57 / 59
3
静寂と雨音
しおりを挟む
あれから手塚君とは距離をとりながら授業が終わり僕は凌ちゃんと下校した。
寮に着いてもまだ晴は帰っておらず、部屋着に着替えて宿題を済ませ、膝を抱えソファの上で晴が帰るのを待っていたが、何となく1人で居るのが寂しくて、凌ちゃんの部屋を訪れた。
ドアを開け出てきた凌ちゃんはまだ着替えてなくて、僕を見て少し驚いていた。
「晴翔様は?帰ってないん?」
そう言われて僕は頷き、凌太ちゃんはため息をついて部屋に通してくれた。
初めて中に入ったけど、僕達の部屋はやっぱり”特別”なんだな、と思った。
凌ちゃんの部屋もそれなりに広かったけど、僕達の部屋は別格、手塚君の言う”特別扱い”がなんなのかがようわくわかった気がした。
「ちょっと待っててな、俺も着替えてくるわ」
凌ちゃんは僕を招き入れた後、隣の寝室に向かった。
ドアから真っ正面の窓に近付く。
ポツポツとベランダのコンクリートに雨粒が落ちて影を作っては消えていく。
段々と雨足が強くなって窓に雨と風が激しく打ちつけてきた。
教室でのあの感じ、雰囲気悪かったよね…僕の本意じゃない状況で周りに何かを言われるだろう事、本当はわかってた。
だけど、それは想像以上に辛いことだったんだと今更ながら思ったり。
曇った窓ガラスに額をつけて考えた。
慶明の殆どが幼稚舎からエスカレーター式で上がった人達ばかりで、僕みたいな一般人、普通の家庭の子はどこにもいない。
いわゆる裕福な家庭の子供達ばかりで、そこに産まれてくるのはアルファやオメガ。
ベータの僕は彼らとは違う。
そこに彼らにとって羨望を向ける晴が僕に構っているこの現状は妬ましく感じるんだと思う。
「智、大丈夫か?」
振り返ると凌ちゃんがまた困った顔をして近付いてきた。
僕の頭に手を置いて覗き込む。
「最近の智は不安な顔ばっかしてるやん」
不安…そう、このまま身の丈に合わないこの学校に通うのは不安で仕方ない。
晴はこうなる事たぶん分かってたんだろうな、だから”俺の我儘を許してくれ”なんて言ってたんだと思う。
顔を上げ凌ちゃんを見る。
最近、晴より凌ちゃんの方が一緒にいてくれる。
出会った時から凌ちゃんは僕に優しく親身になってくれるから頼りになるんだ。
今は晴よりも…
「ぎゅってしたろか?」
優しく微笑んで凌ちゃんは両手を広げた。
「おいで」
身体が自然に凌ちゃんに引き寄せられる、ダメだ、僕相当弱ってる…
そのまま彼の胸に飛び込んで抱きしめると、凌ちゃんは優しく僕の髪を撫でて抱きしめ返してくれた。
「こんな時ばっかごめんね、僕凌ちゃん利用してるよね、最悪…」
「なに言うてんの?むしろ利用されたいからええねん、って。マーキングもしときたいけど、それは我慢しとくわ。誰かさんめっちゃ怖いしな!」
静かな部屋に雨音だけが響いていた。
凌ちゃんはいつも僕の欲しい”優しい”をくれる。
「凌ちゃんは学校楽しい?」
「教室に智がいてないのは寂しいかな、毎日会えるのは嬉しいけど」
言葉に詰まって声が出ない、なんで欲しい”言葉”までくれるんだろう。
「なんで凌ちゃんはそんなに”優しい”の?僕は何も返せないのに…」
少しの沈黙があった後、顔を上げた凌ちゃんは僕の顔にかかった髪を耳に掛け囁くように呟いた。
「側にいたいだけやから」
ダメだ、凌太ちゃんの優しさが晴に相手にされない胸の寂しさを埋めてくれてる。
嫌だな、これじゃあ本当に凌ちゃんを利用しているみたいだな…自分の浅ましさが嫌になる。
「ありがとう、凌ちゃん。大好き…」
「俺はもっと好きやで!」
今日だけは甘えたい。
ごめんね、我儘で…
心の中で呟いて頭を凌ちゃんに胸に押し付けた。
「あー、俺やったらこんなに悩ませへんのになー、悔しいわ」
そう言うと、もう一度僕をギュッと抱きしめる。
凌ちゃんの優しさと温もりが僕を包み込むと、静寂と雨音だけが部屋の中に響き渡った。
寮に着いてもまだ晴は帰っておらず、部屋着に着替えて宿題を済ませ、膝を抱えソファの上で晴が帰るのを待っていたが、何となく1人で居るのが寂しくて、凌ちゃんの部屋を訪れた。
ドアを開け出てきた凌ちゃんはまだ着替えてなくて、僕を見て少し驚いていた。
「晴翔様は?帰ってないん?」
そう言われて僕は頷き、凌太ちゃんはため息をついて部屋に通してくれた。
初めて中に入ったけど、僕達の部屋はやっぱり”特別”なんだな、と思った。
凌ちゃんの部屋もそれなりに広かったけど、僕達の部屋は別格、手塚君の言う”特別扱い”がなんなのかがようわくわかった気がした。
「ちょっと待っててな、俺も着替えてくるわ」
凌ちゃんは僕を招き入れた後、隣の寝室に向かった。
ドアから真っ正面の窓に近付く。
ポツポツとベランダのコンクリートに雨粒が落ちて影を作っては消えていく。
段々と雨足が強くなって窓に雨と風が激しく打ちつけてきた。
教室でのあの感じ、雰囲気悪かったよね…僕の本意じゃない状況で周りに何かを言われるだろう事、本当はわかってた。
だけど、それは想像以上に辛いことだったんだと今更ながら思ったり。
曇った窓ガラスに額をつけて考えた。
慶明の殆どが幼稚舎からエスカレーター式で上がった人達ばかりで、僕みたいな一般人、普通の家庭の子はどこにもいない。
いわゆる裕福な家庭の子供達ばかりで、そこに産まれてくるのはアルファやオメガ。
ベータの僕は彼らとは違う。
そこに彼らにとって羨望を向ける晴が僕に構っているこの現状は妬ましく感じるんだと思う。
「智、大丈夫か?」
振り返ると凌ちゃんがまた困った顔をして近付いてきた。
僕の頭に手を置いて覗き込む。
「最近の智は不安な顔ばっかしてるやん」
不安…そう、このまま身の丈に合わないこの学校に通うのは不安で仕方ない。
晴はこうなる事たぶん分かってたんだろうな、だから”俺の我儘を許してくれ”なんて言ってたんだと思う。
顔を上げ凌ちゃんを見る。
最近、晴より凌ちゃんの方が一緒にいてくれる。
出会った時から凌ちゃんは僕に優しく親身になってくれるから頼りになるんだ。
今は晴よりも…
「ぎゅってしたろか?」
優しく微笑んで凌ちゃんは両手を広げた。
「おいで」
身体が自然に凌ちゃんに引き寄せられる、ダメだ、僕相当弱ってる…
そのまま彼の胸に飛び込んで抱きしめると、凌ちゃんは優しく僕の髪を撫でて抱きしめ返してくれた。
「こんな時ばっかごめんね、僕凌ちゃん利用してるよね、最悪…」
「なに言うてんの?むしろ利用されたいからええねん、って。マーキングもしときたいけど、それは我慢しとくわ。誰かさんめっちゃ怖いしな!」
静かな部屋に雨音だけが響いていた。
凌ちゃんはいつも僕の欲しい”優しい”をくれる。
「凌ちゃんは学校楽しい?」
「教室に智がいてないのは寂しいかな、毎日会えるのは嬉しいけど」
言葉に詰まって声が出ない、なんで欲しい”言葉”までくれるんだろう。
「なんで凌ちゃんはそんなに”優しい”の?僕は何も返せないのに…」
少しの沈黙があった後、顔を上げた凌ちゃんは僕の顔にかかった髪を耳に掛け囁くように呟いた。
「側にいたいだけやから」
ダメだ、凌太ちゃんの優しさが晴に相手にされない胸の寂しさを埋めてくれてる。
嫌だな、これじゃあ本当に凌ちゃんを利用しているみたいだな…自分の浅ましさが嫌になる。
「ありがとう、凌ちゃん。大好き…」
「俺はもっと好きやで!」
今日だけは甘えたい。
ごめんね、我儘で…
心の中で呟いて頭を凌ちゃんに胸に押し付けた。
「あー、俺やったらこんなに悩ませへんのになー、悔しいわ」
そう言うと、もう一度僕をギュッと抱きしめる。
凌ちゃんの優しさと温もりが僕を包み込むと、静寂と雨音だけが部屋の中に響き渡った。
0
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
届かない「ただいま」
AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。
「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。
これは「優しさが奪った日常」の物語。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる