溺愛αの初恋に、痛みを抱えたβは気付かない

桃栗

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1-閑話

執事 山科

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日本最大の財閥、神戸家。

そこの使用人の子供として僕は産まれた。
ここには使用人が住むマンション棟が建っており、そこにベータの両親、姉、そして何故だかアルファとして生まれた僕の4人で住んでいた。

僕としては平々凡々なベータ家系なので、自分自身ものほほんとしていたし、神戸家の人達のような強いアルファ性も持ち合わせて居なかったので、大学卒業後は地元のそこその企業にでも務めて、いい人がいれば結婚でもしよう、などと漠然と考えていた。

それが大学を卒業後、神戸家の執事長から執事にならないか、と声をかけられたのだ。

その年の就職状況は先輩を見ていても明からに大変そうだったし、部屋も同じ使用人棟に用意してもらえると言われたので、有り難く執事になることを決めた。

執事長はその時すでに高齢で僕に執事の仕事を教え込むとあっさりと職を押し付け退職していった。

最年少で執事長の職を得たのは僕が仮にもアルファであったことが大きく影響していたようだ。

そこそこ器用になんでもこなすので誰からも文句などは出なかったのもこんな僕が執事長になった所以である。

目立たず、ひっそりと過ごしたかった僕にとしては、なんでこんな事になってしまったんだろうと頭を抱えたもんだ。

僕が執事長になった頃、家政婦長の川崎さんの息子夫婦が亡くなり、孫である智洋君が家政婦部屋に出入りするようになった。

智洋君は小動物の様に可愛く、ベータなのにも関わらず、ふわっとオメガのような匂いがしていた。

僕には姉しかしないので、智洋君を弟のように可愛がりすぎて、たまにウザい、と大きく口を膨らませ文句を言われたが、その姿もまた可愛く、構ってしまう要因だと僕は思っている。


それがいつしか神戸家の御曹司である晴翔様と仲良くなっていったが、その仲は徐々に番に見せる執着の様なものに変わっていった。

見ていても怖くなるほどに…。

晴翔様の誕生日会を目前にしたある日。

川崎さんに智洋君と対になるような浴衣を作ってもらっていた晴翔様は、今日開催される地元のお祭りにこれから智洋君と出かけてくると僕に声をかけてきた。

夜には花火が上がるんだって、と、とても楽しそうに話していた。

こんな子供のような姿の晴翔様は久しぶりだったので、良かったですね、晴翔様!と僕も同様にはしゃいでしまった。

そんな時、ご両親に話があると声をかけられ、晴翔様は浴衣を着たまま、機嫌よくリビングに入っていった。

神戸の家はすべての部屋に防音設備を伴っているため、どんな話をしていたのかはわからないが、リビングから出てきた晴翔様は凄まじく怒り狂い、目にはいっぱいの涙を溜めて玄関を勢いよく飛び出していった。

まだ10歳の彼に何があったのかを知ったのはそのすぐ後のことだった。

何もしてあげられないな…



晴翔様と、智洋君がここで遊んでいる時だけは快適に過ごさせてあげよう、そう僕は心に誓った。










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