656 / 1,121
閑話 息子 3
しおりを挟む
父上の元を辞して、俺は兵舎へと足を向けることにした。
ハインは相変わらず付いてきていたけれど、俺は構わず足を進めた。とはいえ……気持ちとしては、足踏みしていた。
正直、気が重い。
アーシュは俺の顔を見るのも嫌だったんだろうなぁって……、そう思ったら。
戴冠式まで残ると決めていたアーシュ。それは、貴族出身者がいないセイバーンの事情も分かっていて、任命式や戴冠式では、自分が必要だろうからと考え、残ってくれていた……ってことだ。
それは、母に対する忠義心ゆえの行動だったのだろう。
もう、三年も前に、亡くなった人なのに、忠義を尽くす……。そういう男であるアーシュが、嫌な奴なわけがない。
本当ならば、職務に私情を挟むことだって嫌だろうに……、それでも俺に対する態度が硬くなっているって、理性では制御できないくらいの苦痛だったって、ことだよな……。
兵舎に赴くと、管理者室に使用人の姿。
今までは騎士らが適当に過ごしていたのだけど、ここにもこの春から、管理者が置かれた。
騎士の勤務状態も確認できるようになったので、アーシュは本日、どこの警備に配属されているのか聞くと、今日は非番とのこと。
「ですが、外出届が出ておりますので、お出かけされるご予定のようです」
用事があるのかな? じゃあ、あまり時間は取れないかもしれないな……。
まだ部屋にいるとのことで、場所を聞き、足を進めた。
同じ間取りの部屋が続く廊下を進み、数人の非番騎士とすれ違う。
途中、荷を運び出している部屋があるから何かと思ったら、故郷に配属希望を出した騎士の引越し準備だった。そうか、もう移動が始まっているよな……。
お世話になりましたと言う騎士に、今までありがとう。と、言葉を掛ける。配属先に移っても、そのうちまた、土嚢関係の訓練でこちらに来ることになるだろうから、その時は声を掛けてくれと伝えた。
「世話になった。どうか配属先でも健やかに過ごしてくれ。また会える時を楽しみにしている」
少し寂しい……。
ずっと、関わってこなかったこのセイバーンの地で、初めて深く関わった者たち。少なくない時間を共にした。苦難を乗り越えた。お互いに命を賭けることもしたのだ。
「本当に、ありがとう。君はセイバーンを救ってくれた勇者だ」
彼らがいなかったら、父上も俺も、きっとここにいなかったと思う。
人の縁が、彼らの折れなかった心が、セイバーンを救ってくれたのだ。
その先に更に進み、見つけたアーシュの部屋は、他となんら変わらない一室だった。
俺より上位である子爵家の方なのに、一般庶民と一緒に宿舎で生活し、そのことに対して何ひとつ文句を聞いていない。
特権階級であることを、特別にしない。それができている貴族出身者なんて、なかなかに珍しいのだと、俺は知ってる。
「アーシュ、いる?」
扉を叩いて声を掛けると、少しの沈黙。そして、扉が開き、とても不機嫌そうなアーシュが出てきた。
「ジークらから報告があった件なんだけど」
「…………言うんだろうと思ってました」
ものすごく嫌そうに、ぼそりとアーシュ。
その態度にカチンときたのか、ハインの纏う雰囲気が若干剣呑になるが、まだ怒るような段階じゃないってば。膝を叩いて落ち着けと注意した。俺とアーシュより、ハインとの関係の方が問題だと、俺は思ってるんだけどなぁ。
俺たちのそんな様子を見ていたろうアーシュは、観念した様子で中へどうぞと、俺たちを促す。
「散らかっておりますが、それで宜しければ」
「良いのか? 出かける予定だったんだろう?」
「……ならお帰りいただけるのですか?」
……それは承知できないな。
「お邪魔する」
とりあえず、お言葉に甘えさせてもらうことにした。
前、ユストの部屋にも入ったことがあったけれど、間取りはそちらとほぼ同一である様子。
ただ、アーシュはユストほど細々とした道具類を所持していないみたいで、随分と物が少なく、部屋を広く感じた。
部屋の端には木箱がいくつか積まれており、片付けの最中なのだと窺わせる。
「ご覧の通り椅子はありませんし、これから出かける予定もありますので、このままで失礼します。ご用件は?」
「どうして、俺に黙ってた?」
「報告する義務がございましたか?」
現在の領主は父上で、俺は父上がご帰還されてからは補佐でしかない。だから、言う必要など無かったでしょうとのこと。
まあその通りだけど……。俺に伏せると、わざわざ父上の確約を取った理由を、聞きたいのだ。だけど、この様子では答えてくれそうもないな……。
そう思ったから、理由の追求は置いておくことにした。それよりも本題だ。
「残ってほしいと言っても、駄目だろうか」
そう言うと思っていたのだろう。
分かっていたと言いたげに、息を吐くアーシュ。
「何故?」
「何故って……何故も何も、そう思って当然だろう?
俺はアーシュを得がたい人材だと思っているし、ジークやユストだって、それを望んでいる。
俺たちがお前を失いたいなどと、思うわけないじゃないか」
「……俺たち……?」
鸚鵡返しにそう呟き、クッと、口角を吊り上げる。
「貴方にとっての私は、口煩く煙たいだけの存在だと思っておりました」
「そんな風には思っていない! アーシュは俺にとっても、大切な仲間の一人なんだぞ」
そう言うと、呆れたように笑う。
「それは、とても優等生なご意見ですね」
本心ではないことを言わなければならないなんて、貴方も大変ですね……と、そんな表情。
アーシュの俺を嘲ったような態度に、ハインのイライラが募っていく。アーシュもそれは分かっているだろうに……態度を改めようとはしなかった。だけど……。
…………今日はなんか、いつも以上に突っかかってくるなぁ。
どうしてだろうかと考えた。普段から言葉は少しキツめではあった。けれど、こんな風に、あからさまな嫌味を言ったりはしなかった。
俺をさっさと遠去けたくて、わざと怒らせるような言動を取っている?
「お話がそれだけならばお帰りください。私の気持ちは変わりませんでしたので。では」
「待ってくれ。まだ……」
「もう良いでしょう? 貴方はちゃんと、私を引き止めようとした。ジークとユストへの義理はそれで果たせましたよ」
「二人への義理立てでこんなことを言いにきたんじゃない!」
「どうだか」
なんだろう……苛ついている? 少々焦っているようにも見受けられる。
早く何処かへ行ってくれと、構わないでくれと、そんな風に考えてる?
俺を部屋へ入れたのは、他の騎士にこんなやり取りを見せないためだろうし、嫌だと言っても俺が引き下がらないと分かっていたからだろう。そして出かける用事があると、わざわざ時間が無いことを伝えて牽制……俺のことを報告に行った二人への義理を果たせば、俺がここにいる必要は無いから帰ると考えていた?
「今日は、どこに行くつもりなんだ?」
「貴方には関係ない」
食い気味に拒否られた。
だけど、怒り顔の裏に、ちらりと見えたのは、焦りと罪悪感……?
「……分かった。邪魔する気は無かったんだ。また後にする」
「私の意思は覆りませんから、もう結構です」
「俺が結構じゃないから来る」
そう言うと、また嫌そうに顔を歪める。だけど……。
その裏にやはり、違う表情が隠れていた。何故、俺に後ろめたさを感じているのだろう? 今の態度に対して? 違う気がする……。
アーシュの顔を覗き込むと、視線を逸らされた。やっぱり見間違いじゃないな、これ……じゃあ、何に対して?
「やめてください」
もう一歩を踏み出すと、少し焦った様子で、一歩下がる。
俺に知られたくない? 悟られたくない……だけど、それだけじゃないように思う。なんだろう、これ……。
「近い!」
肩を押されて押し退けられた。
ちょっと顔を覗き込もうとし過ぎたようだ。
それと同時に、ふわんとなにか、青い香りが鼻先を掠める。
……香水じゃないよな……アーシュ男だし……女性の移り香?
「何を隠してる?」
つい我慢がきかなくて、そう問うたら、途端にアーシュは振り切れた。
「貴方には関係ない!」
そのまま肩を押され、部屋の外に向けて押しやられる。
「お願いですから、帰ってください!」
焦った声音。俺に何かを隠していて、それを知られたくなかったということが、それで理解できたのだけど、そのままハインと共に部屋を追い出された。
鼻先で扉が閉まり、そこに暫く呆然と、佇んでいたのだけど……このままここにいても、嫌がられるだけだな。
「……一旦帰ろうか」
そう呟き、足を進めた。いつもなら怒りそうなハインが大人しいなと思っていたら……。
「とても違和感のある香りの部屋でしたね……」
「違和感?」
「鬱金香(チューリップ)臭かったです」
獣人であるハインは、俺たちより格段に鼻が良い。
ハインには、あの部屋に鬱金香の香りが充満していると感じたらしい。
「花なんて無かったろう?」
そもそも男の部屋に鬱金香って……。
あの可愛らしい花が飾ってあれば、目に付いたと思う。でも……アーシュから香った草木の香り……あれがもしかして、鬱金香だったのかな。
「箱の中では? 濃厚でしたよ。他にもいくつか混じってましたが」
「……ハインって、花に詳しいな。前も紫陽花の異名を知ってた」
「花の香りは特徴が強いので、覚える気など無くても記憶に残ってしまうだけです」
他にも分かる香りがあった? と聞くと、木春菊(ガーベラ)も強かったという。
濃厚な花の香りが複数混じっている……。
それが指すものが、何か思い至らない……。
「まさか花束……のはずないか。アーシュが花束……」
女性に贈るため? いやでも、彼のそういった浮いた噂って聞いてないし……俺が知らなくても、ユストたちが知らないってことはないだろう。
だけどじゃあ何かって考えると…………全然出てこない。
そのまま足を進めていると、管理室前まで戻ってきてしまっていた。
お帰りですかと聞いて来る使用人に、ふと思い至り、アーシュの外出先って、どこか分かる? と、聞いてみた。
有事の際の連絡先として、記しているかもしれないと思ったのだけど。
「セイバーン村となっております」
………………っ。
…………答え、分かった気がする。
ハインは相変わらず付いてきていたけれど、俺は構わず足を進めた。とはいえ……気持ちとしては、足踏みしていた。
正直、気が重い。
アーシュは俺の顔を見るのも嫌だったんだろうなぁって……、そう思ったら。
戴冠式まで残ると決めていたアーシュ。それは、貴族出身者がいないセイバーンの事情も分かっていて、任命式や戴冠式では、自分が必要だろうからと考え、残ってくれていた……ってことだ。
それは、母に対する忠義心ゆえの行動だったのだろう。
もう、三年も前に、亡くなった人なのに、忠義を尽くす……。そういう男であるアーシュが、嫌な奴なわけがない。
本当ならば、職務に私情を挟むことだって嫌だろうに……、それでも俺に対する態度が硬くなっているって、理性では制御できないくらいの苦痛だったって、ことだよな……。
兵舎に赴くと、管理者室に使用人の姿。
今までは騎士らが適当に過ごしていたのだけど、ここにもこの春から、管理者が置かれた。
騎士の勤務状態も確認できるようになったので、アーシュは本日、どこの警備に配属されているのか聞くと、今日は非番とのこと。
「ですが、外出届が出ておりますので、お出かけされるご予定のようです」
用事があるのかな? じゃあ、あまり時間は取れないかもしれないな……。
まだ部屋にいるとのことで、場所を聞き、足を進めた。
同じ間取りの部屋が続く廊下を進み、数人の非番騎士とすれ違う。
途中、荷を運び出している部屋があるから何かと思ったら、故郷に配属希望を出した騎士の引越し準備だった。そうか、もう移動が始まっているよな……。
お世話になりましたと言う騎士に、今までありがとう。と、言葉を掛ける。配属先に移っても、そのうちまた、土嚢関係の訓練でこちらに来ることになるだろうから、その時は声を掛けてくれと伝えた。
「世話になった。どうか配属先でも健やかに過ごしてくれ。また会える時を楽しみにしている」
少し寂しい……。
ずっと、関わってこなかったこのセイバーンの地で、初めて深く関わった者たち。少なくない時間を共にした。苦難を乗り越えた。お互いに命を賭けることもしたのだ。
「本当に、ありがとう。君はセイバーンを救ってくれた勇者だ」
彼らがいなかったら、父上も俺も、きっとここにいなかったと思う。
人の縁が、彼らの折れなかった心が、セイバーンを救ってくれたのだ。
その先に更に進み、見つけたアーシュの部屋は、他となんら変わらない一室だった。
俺より上位である子爵家の方なのに、一般庶民と一緒に宿舎で生活し、そのことに対して何ひとつ文句を聞いていない。
特権階級であることを、特別にしない。それができている貴族出身者なんて、なかなかに珍しいのだと、俺は知ってる。
「アーシュ、いる?」
扉を叩いて声を掛けると、少しの沈黙。そして、扉が開き、とても不機嫌そうなアーシュが出てきた。
「ジークらから報告があった件なんだけど」
「…………言うんだろうと思ってました」
ものすごく嫌そうに、ぼそりとアーシュ。
その態度にカチンときたのか、ハインの纏う雰囲気が若干剣呑になるが、まだ怒るような段階じゃないってば。膝を叩いて落ち着けと注意した。俺とアーシュより、ハインとの関係の方が問題だと、俺は思ってるんだけどなぁ。
俺たちのそんな様子を見ていたろうアーシュは、観念した様子で中へどうぞと、俺たちを促す。
「散らかっておりますが、それで宜しければ」
「良いのか? 出かける予定だったんだろう?」
「……ならお帰りいただけるのですか?」
……それは承知できないな。
「お邪魔する」
とりあえず、お言葉に甘えさせてもらうことにした。
前、ユストの部屋にも入ったことがあったけれど、間取りはそちらとほぼ同一である様子。
ただ、アーシュはユストほど細々とした道具類を所持していないみたいで、随分と物が少なく、部屋を広く感じた。
部屋の端には木箱がいくつか積まれており、片付けの最中なのだと窺わせる。
「ご覧の通り椅子はありませんし、これから出かける予定もありますので、このままで失礼します。ご用件は?」
「どうして、俺に黙ってた?」
「報告する義務がございましたか?」
現在の領主は父上で、俺は父上がご帰還されてからは補佐でしかない。だから、言う必要など無かったでしょうとのこと。
まあその通りだけど……。俺に伏せると、わざわざ父上の確約を取った理由を、聞きたいのだ。だけど、この様子では答えてくれそうもないな……。
そう思ったから、理由の追求は置いておくことにした。それよりも本題だ。
「残ってほしいと言っても、駄目だろうか」
そう言うと思っていたのだろう。
分かっていたと言いたげに、息を吐くアーシュ。
「何故?」
「何故って……何故も何も、そう思って当然だろう?
俺はアーシュを得がたい人材だと思っているし、ジークやユストだって、それを望んでいる。
俺たちがお前を失いたいなどと、思うわけないじゃないか」
「……俺たち……?」
鸚鵡返しにそう呟き、クッと、口角を吊り上げる。
「貴方にとっての私は、口煩く煙たいだけの存在だと思っておりました」
「そんな風には思っていない! アーシュは俺にとっても、大切な仲間の一人なんだぞ」
そう言うと、呆れたように笑う。
「それは、とても優等生なご意見ですね」
本心ではないことを言わなければならないなんて、貴方も大変ですね……と、そんな表情。
アーシュの俺を嘲ったような態度に、ハインのイライラが募っていく。アーシュもそれは分かっているだろうに……態度を改めようとはしなかった。だけど……。
…………今日はなんか、いつも以上に突っかかってくるなぁ。
どうしてだろうかと考えた。普段から言葉は少しキツめではあった。けれど、こんな風に、あからさまな嫌味を言ったりはしなかった。
俺をさっさと遠去けたくて、わざと怒らせるような言動を取っている?
「お話がそれだけならばお帰りください。私の気持ちは変わりませんでしたので。では」
「待ってくれ。まだ……」
「もう良いでしょう? 貴方はちゃんと、私を引き止めようとした。ジークとユストへの義理はそれで果たせましたよ」
「二人への義理立てでこんなことを言いにきたんじゃない!」
「どうだか」
なんだろう……苛ついている? 少々焦っているようにも見受けられる。
早く何処かへ行ってくれと、構わないでくれと、そんな風に考えてる?
俺を部屋へ入れたのは、他の騎士にこんなやり取りを見せないためだろうし、嫌だと言っても俺が引き下がらないと分かっていたからだろう。そして出かける用事があると、わざわざ時間が無いことを伝えて牽制……俺のことを報告に行った二人への義理を果たせば、俺がここにいる必要は無いから帰ると考えていた?
「今日は、どこに行くつもりなんだ?」
「貴方には関係ない」
食い気味に拒否られた。
だけど、怒り顔の裏に、ちらりと見えたのは、焦りと罪悪感……?
「……分かった。邪魔する気は無かったんだ。また後にする」
「私の意思は覆りませんから、もう結構です」
「俺が結構じゃないから来る」
そう言うと、また嫌そうに顔を歪める。だけど……。
その裏にやはり、違う表情が隠れていた。何故、俺に後ろめたさを感じているのだろう? 今の態度に対して? 違う気がする……。
アーシュの顔を覗き込むと、視線を逸らされた。やっぱり見間違いじゃないな、これ……じゃあ、何に対して?
「やめてください」
もう一歩を踏み出すと、少し焦った様子で、一歩下がる。
俺に知られたくない? 悟られたくない……だけど、それだけじゃないように思う。なんだろう、これ……。
「近い!」
肩を押されて押し退けられた。
ちょっと顔を覗き込もうとし過ぎたようだ。
それと同時に、ふわんとなにか、青い香りが鼻先を掠める。
……香水じゃないよな……アーシュ男だし……女性の移り香?
「何を隠してる?」
つい我慢がきかなくて、そう問うたら、途端にアーシュは振り切れた。
「貴方には関係ない!」
そのまま肩を押され、部屋の外に向けて押しやられる。
「お願いですから、帰ってください!」
焦った声音。俺に何かを隠していて、それを知られたくなかったということが、それで理解できたのだけど、そのままハインと共に部屋を追い出された。
鼻先で扉が閉まり、そこに暫く呆然と、佇んでいたのだけど……このままここにいても、嫌がられるだけだな。
「……一旦帰ろうか」
そう呟き、足を進めた。いつもなら怒りそうなハインが大人しいなと思っていたら……。
「とても違和感のある香りの部屋でしたね……」
「違和感?」
「鬱金香(チューリップ)臭かったです」
獣人であるハインは、俺たちより格段に鼻が良い。
ハインには、あの部屋に鬱金香の香りが充満していると感じたらしい。
「花なんて無かったろう?」
そもそも男の部屋に鬱金香って……。
あの可愛らしい花が飾ってあれば、目に付いたと思う。でも……アーシュから香った草木の香り……あれがもしかして、鬱金香だったのかな。
「箱の中では? 濃厚でしたよ。他にもいくつか混じってましたが」
「……ハインって、花に詳しいな。前も紫陽花の異名を知ってた」
「花の香りは特徴が強いので、覚える気など無くても記憶に残ってしまうだけです」
他にも分かる香りがあった? と聞くと、木春菊(ガーベラ)も強かったという。
濃厚な花の香りが複数混じっている……。
それが指すものが、何か思い至らない……。
「まさか花束……のはずないか。アーシュが花束……」
女性に贈るため? いやでも、彼のそういった浮いた噂って聞いてないし……俺が知らなくても、ユストたちが知らないってことはないだろう。
だけどじゃあ何かって考えると…………全然出てこない。
そのまま足を進めていると、管理室前まで戻ってきてしまっていた。
お帰りですかと聞いて来る使用人に、ふと思い至り、アーシュの外出先って、どこか分かる? と、聞いてみた。
有事の際の連絡先として、記しているかもしれないと思ったのだけど。
「セイバーン村となっております」
………………っ。
…………答え、分かった気がする。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる