溺愛αの初恋に、痛みを抱えたβは気付かない

桃栗

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前途多難

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部屋に入りソファに座った僕達はバトラーに飲み物を頼み、持って来てもらった。
凄いよね、ここってバトラーがいるんだよ、ホテルじゃないのに。
バカ高い授業料はこの為なのかも?なんて思わせる。
凌ちゃんとノア君が自己紹介をして、ここからノア君への前のめりな質問攻めが始まった。
「ってか、ノア君の…」
「ノアでいいいよ」
「じゃあノアの知ってる田沼さんと俺の世話役の田沼さんが同じ人って事なん?」
「たぶん…」
んーーー。
「金髪?彫りが…背が高く…」
凌ちゃんがブツブツと呟いてるけど、聞き取れない。
僕は首を傾げてつぶやき終わるのを彼のへんてこりんな顔を見ながら待っていた。
すると急にノア君を指差して凌ちゃんが立ち上がった。

「運命の番!!!」
「あー、そうや田沼さんがゆってたわ!ノアがそうなんか??」
「やっぱり…そうだよ、俺が田沼さん、楓さんの相手」

晴は普通、もしかして聞いてたのかな?

僕と凌ちゃはビックリして思わず

「「えええっっっっつ!」」

と2人で立ち上がった。

「運命の人って言ってたけど、田沼さんってオメガだったの??」
僕と同じベータだと思ってた!

「「運命の番に会えるなんてめっちゃ凄い!奇跡やで(だね)!!」」

2人で言葉が重なる。
驚きを隠せない僕と凌ちゃんは、ノア君にあれやこれやと聞き出し、驚いては納得したりして話が盛り上がった。

「楓さんはここに来ることある?」
「そーやなぁ、呼べば来るとは思うけど、俺が寮にいる間はじじいの使いっ走りもするってゆってたから、聞いてみなわからんなー。」

凌ちゃんはスマホを取り指差して

「聞いてみようか?」
「いや、いいよ、後で俺から聞いてみる」
「田沼さんからはプロポーズもしたってゆってたけどほんまなん?」

「えーーーっ、マジで?」

僕は驚いて晴に抱きつき彼を見上げた。
「晴知ってたの?」
「知ってる訳ないだろ」
「プロポーズ…ほどでもないけど、俺が大学卒業するまでに良い男になるから待ってて欲しい、とは言ったかな。」
「自分、めっちゃかっこええやん!俺もそんな男にならなあかんな!」
ソファに座る僕の横に来て
「智、俺もめっちゃいい男になるからな!」
と手を取られ握り締められた。
思わず”うん”と頷いて凌ちゃんの顔が近付いてきたけど、凌ちやんとは反対側に座った晴が手を伸ばし凌ちゃんを遠ざけた。

「智に触るな、寄るな、近付くな」
「もーちょっとくらいええやん、晴翔はケチやな、そんなん智に嫌われんで!」

なんか2人、仲良い?

「なんかお前ら仲良いな、晴がそんなふうに相手してるの初めて見た気がするよ」
ノア君は反対側のソファから笑いながら2人にそう言った。

「「誰が!!」」

重なる声までお揃いで、僕とノア君はお互いを見て笑い合った。
凌ちゃんと晴が顔を合わせた時、本当はもっとギスギスするかな、と思っていたから、少しホッとした。
間にノア君がいるからかもしれないなぁ、ちょっと感謝。

「ノア君、ありがとね」
「なにが?」

2人がまだ歪みあっている方を向くと目を少し見開いてニコッと笑った。

「どういたしまして、何だか楽しい高校生活になりそうだね、君にとっては少し大変な高校生活なりそうだけど」

「やっぱそうだよね…僕が皆んなの側に居るのは」

「まぁ、それもあるけどこの高校で晴の隣に居るのは辛いと思うよ、色んな意味で」

そっかぁ、そうだよね…
前途多難、そんな言葉が頭をよぎる。
さっきまで凌ちゃんと歪みあってた晴が横から手を握ってきた。
「ノア、余計な事言うな」
「そーそー、俺が守ったるからな~智」
反対の手を凌ちゃんが握り締めた。
またお前は、そう言って晴は立ち上がり
「お前ら部屋から出ていけ」
と追い立て2人を部屋から引き摺り出した。

ドアを閉め晴が僕を抱きしめた。
「晴、痛いよ…」
「大丈夫だ、お前は俺が守るから…」

やっぱり僕にこの学校は分不相応だな、色んな意味で。

そう思って晴の背に腕を回した。

「ちゃんと守ってよね、晴がここに連れて来たんだから…」

まだ入学前なのにほんと前途多難だな…


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