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居場所
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何も知らない。
名前も 歳も、電話番号も、メールのアドレスさえ。
でもそれでいいと思ってる。
その場所は御大から僕に託された大切な場所だった。
凌太の祖父、安藤公康には大切な人がいた。
知っているのは僕達親子だけだった。
父は公康に頼まれて、その大切な人、橘 葵さんの為にアトリエとなる静かな場所を探すように命じられ、川沿いのこの場所に、2階建ての洋館を建てた。
その当時僕はまだ産まれていなかったので、詳しい事はわからない。
ただ、幼少の頃父に連れられてよくここに来ては葵さんに可愛がってもらったのを覚えている。
彼は公康より2つ年下で、彼の家で働く使用人の子供だったそうだ。
一度離れ離れになり、公康が20歳の時に再会、その時の葵さんは心身ともにボロボロで公康は彼を守る為にこの場所に囲い込んだ。
彼は朝から晩までアトリエに篭っては絵を描いていた。
そんな彼の遺産と言うべき場所は彼の死後、遺言により僕が相続する事になった。
当然公康には断りを入れたが、生前より葵からこの場所は僕に譲り受けて欲しいと言われていたそうで、その断りは拒否された。
それは僕が葵さんと同じオメガだった事にも関わりがあった様に思う。
死後、まだ幼かった僕に代わり、父がここを葵さんのギャラリーとして作り上げ、18歳になった時に僕がカフェを併設させたこの店 gallery and cafe rencontrer(ランコントレ)を開店させた。
葵さんと御大が出会ったように、誰かの出会いの場所になる様にと、名前を付けたのだ。
あの日、新しくギャラリーに展示する画家の選別に来ていた。
この川沿いは葵さんが大好きだった場所なので、ここに訪れると僕はテラスに座り少しの間、葵さんとの楽しかった日々を思いながらお茶を飲んで過ごすことにしていた。
不意に辺り一帯に不思議な空気感ができた。
なぜか胸騒ぎがしてたまらなくなる。
”彼”が店に入ってくると、不思議な空気感も一変し、清涼感のある涼しげな香りが漂ってきた。
何故”彼”とわかったのか、本能なのかも知れない。
彼が僕の、
僕が彼のもの…
一歩一歩こちらに向かって歩いてくる。
顔が見たい、がきっと彼には”僕”がわからない。
匂いもせず、平均的なオメガよりは背も高く
可愛くもない。
運命の番、会えないと思ってた。
隣のテラス席に座った”彼”がジッとこちらを見ている。
僕に何かおかしな所が??
服は仕立てたものだし、髪は昨日美容室に行ってきたばかりだし、どこも変なところはないはず…
あまりにも凝視してくるので、
「何か?」
と声をかけた。
キョトンとした彼。
ジッとこっちを見ている。
「貴方があまりにもキラキラして…」
「キラキラ…ですか」
考える素振りをして目を閉じた。
「あ、す、すみません、なんか貴方に目が吸い寄せられてしまいました」
ぷっと吹き出してしまった。
「そんなこと言われたのは初めてで少し驚いています、でもありがとう、って言うのが正しいのかな?」
金髪で碧眼、日本人じゃない?
言葉は流暢に話してるからハーフなのかな?
歳は?
高校生くらい?
出会えてよかった。
僕にも番がいたんだ。
でも”こんな”僕では彼とは釣り合わない。
そう思って立ち上がった。
「素敵な時間をありがとうございました、では私はこれで。いい1日を」
またいつか彼に会えたら…
「あの。また会えますか?」
会いたいと思ってくれている、それだけで幸せな気持ちになっている僕。
何も知らせない、けど、また会えるなら嬉しい。
「お店の名前、rencontrer、意味わかりますか?」
「いえ…」
「フランス語で”出会う”です。もう貴方とは今出会いました。だから、きっとここでまた会えますよ…では」
僕も期待はしない、いつも通り月に1、2度訪れる。
その時に会えるなら…
葵さんと御大と同じように、また出会えることができるなら、とてもとても幸せだ。
名前も 歳も、電話番号も、メールのアドレスさえ。
でもそれでいいと思ってる。
その場所は御大から僕に託された大切な場所だった。
凌太の祖父、安藤公康には大切な人がいた。
知っているのは僕達親子だけだった。
父は公康に頼まれて、その大切な人、橘 葵さんの為にアトリエとなる静かな場所を探すように命じられ、川沿いのこの場所に、2階建ての洋館を建てた。
その当時僕はまだ産まれていなかったので、詳しい事はわからない。
ただ、幼少の頃父に連れられてよくここに来ては葵さんに可愛がってもらったのを覚えている。
彼は公康より2つ年下で、彼の家で働く使用人の子供だったそうだ。
一度離れ離れになり、公康が20歳の時に再会、その時の葵さんは心身ともにボロボロで公康は彼を守る為にこの場所に囲い込んだ。
彼は朝から晩までアトリエに篭っては絵を描いていた。
そんな彼の遺産と言うべき場所は彼の死後、遺言により僕が相続する事になった。
当然公康には断りを入れたが、生前より葵からこの場所は僕に譲り受けて欲しいと言われていたそうで、その断りは拒否された。
それは僕が葵さんと同じオメガだった事にも関わりがあった様に思う。
死後、まだ幼かった僕に代わり、父がここを葵さんのギャラリーとして作り上げ、18歳になった時に僕がカフェを併設させたこの店 gallery and cafe rencontrer(ランコントレ)を開店させた。
葵さんと御大が出会ったように、誰かの出会いの場所になる様にと、名前を付けたのだ。
あの日、新しくギャラリーに展示する画家の選別に来ていた。
この川沿いは葵さんが大好きだった場所なので、ここに訪れると僕はテラスに座り少しの間、葵さんとの楽しかった日々を思いながらお茶を飲んで過ごすことにしていた。
不意に辺り一帯に不思議な空気感ができた。
なぜか胸騒ぎがしてたまらなくなる。
”彼”が店に入ってくると、不思議な空気感も一変し、清涼感のある涼しげな香りが漂ってきた。
何故”彼”とわかったのか、本能なのかも知れない。
彼が僕の、
僕が彼のもの…
一歩一歩こちらに向かって歩いてくる。
顔が見たい、がきっと彼には”僕”がわからない。
匂いもせず、平均的なオメガよりは背も高く
可愛くもない。
運命の番、会えないと思ってた。
隣のテラス席に座った”彼”がジッとこちらを見ている。
僕に何かおかしな所が??
服は仕立てたものだし、髪は昨日美容室に行ってきたばかりだし、どこも変なところはないはず…
あまりにも凝視してくるので、
「何か?」
と声をかけた。
キョトンとした彼。
ジッとこっちを見ている。
「貴方があまりにもキラキラして…」
「キラキラ…ですか」
考える素振りをして目を閉じた。
「あ、す、すみません、なんか貴方に目が吸い寄せられてしまいました」
ぷっと吹き出してしまった。
「そんなこと言われたのは初めてで少し驚いています、でもありがとう、って言うのが正しいのかな?」
金髪で碧眼、日本人じゃない?
言葉は流暢に話してるからハーフなのかな?
歳は?
高校生くらい?
出会えてよかった。
僕にも番がいたんだ。
でも”こんな”僕では彼とは釣り合わない。
そう思って立ち上がった。
「素敵な時間をありがとうございました、では私はこれで。いい1日を」
またいつか彼に会えたら…
「あの。また会えますか?」
会いたいと思ってくれている、それだけで幸せな気持ちになっている僕。
何も知らせない、けど、また会えるなら嬉しい。
「お店の名前、rencontrer、意味わかりますか?」
「いえ…」
「フランス語で”出会う”です。もう貴方とは今出会いました。だから、きっとここでまた会えますよ…では」
僕も期待はしない、いつも通り月に1、2度訪れる。
その時に会えるなら…
葵さんと御大と同じように、また出会えることができるなら、とてもとても幸せだ。
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