ある夏の思い出

shoichi

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第1章

深海

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夏休みになる頃、僕は家に引きこもり、部屋からも出なくなっていた。

汚れていく部屋。

大人とは言えないが、少し伸びた無精髭。

それより、何より、無気力な心に嫌気が差した。

衝動的だが、台所へ向かい、引き出しに閉まってある、果物ナイフを手に取った午前二時。

手首に押し当てるが、ナイフの線が付いただけ。

手前に引けば、楽になるのだろうが、震えるくらい怖かった。

臆病な自分が情けなくて、汗ばんだTシャツ、短パンのまま、サンダルを履き、家を後にした。




近くの川沿いの道を、持ってきたナイフと共に歩いた。

ちゃんと、鞘が付いていたため、ポケットにそいつを閉いながら。



土手を下ると、フェンスの向こう側には、緩やかな川が流れている。



何もない。

暗いとこで、誰にも見つからずに、静かに死のう。



そして、僕はフェンスをよじ登った。
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