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腕の中にしっかりと、パンの入った袋を抱き抱えて歩く。
「次に行くところでは、けして声を出さないこと。分かったかい?」
前に歩いていたタグミがそう言って、真剣な表情を浮かべたので花梨は頷いた。
タグミがまっすぐ向かう先へ、視線を向ける。そこには、見るからに米。米が積んで置いてあった。
(――お米、そっか。そういえばもう無かったもんね)
米を買う理由は分かるけれど、なぜ黙っていなければいけないのかが分からなかった。
その店の店主は、タグミの顔を見ると嫌そうに顔を顰めた。
「一袋。貰うよ」
「あぁ……相変わらず鳥の餌食ってるんだな」
嘲笑とともに言った店主。タグミはその言葉に顔色一つ変えずに金を払った。
店主の言葉の意味は分からなかったが、その表情からタグミを馬鹿にしているのが分かり、花梨は口を開こうとする。
「花梨! 行くよ」
ぴしゃりとタグミが鋭い声で、花梨の言葉を封じる。その声に花梨は渋々押し黙った。そして、そのまま腕を掴むとその場から立ち去る。
(――タグミは街の人に嫌われてる? でも、パン屋のおじさんとは仲良かったし)
いつなら、口を開いて良いのか分からずに、くいくいとタグミの袖を引いた。
「ん? あぁ。もう喋っても良いよ」
そう言ったタグミの表情は、何時ものものだった。
「何であんなに? 仲悪い? おじさん」
「あぁ。そういうわけじゃないさ。ただ、アイツは心からイガーなんだよ」
早口でまくし立てるような言葉、全く聞き取れない。曇る花梨の表情に気がついたタグミは、にっこりした。
「文化の違い、だよ。イガーでは米を家畜の餌にするのさ。人間は食べないんだよ」
「えぇっ!?」
信じられずに声を出した花梨に、呆れたようなタグミの視線。
「驚きすぎだよ」
【ご、ごめんなさい】
(――でも、信じられない。白いご飯、あんなに美味しいのに)
文化の違いって、凄いなぁ。と思いうんうんと一人頷いていたが、一つ引っかかりを感じた。
「何で、タグミ。食べる?」
「何故って、米は美味しいじゃないか」
けろっとした様子で言った言葉は、当たり前といえば当たり前。
「それに、ここは国境だからね。ツザカの文化と混ざり合っている者もいるんだよ」
そう言ってタグミは、腕を伸ばして山を指した。
「私達の住んでいる森。あそこを抜ければツザカさ……さて、帰ろうかね?」
腕を下ろすと、その手で花梨の手と繋いだ。
「もう、良い?」
「あぁ。買い物は終わったよ」
手を繋ぐ、とは不思議な行為だと花梨は思う。全く知らない文化、まだ不自由な言語。そんなものに感じる不安がどこかへ飛んでしまうのだから。
穏やかな雰囲気に、花梨の気が緩んだとき。花梨の肩に紫色の可愛らしい鳥が止まった。
『花梨、花梨。人、森、居る』
肩の鳥が一鳴き。その鳴き声は直接花梨の脳へ届き、言葉を伝えてくれた。
「お、またかい?」
「ん。森、居るって。人」
動物の言葉が分かる花梨に、タグミはもう慣れてしまったようだった。
元々タグミは、花梨が動物の言葉が分かる、と言ってもあまり驚かなかった。
むしろ、花梨の方がその時は動揺していた。
「人が? 急ぐよ」
あの森は滅多に人は入ってこない。イガーの者は、大して入る理由がない。なぜなら、ツザカの者はイガーへ行きたいのなら森の横の道を通ってくれば良いからだ。
(――誰だろう?)
不安げな表情を浮かべながら、タグミと一緒に走り出していた。とはいえ、片手ではパンの袋を抱えているためか、一緒に走るというよりも引っ張られているように見えてしまうが。
「次に行くところでは、けして声を出さないこと。分かったかい?」
前に歩いていたタグミがそう言って、真剣な表情を浮かべたので花梨は頷いた。
タグミがまっすぐ向かう先へ、視線を向ける。そこには、見るからに米。米が積んで置いてあった。
(――お米、そっか。そういえばもう無かったもんね)
米を買う理由は分かるけれど、なぜ黙っていなければいけないのかが分からなかった。
その店の店主は、タグミの顔を見ると嫌そうに顔を顰めた。
「一袋。貰うよ」
「あぁ……相変わらず鳥の餌食ってるんだな」
嘲笑とともに言った店主。タグミはその言葉に顔色一つ変えずに金を払った。
店主の言葉の意味は分からなかったが、その表情からタグミを馬鹿にしているのが分かり、花梨は口を開こうとする。
「花梨! 行くよ」
ぴしゃりとタグミが鋭い声で、花梨の言葉を封じる。その声に花梨は渋々押し黙った。そして、そのまま腕を掴むとその場から立ち去る。
(――タグミは街の人に嫌われてる? でも、パン屋のおじさんとは仲良かったし)
いつなら、口を開いて良いのか分からずに、くいくいとタグミの袖を引いた。
「ん? あぁ。もう喋っても良いよ」
そう言ったタグミの表情は、何時ものものだった。
「何であんなに? 仲悪い? おじさん」
「あぁ。そういうわけじゃないさ。ただ、アイツは心からイガーなんだよ」
早口でまくし立てるような言葉、全く聞き取れない。曇る花梨の表情に気がついたタグミは、にっこりした。
「文化の違い、だよ。イガーでは米を家畜の餌にするのさ。人間は食べないんだよ」
「えぇっ!?」
信じられずに声を出した花梨に、呆れたようなタグミの視線。
「驚きすぎだよ」
【ご、ごめんなさい】
(――でも、信じられない。白いご飯、あんなに美味しいのに)
文化の違いって、凄いなぁ。と思いうんうんと一人頷いていたが、一つ引っかかりを感じた。
「何で、タグミ。食べる?」
「何故って、米は美味しいじゃないか」
けろっとした様子で言った言葉は、当たり前といえば当たり前。
「それに、ここは国境だからね。ツザカの文化と混ざり合っている者もいるんだよ」
そう言ってタグミは、腕を伸ばして山を指した。
「私達の住んでいる森。あそこを抜ければツザカさ……さて、帰ろうかね?」
腕を下ろすと、その手で花梨の手と繋いだ。
「もう、良い?」
「あぁ。買い物は終わったよ」
手を繋ぐ、とは不思議な行為だと花梨は思う。全く知らない文化、まだ不自由な言語。そんなものに感じる不安がどこかへ飛んでしまうのだから。
穏やかな雰囲気に、花梨の気が緩んだとき。花梨の肩に紫色の可愛らしい鳥が止まった。
『花梨、花梨。人、森、居る』
肩の鳥が一鳴き。その鳴き声は直接花梨の脳へ届き、言葉を伝えてくれた。
「お、またかい?」
「ん。森、居るって。人」
動物の言葉が分かる花梨に、タグミはもう慣れてしまったようだった。
元々タグミは、花梨が動物の言葉が分かる、と言ってもあまり驚かなかった。
むしろ、花梨の方がその時は動揺していた。
「人が? 急ぐよ」
あの森は滅多に人は入ってこない。イガーの者は、大して入る理由がない。なぜなら、ツザカの者はイガーへ行きたいのなら森の横の道を通ってくれば良いからだ。
(――誰だろう?)
不安げな表情を浮かべながら、タグミと一緒に走り出していた。とはいえ、片手ではパンの袋を抱えているためか、一緒に走るというよりも引っ張られているように見えてしまうが。
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