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1-閑話
凌太と馨
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老舗のホテルで行われる、大物政治家が主催するパーティーは、政財界や有名芸能人、著名人などたくさんの人で賑わっていた。
どこを見渡してもテレビで日夜顔を見る人達ばかりで、この日が初めてのパーティーデビューとなる俺は、一般人よろしく少しウキウキしながらじじいの後をついて回っていた。
東京に来るのはあの時以来なので、時間が合えば会いに行ける??って思ってたんよねー。
じじいの秘書である田沼さん(通称 氷の貴公子)にそのことを伝えると、持っていたタブレットの画面を見せられ
「どこにも空き時間などございません!」
と、冷たい風が頬に突き刺さる勢いでダメ出しをされた。
なんだかんだともう3年、気を遣いつつ頑張ったこの3年!何かご褒美が欲しい~!!と田沼さんにお願いをしてみるも、ものの見事に
「我慢なさい!」
と叱咤されてしまったのである。
田沼さん、飴と鞭って言葉知ってますか?
たまには飴も貰わんと、俺干からびて何にもできひんようになりますよー、なんて小さな声で言ったみたら
「聞こえていますよ、凌太様」
眼鏡を押し上げながら鋭い目で睨まれた。
めっちゃ怖いやん!
じじいも恐ろしいが、田沼さんは切れ長のすらっとした美人さんなので、怒らせると周りの温度がいくらかは下がってしまい、俺やその辺にいる人を慄かせるのである。
有能なので、どこにも突っ込むところがない完璧マン。
強いて言えば天然なので、たまにきつい顔してポンコツになるくらいなんだよなー。
じじいの知り合いは重鎮ばかりなので、あまりこちらから挨拶に行くことなどないので、金魚の糞の俺はちょっとした(ほんまにちょとした)時間ができるもんだから、田沼さんの目を盗み、老舗のホテルの探索に出かけた。
その庭園は見事なまでの様式で、子供の俺にも
すげ~
綺麗~
と思わせるほど圧巻だった。
魑魅魍魎と化したゾンビ、もとい政治家や有名人たちに囲まれているよりは空気もよくて外は歩いているだけで、気分が良かった。
小さな橋に差し掛かった時、少しきつい百合の様な香りと、橋の下から大きな怒声が聞こえてきてた。何事かと下を覗くと、また大声で
「キモいんだよ、じじぃ、くそっ尻ばっか触りやがって!マジくそ!死ね!死ね、死ね!!」
ちょっとびっくりしたので、口の横で手を添えて小声で
「女の子が死ね、死ね!ってそんな言ったらあかんで~、可愛い顔が台無しやで」
と声をかけてみた。
くるっと振り向いたその女の子はめちゃくちゃ怒りながら
「誰に向かって女の子っていったんだ!!俺は男だ!!」
息を切らして怒りに震えている。
ええ~っ、男の子???
どー見たって女の子やん!
肩まである黒い髪に大きな瞳の横にはほくろがある。
スッと通った鼻筋にぷっくりとした唇、おまけにピンク色の桜が描かれた可愛い着物を着ていた。
どこをどーとっても女の子だった。
「え?めっちゃ女の子にしか見えへんけど??」
そういうと、橋の下から駆け上がり拳骨で頭を殴られた。
「女、女ゆうな!!くそ、どいつもこいつも。だからこんな髪型も服装もアレほど嫌だって言ってるのに!」
うわぁーーーん!!と泣き出してしまった。
「え??ちょ、ちょっと泣かんといてや!」
「な、泣くな…って、お…おま…お前が泣かしたんだろ!」
また大声で泣き出した。
収集つかへんこれ、でこの子誰なん??
オロオロしながら、ハンカチを渡し、近くにあるベンチに座らせて何とか落ち着かせる。
「ほんま勘違いやったんやな、ごめんやで!でもいい匂いもしてるし、自分オメガやろ?女の子ってゆったのは俺が悪い!でも可愛い!ってのは正義やで!!だからってお尻は触ったらあかん!それくらいは分かんで!俺、できる男やからな!」
そう言って肩をポンポンと叩き顔を覗き込んだ。
あ、ちょっと気が紛れた?
「なんかごめんやで、気を悪くさせるつもりなかってん」
「ううん、俺のほうこそごめん」
「ええって、ええって!口悪いから、どんなヤンキーが出てくるんか、って思ったらまさかの別嬪さんが怒りまくってるとは思わへんかったからびっくりしたわ!」
身振り手振りで説明してたら泣き腫らした顔が優しく微笑んだ。
どうみても良いとこのポンポンって感じやな。
見た目はめっちゃ可憐やけど、中身は違うみたい、なんかアンバランスやなぁ。
「そや、俺がガードしたろうか?今ちょっとだけ暇やから!」
大きい瞳やなぁ。
なんか吸い込まれそう、じっと見つめたなる。
「ちょ、近い!」
顔に手を翳し、遠ざけられた。
「ごめん、あんまり大きい瞳やから、吸い込まれそうになったわ!」
「俺、この瞳とか顔とか声とか全部嫌いなん!俺は男だ!
オメガだからってこんな女みたいな服着てこんな髪型して顔だって女みたいだから凄く舐められる。家の為ってパーティーに出たり、オヤジたちに触られて文句言えば親に叱られる。なんで、なんでおれオメガなんだろう…」
そう言ってまた小さな子供みたいに泣き出した。
年齢を聞くと俺より一つ下。
良家ってのは色々大変だよな、俺だって安藤のじじいに引き取られてから前とは真逆の生活になってるもんなぁ~
しかも男オメガは大変だって聞く。
初めて会ったけどなにかできることあったりするかな?
「アレやな、俺はアルファで今めっちゃ厳しい修行?なんて言うと沼田さんに怒られるな、厳しく躾けられて身体はボロボロやし、心は折れまくって心神喪失やねん。
オメガって大変なんわかってるけど、俺もそこそこ大変やねん!わかる?」
「う、うん、なんとなく?」
「んでな、俺気になる子いてて、その子に会わしてもらう為に今めっちゃ頑張ってんねん!」
「うん」
「えっと君?名前なんて言うの?」
「…馨」
「俺、凌太!」
「でな、馨はなんか頑張ってることない?たとえばスポーツとか、勉強とか?」
「弓道…かな。」
「じゃあ俺はその子に会うのを頑張って、馨は弓道で1番になる為に頑張る!!でさ、来年の今日のこの日、絶対何がなんでも俺と会う!家のことも大変やと思うけど、なんか目標あった方が色んなこと頑張れると思うねん!ま、俺がそうやしね!!」
どうかな?
ちょっと1人で盛り上がりすぎたかな?
何も言ってくれないから、あ、俺お呼びじゃない??なんて背中に冷や汗が流れる。
「…うん、わかった、俺が凄いって見せつけてやる!
一年もすればもっと成長して男っぽい俺を見せてやる!!」
「おう!お互い頑張ろうな、馨」
力説するその姿が可愛いすぎて小ぶりな頭をなでなでした!
髪の毛柔らかい~
ちっこい
可愛い~
顔を真っ赤にした馨になでなでした手を払われた。
「とりあえずメール教えてや!来年会うまでにお互い慰め会おうぜ」
メールの交換を終えてアドレスを確認してると
その時鳴ったスマホの着歴を見て恐れ慄く。
沼田、沼田、沼田…
あ~帰ったらお仕置きされる~
「じゃあ馨、また来年!!会おうぜ!メールはいつでもしてな!早く帰らなこわ~いお兄さんにお尻ぺんぺんされるねん!またな~」
可愛い子との別れは寂しいけど、お互い頑張る為やしな!
名字は分からずじまいやけど、それくらいの距離感がちょうどええかもしれへんな!これから遠距離メール楽しみやわ!
とウキウキ半分、怖さ半分で沼田さんのところに向かった。
一年後お互い頑張れてたらいいな~
そう思った。
どこを見渡してもテレビで日夜顔を見る人達ばかりで、この日が初めてのパーティーデビューとなる俺は、一般人よろしく少しウキウキしながらじじいの後をついて回っていた。
東京に来るのはあの時以来なので、時間が合えば会いに行ける??って思ってたんよねー。
じじいの秘書である田沼さん(通称 氷の貴公子)にそのことを伝えると、持っていたタブレットの画面を見せられ
「どこにも空き時間などございません!」
と、冷たい風が頬に突き刺さる勢いでダメ出しをされた。
なんだかんだともう3年、気を遣いつつ頑張ったこの3年!何かご褒美が欲しい~!!と田沼さんにお願いをしてみるも、ものの見事に
「我慢なさい!」
と叱咤されてしまったのである。
田沼さん、飴と鞭って言葉知ってますか?
たまには飴も貰わんと、俺干からびて何にもできひんようになりますよー、なんて小さな声で言ったみたら
「聞こえていますよ、凌太様」
眼鏡を押し上げながら鋭い目で睨まれた。
めっちゃ怖いやん!
じじいも恐ろしいが、田沼さんは切れ長のすらっとした美人さんなので、怒らせると周りの温度がいくらかは下がってしまい、俺やその辺にいる人を慄かせるのである。
有能なので、どこにも突っ込むところがない完璧マン。
強いて言えば天然なので、たまにきつい顔してポンコツになるくらいなんだよなー。
じじいの知り合いは重鎮ばかりなので、あまりこちらから挨拶に行くことなどないので、金魚の糞の俺はちょっとした(ほんまにちょとした)時間ができるもんだから、田沼さんの目を盗み、老舗のホテルの探索に出かけた。
その庭園は見事なまでの様式で、子供の俺にも
すげ~
綺麗~
と思わせるほど圧巻だった。
魑魅魍魎と化したゾンビ、もとい政治家や有名人たちに囲まれているよりは空気もよくて外は歩いているだけで、気分が良かった。
小さな橋に差し掛かった時、少しきつい百合の様な香りと、橋の下から大きな怒声が聞こえてきてた。何事かと下を覗くと、また大声で
「キモいんだよ、じじぃ、くそっ尻ばっか触りやがって!マジくそ!死ね!死ね、死ね!!」
ちょっとびっくりしたので、口の横で手を添えて小声で
「女の子が死ね、死ね!ってそんな言ったらあかんで~、可愛い顔が台無しやで」
と声をかけてみた。
くるっと振り向いたその女の子はめちゃくちゃ怒りながら
「誰に向かって女の子っていったんだ!!俺は男だ!!」
息を切らして怒りに震えている。
ええ~っ、男の子???
どー見たって女の子やん!
肩まである黒い髪に大きな瞳の横にはほくろがある。
スッと通った鼻筋にぷっくりとした唇、おまけにピンク色の桜が描かれた可愛い着物を着ていた。
どこをどーとっても女の子だった。
「え?めっちゃ女の子にしか見えへんけど??」
そういうと、橋の下から駆け上がり拳骨で頭を殴られた。
「女、女ゆうな!!くそ、どいつもこいつも。だからこんな髪型も服装もアレほど嫌だって言ってるのに!」
うわぁーーーん!!と泣き出してしまった。
「え??ちょ、ちょっと泣かんといてや!」
「な、泣くな…って、お…おま…お前が泣かしたんだろ!」
また大声で泣き出した。
収集つかへんこれ、でこの子誰なん??
オロオロしながら、ハンカチを渡し、近くにあるベンチに座らせて何とか落ち着かせる。
「ほんま勘違いやったんやな、ごめんやで!でもいい匂いもしてるし、自分オメガやろ?女の子ってゆったのは俺が悪い!でも可愛い!ってのは正義やで!!だからってお尻は触ったらあかん!それくらいは分かんで!俺、できる男やからな!」
そう言って肩をポンポンと叩き顔を覗き込んだ。
あ、ちょっと気が紛れた?
「なんかごめんやで、気を悪くさせるつもりなかってん」
「ううん、俺のほうこそごめん」
「ええって、ええって!口悪いから、どんなヤンキーが出てくるんか、って思ったらまさかの別嬪さんが怒りまくってるとは思わへんかったからびっくりしたわ!」
身振り手振りで説明してたら泣き腫らした顔が優しく微笑んだ。
どうみても良いとこのポンポンって感じやな。
見た目はめっちゃ可憐やけど、中身は違うみたい、なんかアンバランスやなぁ。
「そや、俺がガードしたろうか?今ちょっとだけ暇やから!」
大きい瞳やなぁ。
なんか吸い込まれそう、じっと見つめたなる。
「ちょ、近い!」
顔に手を翳し、遠ざけられた。
「ごめん、あんまり大きい瞳やから、吸い込まれそうになったわ!」
「俺、この瞳とか顔とか声とか全部嫌いなん!俺は男だ!
オメガだからってこんな女みたいな服着てこんな髪型して顔だって女みたいだから凄く舐められる。家の為ってパーティーに出たり、オヤジたちに触られて文句言えば親に叱られる。なんで、なんでおれオメガなんだろう…」
そう言ってまた小さな子供みたいに泣き出した。
年齢を聞くと俺より一つ下。
良家ってのは色々大変だよな、俺だって安藤のじじいに引き取られてから前とは真逆の生活になってるもんなぁ~
しかも男オメガは大変だって聞く。
初めて会ったけどなにかできることあったりするかな?
「アレやな、俺はアルファで今めっちゃ厳しい修行?なんて言うと沼田さんに怒られるな、厳しく躾けられて身体はボロボロやし、心は折れまくって心神喪失やねん。
オメガって大変なんわかってるけど、俺もそこそこ大変やねん!わかる?」
「う、うん、なんとなく?」
「んでな、俺気になる子いてて、その子に会わしてもらう為に今めっちゃ頑張ってんねん!」
「うん」
「えっと君?名前なんて言うの?」
「…馨」
「俺、凌太!」
「でな、馨はなんか頑張ってることない?たとえばスポーツとか、勉強とか?」
「弓道…かな。」
「じゃあ俺はその子に会うのを頑張って、馨は弓道で1番になる為に頑張る!!でさ、来年の今日のこの日、絶対何がなんでも俺と会う!家のことも大変やと思うけど、なんか目標あった方が色んなこと頑張れると思うねん!ま、俺がそうやしね!!」
どうかな?
ちょっと1人で盛り上がりすぎたかな?
何も言ってくれないから、あ、俺お呼びじゃない??なんて背中に冷や汗が流れる。
「…うん、わかった、俺が凄いって見せつけてやる!
一年もすればもっと成長して男っぽい俺を見せてやる!!」
「おう!お互い頑張ろうな、馨」
力説するその姿が可愛いすぎて小ぶりな頭をなでなでした!
髪の毛柔らかい~
ちっこい
可愛い~
顔を真っ赤にした馨になでなでした手を払われた。
「とりあえずメール教えてや!来年会うまでにお互い慰め会おうぜ」
メールの交換を終えてアドレスを確認してると
その時鳴ったスマホの着歴を見て恐れ慄く。
沼田、沼田、沼田…
あ~帰ったらお仕置きされる~
「じゃあ馨、また来年!!会おうぜ!メールはいつでもしてな!早く帰らなこわ~いお兄さんにお尻ぺんぺんされるねん!またな~」
可愛い子との別れは寂しいけど、お互い頑張る為やしな!
名字は分からずじまいやけど、それくらいの距離感がちょうどええかもしれへんな!これから遠距離メール楽しみやわ!
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