代償。

何となくわかっていたのに、それを受け入れて晴に会おうとした。

高校のことも、どうにかして一緒の学校に入りたい、そう思っても家の状況では到底無理な話だった。

一緒に居たいのに、どうする事もできない。
ならいっそのこと離れてしまった方がいいのかも、と選択してみたが、胸が引き裂かれるように心が痛んでそれも僕には無理だった。


晴の怒りに触れたその時意識を失うのと同時に
もう離れられないな、そう思った。

どんな形であれ、僕が晴翔のものなんだと。
そう思ったんだ。


ゆっくりと開いた目が僕を見る。
虚な目で何度も瞬きをした晴の綺麗な顔がニコッと微笑む。

「おはよ」

少し掠れた声。
大好きな声。

「おはよう」

初めての寝起きの晴。
「晴、あのね、高校のことなんだけど…」

「智はどうしたい?」

腰を引き寄せられ胸に抱き込まれる。
いつもの晴の匂いが鼻をくすぐる。

「晴と一緒にいたいよ、ずっと」

もう一度強い力で抱き込まれた。

「なら…何も言わずずっと側にいろ」

顔を上げると額にキスが落ちてくる。

「……でた、俺様な晴」

「当たり前だ、お前は俺のピースでオメガじゃなくても運命なんだから」

「高校離れちゃう…」
「来年から寮生活だ、もう手続きもしてある。決定事項だからちゃんと用意しとけよ」

「うん…わかった」

「違うとこに行くつもりだったのにいいのか?」

「……思ったんだ、僕が晴と離れられないって。でもじいちゃん、ばぁちゃんに迷惑かかっちゃうな…」

伸びた手が僕の頬を撫でる。

「心配いらない、もう解決済みだ」

「晴は何でも勝手に決めて……僕が行かないって言ったらどうするつもりだったの?」
「無理にでも連れて行くつもりだった、ってか誰なんだお前にべっとりついてたアルファのやつ」
「えっと凌ちゃんかな?大好きな友達だよ、ベータって本人は言ってるけど、やっぱアルファだよね…」
「アレは俺と同種だよ、たぶん。上書きしてきやがった、くそ、今でもブチキレそうだ」
「でも優しかったんだ、落ち込んでた僕に…とっても優しかったの」

突然ガバッと起き上がって晴が上から見下ろしてくる。
「今度会わせろ、一瞬でズタズタにしてやる!」

今ちょっと昔の晴が戻ってきてる、なんか「可愛いな」
と言葉が口から溢れたら

「可愛いだろ、そんな俺も見られるのも智だけなんだから、よそ見すんな。」

それから高校の事、婚約者と3ヶ月に一度会う事、凌ちゃんのことなど、色んなことを話した。

「晴…」
覗き込む晴を見上げ、首に腕を回した。

「晴、すき……好きだよ、大好き…婚約者がいてもいい、側に置いて…」

邪魔にならない様に隅にでも置いて欲しい。
近くに居るだけで幸せなんだ、だから

晴の前で泣かないって決めたのに、自分で言ってて涙が止まらなくなった。

「泣くなよ、智」
頬を伝う涙を晴が舌で拭いとる。

そして。

重ねるだけの優しいキスが唇に落ちてきた。


でもね、晴。
晴はきっとわかってる。


出会ってからまだ一度だって

好きだ…

と言ってくれたことはない。

言ってくれたことがないんだ…


ねぇ

晴…

晴は本当に僕のことが好きなの?






僕はね、大好きだよ…








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