溺愛αの初恋に、痛みを抱えたβは気付かない

桃栗

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チキンなハート

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進学先が決まった。
離れよう、そう決めて探しはじめた地元の高校だったけど、晴からは離れられなかった。

今日は来年から通う高校の説明会と寮の見学会があると言うので、慶明学院高校に連れて来られたんだ。

ここは幼稚舎から小・中・高・大学まである学舎で、晴はここに幼稚舎から通っている、スーパーエリート。

理事長が叔父というのもあるんだろうけど、本人も優秀なので、文句のつけようがない。

晴と僕を乗せた神戸家の車が学校の門をくぐり、車寄せに停車する。

車から降りて学校を見上げた。
門から見た時もその広大さに驚いたけど、眼前に立つ学校の大きさに僕は少し圧倒されていた。

高校からは全国の財閥や企業の御曹司達がこぞって入学してくるんだって。
主にアルファや、オメガの人達。
一部優秀なベータもいるみたいだけど、ごく僅かって晴は言ってた。

その後から何台も高級車に乗った人達が降りて来て、その人達は晴を遠巻きに見合いながら

”あれが神戸の…”
”晴翔様だ…”
”凄い…”

と囁かれていた。
中には

”隣にいる子誰?”
”晴翔様の何?”

わかる、それは僕もそう思う。

が、隣にいるのは僕なのだ、少し萎縮してしまってはいるが、ここは晴の為にも堂々としていなければ、と心を奮い立たせるが、僕のココロはチキンなので、俯いた顔が上げられなくなっていく。

やっぱ僕の来る所じゃないよね…

だって周りはどう見てもアルファや首にネックガードをつけたオメガ、それも見目麗しい人達ばかり!

本当に僕はここでやっていけるのか、不安になりながら晴の後ろを追いかけた。

なんとなく居心地の悪さを感じ、晴の着ている制服のジャケットを掴んだ。

「どうした?」
上から晴の声が聞こえる。
下を向いたままの僕は何も答えられずにいた。

居心地が悪い
なんて言えないし。

周りの人達の僕に対する評価が怖いなんて…

晴の手が僕の頭を撫でてくる。

「気にするな、大丈夫だ」
そう言って僕の手を取り
「先に俺達が入る寮を、見に行くか?もう改装は済ませてある、そこでちょっと休憩してからでも説明会は間に合うしな」
と手を引いて歩き出した。

大きくて温かい手が僕の手を掴んでいるだけで、周りの雰囲気の悪さも少しだけどうでもよくなった。

僕って現金だな。

でもここにいるだけで僕が平凡なベータだってことを否応がなしに実感させられる。
圧倒的なアルファ感もないし、オメガみたいに見た目もよくない。
ネックガードしていないので丸わかりだしね。

ベータばかりの中学での”普通”はここでの普通とは全く違う。

僕ってこんな卑屈な人間だったかな?
晴に対してはそうだけど…

どんどん進む晴に小走りでしか追いつかない。



小さな頭じゃ色々考えるなんて無理だよね、晴の手の温かさに少し感謝した。





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