ラブレター

shoichi

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最後の恋

僕からのラブレター

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それは、緑の文字で書いたんだ。

何を書き出し、何を伝えようか。

初めて文字にするけれど、不思議と、恥ずかしい。って気持ちが、無いんだ。

ペンを握って、初めて分かった。

昔、湿った手紙をもらったけれど、あの時のあいの気持ちが。

今、僕も、文字が見えなくなるくらいだから。

書き出すと、涙が出るんだ。

読み直すと、まだ、そこには二人がいるんだ。

そんな言葉から、書き始めた。

震える手で、書いては消して、書いては消して。を繰り返す。

素直な気持ちと、格好つけた言葉と。

それは、長い長い月日をかけたように、思い出の数々を綴った。

頭の中では、あいが笑っているんだ。

好き。とか、そんな言葉より、沢山のありがとう。を書いていた。

あの時は、ごめんね。とか、あの時は、あいはこんな気持ちだったのかな?と、思い出しては泣いていた。

もう、枯れたはずなのに。と思っては、ティッシュを取り、鼻をかむ。

フー。と煙草は吸っていないが、溜め息混じりに吐き出す息。

最後まで、書けないくらいに、何ページになったか分からないくらいに。

僕は、あいでいっぱいだった。と気付かされてしまう。

それでも、手紙くらい、素直に書こう。と思って、中途半端になりたくなくて、溢れる涙を押さえながら、ラブレターを書く。

こうして見ると、文字にすると簡単なのに、凄く意味のある言葉達だな。と思った。

いつも、送っていた、不器用な恋のメッセージを、器用に伝えるために。

僕は、濡れたティッシュを、少し遠くのゴミ箱に投げ捨てた。

バスケットボール部ではない僕は、勿論、シュートを外した。

結局、近くまで行き、低いダンクシュートを決める。

指が疲れたせいか、一度離した手を、左手でマッサージした。

こんなに、自分以外の誰かのことを考えたことなんてなかった。

そんな思いに、遅く…心と煙草に火を点ける。

いつまでも、終わることないラブレターを、僕は兎と同じ目をしながら、眠りに就くまで書いていた。 
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