168 / 1,121
雨季前 4
しおりを挟む
暫くすると、何かやりとりしながらルカとウーヴェが戻って来た。
「川に下りられる様に出来たら、食材の運搬に使えんだろ? そっちのが良いって」
「雨季の度に桟橋が流されたんじゃ、高くつくだろ」
「桟橋くらいなら、さした出費じゃねぇよ」
すると今度は、ウーヴェがマルに呼ばれ、奥深い数値が飛び交う謎の会話を始める。
俺はルカを呼び、お疲れ様と労ったのだけれど、ルカは俺の労いは適当な生返事で流し、俺を見た。
「……出歩けるようになって、良かったな」
そんな風に言われて、心配されてたんだなぁと思う。だから「気にかけてくれてたのか。ありがとう」と返事をすると、ルカは少し赤い顔をして、そっぽを向いた。
「人足連中もよぉ、あんたの顔見たがってんだよなぁ。
潤いがねぇってぼやいてるしよぉ、明日で、一旦終了ってなるわけだろ? 来んの?」
解散前に、顔を出せるかと聞かれた。
最後くらいは挨拶したいと俺も思ってる。後半に参加してくれた人足達には、一度も顔を合わせていないしな。
「行きたい。けど、ハインが許してくれるかどうか……」
「あー……あいつ今、血の穢れが来てるお袋かって感じだもんな」
その例え、酷くないか……。
建物の入り口付近で外を警戒しているハインを見る。
ハインが獣人だと知った夜から幾日か過ぎて、死のうとするような、思い詰めた雰囲気は無くなった。
とはいえ、やはり獣人を受け入れる心境にはなれていない様子で、兇手の一行には嫌悪感を顕にしている。彼らは意に介さないといった雰囲気なのだけど、それがよりハインを苛つかせているように思えた。
「俺が、色々ややこしいから、ハインが神経質になってしまうんだよ。
自分で自分の身が守れたら、もう少し違うのだろうけど……」
「そうかぁ? あいつ、レイ様が筋骨隆々の強面で、いつも全身鎧着て戦斧振り回してたって同じだったんじゃねぇ?」
後ろでサヤが噴き出した。
「なぁ、サヤ坊もそう思うよな?」
「……そ、そうですね……ハインさんは、きっと、そんな気が……。
レイシール様がマッチョでフルプレート……怖いです」
そう言いながらずっと笑ってる。余程面白いものが想像できてしまったらしい。最近、ここの生活にも慣れ、日常ではあまり、サヤの国固有の言葉は使わなくなったと思っていたのに、それすら溢れてきている……うぅ……自分の身体を見下ろすと、なんとも切ない気持ちになってしまった……。
筋肉、無いとは言わないけど……腹筋だってハインみたいにギッチリ割れてないし……腕の太さだって……力なんか、明らかに俺より細いサヤに及ばないわけで……俺、もしかして男として、駄目なんじゃないだろうか……。
笑うサヤに男としての自信を削がれている俺をよそに、そんなサヤの様子を見ていたルカが、顎をさすりながらしみじみと言った。
「俺ぁ、お前が筋骨隆々でもねぇのに、あんな馬鹿力なのが信じらんねぇわ」
途端、サヤの笑いがピタリと止まる。
「……ふふ。筋肉にも質があるので」
若干目を泳がせながら、そんな風に言い訳をした。
異界からこちらに来たらこうなったとは口に出来ないしな。
「え? 質? 分かる様に説明しろって」
「えっと……重たいものをゆっくり動かす様な負荷をかけた筋肉は、瓶に詰めた砂です。
重たいものを素早く動かす様な負荷をかけた筋肉は、瓶に詰めた小石です。
密度が違うので、同じ外見でも、筋力に差が出ます」
「…………分かんねぇわ。お前、賢いんだな」
上手い例えだと思うんだけどなぁ。
サヤの話は相変わらず難しいが、内容が凄い。
そうか、細身でも力の強い奴って、そういった鍛え方をしたのか……。よし。
「えっと、重たいものを、ゆっくりと動かす様な鍛え方をすると、筋肉が引き締まるんです。
逆に、重たいものを、さっと動かす様な、瞬間的に筋肉を使う鍛え方をすると、目の荒い筋肉が出来るんですよ。
見た目だけ筋骨隆々にしたい人は後者の鍛え方をお勧めします」
「見た目だけって、なんの役に立つんだ?」
「……強そうに見える様になります?」
「俺ぁ、お前みたいなんが一番怖ぇな。見た目は嫁に出来そうなのに、いかつい親父より腕っ節が強いって……尻に敷かれる未来しか見えねぇ」
「……あの、私、嫁にはなりませんよ……」
「分かってるよ。男を嫁にはしねぇって」
冗談でも嫁とか言わないでほしい……。
それにサヤは、勇者ばりの凄腕でもかなり可愛いと思うのに。
……まあいいや、サヤの可愛さを知られてしまうと、ルカが求婚しそうだし。
俺が内心鬱々としながら二人の会話を聞いていると、ウーヴェが死にそうな顔でやって来て、サヤを揶揄うなとルカを嗜めた。
苦労性だな……。嘘が苦手なのに知ってしまうと大変だ。
「おーい、上に凄いのが住み着いてた」
そんな風にやり取りをしていたら、ダニルが二階から、何かを持って降りてきた。
土蜘蛛だ。それは立派なやつだった。通常五糎程度のものが多いが、そいつはダニルの手に収まっていなかったのだ。
「馬鹿野郎かてめぇは!お貴族様の所に持ってくんな!」
「あ、大丈夫だ。俺は気にならない。凄いな、記録的なデカさだ。一体何を食ってこんなに大きくなったんだ」
「何か住み着く要因があるのかもな。こいつってほら、他のやつ食うし。
ほら、サヤ坊、お前も見てみろよ、すげぇでけぇぞ」
「え? 何ですか?」
何年生きてる蜘蛛だろうか。
ちょっと見ない大きさに、俺とサヤも興味津々覗き込んだのだが……。
「ひ、ぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
「ぐふぁ⁉︎」
怪鳥の雄叫びかという様な、耳に刺さる金切り声。
そして胸部を尋常じゃないほど圧迫された。な、なに⁉︎
「さ、サヤ……苦しい……」
「やああぁぁ、あかんっ、近付かんといて、それ早う外もってって!」
「ち、千切れる……肋骨折れる!」
サヤが俺の胸部に思い切り抱きついて締め上げてきたのだ! いいいいたい、痛い痛い!
ギチギチと骨の軋む音するんですけど⁉︎
「だははははは! サヤ坊、お前蜘蛛なんざ怖ぇのかよ⁉︎ こんなのそこいらのゴロツキよりよっぽど可愛いだろ、何びびってんだ?」
サヤの様子にルカが大笑いしだし、ダニルの手から蜘蛛をひょいと掴み、それをサヤの方に向けたからたまらない。サヤがさらに俺を締め上げた。
「やああぁぁ! キモい! 嫌ぁ‼︎ こっち、こんといてっほんまあかんっ」
「かわいいもんだろほれほれ、見ろよつぶらな目ぇしてんだろ?」
「ル、ルカさんの鬼ぃ! 嫌やって、嫌やって言うてるのに……酷いイイィィ」
俺を挟んでやり合いに振り回されるわ圧迫されるわで一瞬意識が飛んだ。
「遊ぶな馬鹿野郎」
見かねたのか、ガウリィがルカの手から蜘蛛を奪い取って窓の外に放り投げる。
ついでのように俺からサヤを剥ぎ取って、エレノラに投げた。
「サヤ、てめぇも蜘蛛ぐらいでヒィヒィ言うな!
エレノラ、そいつ持って上に上がっとけ。主人殺す気か、反省しろ!」
サヤを投げつけられたエレノラはというと、危なげなくサヤを受け取り、横抱きにしてしまった。その首にサヤがかじりつくように縋る。
「あらあら、サヤ、あんたまだ虫とか駄目だったんだねぇ。大きくなったと思ったのに可愛い子」
「悪ぃサヤ、忘れてた。もうしない」
エレノラとダニルが、初対面とは思えない見事な演技でサヤをあやし、二階に連れて行く。
多分、化粧が崩れるか何か、あったんだな。あんな風に退室するってことは。
そしてそんなサヤをよそに、ガウリィがルカの説教を始めていた。
「てめぇ、何やってんだ。お貴族様に虫は御法度だって知らねぇのか⁉︎ よく生きてられたな今まで」
「げ、サヤ坊やっぱそっち系か。だよなぁ……なんかすげぇ強ぇし、難しいこと言いやがるし……いいとこの坊ちゃんだとは思ってたけどよ……。にしても……女みたいな悲鳴あげたなあいつ。腕っ節強かろうがまだガキなんだなぁ……」
ちょっと揶揄い過ぎた……。と、頭を掻くルカ。
その頬が何やらほんのり赤くて、俺は何か、嫌な予感がした……。
「あいつほんとに男だよな? なんかすげぇこう……ムラッとくるもんがあったと思わねぇ?」
嫌な予感、的中……。
と、思った矢先、ルカの首元に抜き身の剣が突き付けられる。剣の先を目で追うと……案の定、ハインだった。剣呑にギラつく瞳がマジの怒りだと言っている。
「サヤを侮辱するならば受けて立ちます」
「は、ハイン! ちょっ、待って‼︎」
「してねぇ! 侮辱してねぇから、悪かったって‼︎」
「次に同じことをしたら問答無用で首を飛ばします」
「申し訳ありません! キツく言って聞かせますから、ご容赦下さい!」
あっという間に修羅場になり、平静を取り戻すまでに、かなり精神を削られた。
サヤが落ち着いて、階下に降りてきたら即、謝罪会となり、ルカも土下座する勢いで謝ったのだが……。
「こ、来ないで下さい……」
警戒を露わにしたサヤは、エレノラの陰に隠れ、ルカの前に顔を出さなかった。
この反応……一見、サヤが怒ってルカを寄せ付けなくしている様に見えるけれど、サヤの表情は硬い……。
これは……ルカが、怖いんだな……。
ルカの様子を見るが、まだサヤを女だと認識している風ではない……。つい意識してしまう……といった様子に見受けられた。
えらいことになった……このまま流しているうちに、サヤを男だと認識してくれる様になれば良いのだけど……。
「あぁ、いけないんだぁ、ルカ。サヤくん虐めるから嫌われちゃいましたよぅ」
「ええぇぇ、悪かったって言ってんじゃん! 機嫌直せってサヤ坊、なぁ!」
「嫌です! 来ないで下さい‼︎」
俺の懸念はよそに、マルに揶揄われてわたわたしているその光景は、一見平和そのものだった。
「川に下りられる様に出来たら、食材の運搬に使えんだろ? そっちのが良いって」
「雨季の度に桟橋が流されたんじゃ、高くつくだろ」
「桟橋くらいなら、さした出費じゃねぇよ」
すると今度は、ウーヴェがマルに呼ばれ、奥深い数値が飛び交う謎の会話を始める。
俺はルカを呼び、お疲れ様と労ったのだけれど、ルカは俺の労いは適当な生返事で流し、俺を見た。
「……出歩けるようになって、良かったな」
そんな風に言われて、心配されてたんだなぁと思う。だから「気にかけてくれてたのか。ありがとう」と返事をすると、ルカは少し赤い顔をして、そっぽを向いた。
「人足連中もよぉ、あんたの顔見たがってんだよなぁ。
潤いがねぇってぼやいてるしよぉ、明日で、一旦終了ってなるわけだろ? 来んの?」
解散前に、顔を出せるかと聞かれた。
最後くらいは挨拶したいと俺も思ってる。後半に参加してくれた人足達には、一度も顔を合わせていないしな。
「行きたい。けど、ハインが許してくれるかどうか……」
「あー……あいつ今、血の穢れが来てるお袋かって感じだもんな」
その例え、酷くないか……。
建物の入り口付近で外を警戒しているハインを見る。
ハインが獣人だと知った夜から幾日か過ぎて、死のうとするような、思い詰めた雰囲気は無くなった。
とはいえ、やはり獣人を受け入れる心境にはなれていない様子で、兇手の一行には嫌悪感を顕にしている。彼らは意に介さないといった雰囲気なのだけど、それがよりハインを苛つかせているように思えた。
「俺が、色々ややこしいから、ハインが神経質になってしまうんだよ。
自分で自分の身が守れたら、もう少し違うのだろうけど……」
「そうかぁ? あいつ、レイ様が筋骨隆々の強面で、いつも全身鎧着て戦斧振り回してたって同じだったんじゃねぇ?」
後ろでサヤが噴き出した。
「なぁ、サヤ坊もそう思うよな?」
「……そ、そうですね……ハインさんは、きっと、そんな気が……。
レイシール様がマッチョでフルプレート……怖いです」
そう言いながらずっと笑ってる。余程面白いものが想像できてしまったらしい。最近、ここの生活にも慣れ、日常ではあまり、サヤの国固有の言葉は使わなくなったと思っていたのに、それすら溢れてきている……うぅ……自分の身体を見下ろすと、なんとも切ない気持ちになってしまった……。
筋肉、無いとは言わないけど……腹筋だってハインみたいにギッチリ割れてないし……腕の太さだって……力なんか、明らかに俺より細いサヤに及ばないわけで……俺、もしかして男として、駄目なんじゃないだろうか……。
笑うサヤに男としての自信を削がれている俺をよそに、そんなサヤの様子を見ていたルカが、顎をさすりながらしみじみと言った。
「俺ぁ、お前が筋骨隆々でもねぇのに、あんな馬鹿力なのが信じらんねぇわ」
途端、サヤの笑いがピタリと止まる。
「……ふふ。筋肉にも質があるので」
若干目を泳がせながら、そんな風に言い訳をした。
異界からこちらに来たらこうなったとは口に出来ないしな。
「え? 質? 分かる様に説明しろって」
「えっと……重たいものをゆっくり動かす様な負荷をかけた筋肉は、瓶に詰めた砂です。
重たいものを素早く動かす様な負荷をかけた筋肉は、瓶に詰めた小石です。
密度が違うので、同じ外見でも、筋力に差が出ます」
「…………分かんねぇわ。お前、賢いんだな」
上手い例えだと思うんだけどなぁ。
サヤの話は相変わらず難しいが、内容が凄い。
そうか、細身でも力の強い奴って、そういった鍛え方をしたのか……。よし。
「えっと、重たいものを、ゆっくりと動かす様な鍛え方をすると、筋肉が引き締まるんです。
逆に、重たいものを、さっと動かす様な、瞬間的に筋肉を使う鍛え方をすると、目の荒い筋肉が出来るんですよ。
見た目だけ筋骨隆々にしたい人は後者の鍛え方をお勧めします」
「見た目だけって、なんの役に立つんだ?」
「……強そうに見える様になります?」
「俺ぁ、お前みたいなんが一番怖ぇな。見た目は嫁に出来そうなのに、いかつい親父より腕っ節が強いって……尻に敷かれる未来しか見えねぇ」
「……あの、私、嫁にはなりませんよ……」
「分かってるよ。男を嫁にはしねぇって」
冗談でも嫁とか言わないでほしい……。
それにサヤは、勇者ばりの凄腕でもかなり可愛いと思うのに。
……まあいいや、サヤの可愛さを知られてしまうと、ルカが求婚しそうだし。
俺が内心鬱々としながら二人の会話を聞いていると、ウーヴェが死にそうな顔でやって来て、サヤを揶揄うなとルカを嗜めた。
苦労性だな……。嘘が苦手なのに知ってしまうと大変だ。
「おーい、上に凄いのが住み着いてた」
そんな風にやり取りをしていたら、ダニルが二階から、何かを持って降りてきた。
土蜘蛛だ。それは立派なやつだった。通常五糎程度のものが多いが、そいつはダニルの手に収まっていなかったのだ。
「馬鹿野郎かてめぇは!お貴族様の所に持ってくんな!」
「あ、大丈夫だ。俺は気にならない。凄いな、記録的なデカさだ。一体何を食ってこんなに大きくなったんだ」
「何か住み着く要因があるのかもな。こいつってほら、他のやつ食うし。
ほら、サヤ坊、お前も見てみろよ、すげぇでけぇぞ」
「え? 何ですか?」
何年生きてる蜘蛛だろうか。
ちょっと見ない大きさに、俺とサヤも興味津々覗き込んだのだが……。
「ひ、ぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
「ぐふぁ⁉︎」
怪鳥の雄叫びかという様な、耳に刺さる金切り声。
そして胸部を尋常じゃないほど圧迫された。な、なに⁉︎
「さ、サヤ……苦しい……」
「やああぁぁ、あかんっ、近付かんといて、それ早う外もってって!」
「ち、千切れる……肋骨折れる!」
サヤが俺の胸部に思い切り抱きついて締め上げてきたのだ! いいいいたい、痛い痛い!
ギチギチと骨の軋む音するんですけど⁉︎
「だははははは! サヤ坊、お前蜘蛛なんざ怖ぇのかよ⁉︎ こんなのそこいらのゴロツキよりよっぽど可愛いだろ、何びびってんだ?」
サヤの様子にルカが大笑いしだし、ダニルの手から蜘蛛をひょいと掴み、それをサヤの方に向けたからたまらない。サヤがさらに俺を締め上げた。
「やああぁぁ! キモい! 嫌ぁ‼︎ こっち、こんといてっほんまあかんっ」
「かわいいもんだろほれほれ、見ろよつぶらな目ぇしてんだろ?」
「ル、ルカさんの鬼ぃ! 嫌やって、嫌やって言うてるのに……酷いイイィィ」
俺を挟んでやり合いに振り回されるわ圧迫されるわで一瞬意識が飛んだ。
「遊ぶな馬鹿野郎」
見かねたのか、ガウリィがルカの手から蜘蛛を奪い取って窓の外に放り投げる。
ついでのように俺からサヤを剥ぎ取って、エレノラに投げた。
「サヤ、てめぇも蜘蛛ぐらいでヒィヒィ言うな!
エレノラ、そいつ持って上に上がっとけ。主人殺す気か、反省しろ!」
サヤを投げつけられたエレノラはというと、危なげなくサヤを受け取り、横抱きにしてしまった。その首にサヤがかじりつくように縋る。
「あらあら、サヤ、あんたまだ虫とか駄目だったんだねぇ。大きくなったと思ったのに可愛い子」
「悪ぃサヤ、忘れてた。もうしない」
エレノラとダニルが、初対面とは思えない見事な演技でサヤをあやし、二階に連れて行く。
多分、化粧が崩れるか何か、あったんだな。あんな風に退室するってことは。
そしてそんなサヤをよそに、ガウリィがルカの説教を始めていた。
「てめぇ、何やってんだ。お貴族様に虫は御法度だって知らねぇのか⁉︎ よく生きてられたな今まで」
「げ、サヤ坊やっぱそっち系か。だよなぁ……なんかすげぇ強ぇし、難しいこと言いやがるし……いいとこの坊ちゃんだとは思ってたけどよ……。にしても……女みたいな悲鳴あげたなあいつ。腕っ節強かろうがまだガキなんだなぁ……」
ちょっと揶揄い過ぎた……。と、頭を掻くルカ。
その頬が何やらほんのり赤くて、俺は何か、嫌な予感がした……。
「あいつほんとに男だよな? なんかすげぇこう……ムラッとくるもんがあったと思わねぇ?」
嫌な予感、的中……。
と、思った矢先、ルカの首元に抜き身の剣が突き付けられる。剣の先を目で追うと……案の定、ハインだった。剣呑にギラつく瞳がマジの怒りだと言っている。
「サヤを侮辱するならば受けて立ちます」
「は、ハイン! ちょっ、待って‼︎」
「してねぇ! 侮辱してねぇから、悪かったって‼︎」
「次に同じことをしたら問答無用で首を飛ばします」
「申し訳ありません! キツく言って聞かせますから、ご容赦下さい!」
あっという間に修羅場になり、平静を取り戻すまでに、かなり精神を削られた。
サヤが落ち着いて、階下に降りてきたら即、謝罪会となり、ルカも土下座する勢いで謝ったのだが……。
「こ、来ないで下さい……」
警戒を露わにしたサヤは、エレノラの陰に隠れ、ルカの前に顔を出さなかった。
この反応……一見、サヤが怒ってルカを寄せ付けなくしている様に見えるけれど、サヤの表情は硬い……。
これは……ルカが、怖いんだな……。
ルカの様子を見るが、まだサヤを女だと認識している風ではない……。つい意識してしまう……といった様子に見受けられた。
えらいことになった……このまま流しているうちに、サヤを男だと認識してくれる様になれば良いのだけど……。
「あぁ、いけないんだぁ、ルカ。サヤくん虐めるから嫌われちゃいましたよぅ」
「ええぇぇ、悪かったって言ってんじゃん! 機嫌直せってサヤ坊、なぁ!」
「嫌です! 来ないで下さい‼︎」
俺の懸念はよそに、マルに揶揄われてわたわたしているその光景は、一見平和そのものだった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる