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※日本語は【】で記載します。
木の影に、隠れるように花梨は横になっていた。
花梨が動かないせいだろうか、周りには鳥が集まっている。しかし、鳥たちが一斉に飛び始めた。
「人?」
花梨を見て、驚愕に目を開く女性、彼女の名前はタグミ。
タグミの口から流れる言語は、まるで花梨の知っているものではない。ただ、気を失っているので、そんなことには気がついてはいないが。
「う~ん。怪我はしてないみたいだねぇ」
30代半ばほどだろうか?つんっとつりあがった眉から気の強さが伺える。だが、それとは異なり目じりの皺が、多少きつい印象を消していた。
タグミは花梨の体を抱きかかえると、怪我をしていないか確認をした。
「こんなとこに置いていっても仕方ないし……」
暫く思案顔で俯いていたタグミは、パッと顔を上げて花梨を抱きかかえた。そして、そのまま彼女は自分の家へと歩き出した。
白いシーツ。お日様の匂い、その中で花梨は目を覚ました。
【ここ、は?】
そう言いながら、花梨はベットの上に座って辺りをきょろきょろと見渡す。ふわっとシチューの良い香りがして、思わずお腹を抑えた。
「お、目が覚めたかい?」
にこっと顔全体で笑うタグミに、花梨はきょとんとする。
(――ちょっと待って、言葉が分からないなんて、ねぇ?)
「どうしたんだい?体の調子でも」
そう言って近づくタグミは、心配げな表情を浮かべているので、心配してくれていると分かる。しかし、言葉が分からない。
【わ、分からないんです!】
そう日本語で言って、身振り手振りを加える。
その態度に訝しげにタグミは顔を顰めた後、表情を変えて花梨を見つめた。
「もしかして、言葉が分からないのかい?」
そう言いながら、タグミは口の前で人差し指をクロスさせて×マークを作った。
(――これって、分かってくれたんだよね)
コクコクと数度頷いた。
「一体どこの国なんだい、イガー? ツザカ?」
その言葉に花梨が首を傾げたら、再び「イガー? ツザカ?」と繰り返した。
両方に聞き覚えがないので、花梨は首を横に振る。
タグミはその様子に困ったようにしていたが、何かを思いついたように立ち上がった。
何処に行ったのか、不安に花梨が表情を曇らせると、皿を持ったタグミが現れた。
「これ、食べれるかい?」
差し出されたのは、クリームシチューによく似ていた。違う点といえば、野菜のほかに穀物類が入っていることくらいだろうか。
【食べても良いの?】
そう言いながら受け取る。じーと見つめるタグミの視線を痛く感じながらも、花梨はシチューを口に含んだ。
【うん。美味しい】
ほくほく顔で、そのままシチューを頬張っている。
「分かった。あんたはツザカだね。
国はツザカ。手を見ると随分といい生活。まぁお嬢様って所か」
こうして花梨がシチューを食べているうちに、花梨の素性が決まったようだった。
木の影に、隠れるように花梨は横になっていた。
花梨が動かないせいだろうか、周りには鳥が集まっている。しかし、鳥たちが一斉に飛び始めた。
「人?」
花梨を見て、驚愕に目を開く女性、彼女の名前はタグミ。
タグミの口から流れる言語は、まるで花梨の知っているものではない。ただ、気を失っているので、そんなことには気がついてはいないが。
「う~ん。怪我はしてないみたいだねぇ」
30代半ばほどだろうか?つんっとつりあがった眉から気の強さが伺える。だが、それとは異なり目じりの皺が、多少きつい印象を消していた。
タグミは花梨の体を抱きかかえると、怪我をしていないか確認をした。
「こんなとこに置いていっても仕方ないし……」
暫く思案顔で俯いていたタグミは、パッと顔を上げて花梨を抱きかかえた。そして、そのまま彼女は自分の家へと歩き出した。
白いシーツ。お日様の匂い、その中で花梨は目を覚ました。
【ここ、は?】
そう言いながら、花梨はベットの上に座って辺りをきょろきょろと見渡す。ふわっとシチューの良い香りがして、思わずお腹を抑えた。
「お、目が覚めたかい?」
にこっと顔全体で笑うタグミに、花梨はきょとんとする。
(――ちょっと待って、言葉が分からないなんて、ねぇ?)
「どうしたんだい?体の調子でも」
そう言って近づくタグミは、心配げな表情を浮かべているので、心配してくれていると分かる。しかし、言葉が分からない。
【わ、分からないんです!】
そう日本語で言って、身振り手振りを加える。
その態度に訝しげにタグミは顔を顰めた後、表情を変えて花梨を見つめた。
「もしかして、言葉が分からないのかい?」
そう言いながら、タグミは口の前で人差し指をクロスさせて×マークを作った。
(――これって、分かってくれたんだよね)
コクコクと数度頷いた。
「一体どこの国なんだい、イガー? ツザカ?」
その言葉に花梨が首を傾げたら、再び「イガー? ツザカ?」と繰り返した。
両方に聞き覚えがないので、花梨は首を横に振る。
タグミはその様子に困ったようにしていたが、何かを思いついたように立ち上がった。
何処に行ったのか、不安に花梨が表情を曇らせると、皿を持ったタグミが現れた。
「これ、食べれるかい?」
差し出されたのは、クリームシチューによく似ていた。違う点といえば、野菜のほかに穀物類が入っていることくらいだろうか。
【食べても良いの?】
そう言いながら受け取る。じーと見つめるタグミの視線を痛く感じながらも、花梨はシチューを口に含んだ。
【うん。美味しい】
ほくほく顔で、そのままシチューを頬張っている。
「分かった。あんたはツザカだね。
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こうして花梨がシチューを食べているうちに、花梨の素性が決まったようだった。
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