ある夏の思い出

shoichi

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第3章

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生徒指導室から出てきた僕を、桐崎くんたちが待っていた。

「諸星!!ちょっと…。あれ。」

三階の校舎から見える校門の前で、煙草を吸いながら携帯をいじっている星矢がいた。

隣を見て見ると、目がキラキラさせている桐崎くんがいるし。

「橘さんだよな?なぁ、頼む!!紹介してくれよ!!」

さっきの言葉が胸に引っかかったまま。

星矢は、犯罪者だったんだ。と、心で繰り返された。

「い、いいけど、ちょっとだけ聞いてもいい?」

何だよ。と、女の子か!!と言いたいくらい、興奮しながら、慌てながらの桐崎くん。

「星矢って、そんなに凄いの?」

「凄い…って、なぁ?」

周りの皆んなに、確認するかのように話す桐崎くん。

僕も同じように皆んなの顔を覗くが、頷く姿しか目に入ってこない。

「まぁ、噂じゃ、人…殺した。とか?」
「当時、暴走族の切り込み隊長だったとか?」

「とりあえず、何も分からないから、いっぱい話して見たいんだよ!!」

昼前と同じように、手を合わせながら一礼する三年生たち。

廊下を通り過ぎる、同級生の女の子。

その子と目が合ったが、絵に描いたように、ひっ!!と声を出し、走り去っていった。

「頼む!!」

神様になった訳ではないけれど、

「分かったから、もう、止めてよ。」

純粋そうなお願いを、聞いてあげようと思った。
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