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訝しげに眉を顰めて、花梨はきょろきょろと辺りを見る。
「ねぇ、ゼフィルド」
ミケのおかげで大分上達した言葉で、話しかける。
「何だ」
「何か、裕福な人。多いような気がする」
ミケのおかげで本当に10日で、王都へ到達できた。王都へ付いてから、真っ先に花梨が感じた違和感はそれだ。
「あぁ。土地が高いからな、基本的に金持ちばかりになる」
「へ? なんで、高いの?」
確かに都会の土地は高いけど、と首を傾げる。
「王都までは、戦争の被害は来ないからな。元々住んでいた人間に高い金払って買う奴が多い」
嘲笑し、そう吐き捨てるようにゼフィルドが言った。
【ねぇ。ミケ】
『はい?』
花梨が話しかけたのは、両手に抱える小さな猫。さすがにあのままでは、街に入れないので、ミケに小さくなってもらったのだ。
『ご主人様! 言葉が戻ってますー』
「あ、ごめんね」
慌てて共通語に戻す。早く言葉を覚えるために、ミケにも日本語は使わないようにしているのだ。
猫に話しかける花梨に、訝しげな視線を向ける人たち。花梨は慌てて口をつぐんだ。
(――ミケの声って、私にしか聞こえないもんなぁ。や、聞こえたらそれはそれで、困るけど)
ミケの鼻先を撫でれば、目を細めて「にゃん」と鳴いた。
ふぅ、とため息をついて歩いていると、急に視界が変わった。
「わわっ」
「っと、危ない」
倒れそうになった花梨を抱きとめたのは、ゼフィルドではなく初対面の青年。
「ありがとう……ございます」
「ふふ。無理に敬語なんて使わなくても良いよ」
そう言って微笑んだ青年。その笑みは花が綻ぶような可憐な笑み。しかし、けして女性的ではなく、どこか中性的な印象を与える。
「気をつけろ」
何故か不機嫌になったゼフィルドに言われ、花梨は申し訳なさそうに謝る。
「もしかして、王都は初めてなのかな?」
「うん。今日着いたばっかりで」
困ったように笑ってみせる。
「ふぅん。何か行く場所があるなら案内するけど。どう?」
微笑む青年は、まるで天使の姿!その背中には、純白の羽の錯覚まで見える。
「なら、お願い……もぐぁ」
お願いします、といおうとした口を、途中でゼフィルドにふさがれた。
その押さえつけ方が優しいものとは到底言えぬ動作だったため、変な声が花梨の喉から漏れる。
「生憎だが、場所は分かっている」
人の親切を無駄にするのか!とゼフィルドを睨みつければ、花梨の睨みを軽く上回る冷たい視線が返ってくる。
「そう? それじゃあね」
そう言って歩き出した青年は、くるっと突然振り返った。
「お姫様くらい、守れないとね?ゼフィルド」
そう言って、クスリと笑うと今度は立ち止まらずに歩き去った。
「あー。名前聞いてなかったのにっ!……って、あれ?ゼフィルドって名乗ったっけ?」
ゼフィルドが渋い顔をして、首を横に振った。
「まだだ。あれ、とは関わらんほうが良い」
「あれって」
人に向かって『あれ』は無いだろう、と花梨が苦笑をする。
「そんなことより、さっさと城へ行くぞ。余計な時間は無い」
「……本当だったら、最低でも二ヶ月かかったのに?」
そう小声で呟くと、ゼフィルドが花梨の頬をむにっと抓んだ。
そして、そのまま横に伸ばす。
「い、いひゃいよ」
「ふん」
パッと手を離すと、花梨の腕を掴んで歩き出した。
(――かなり、友好的になってきてくれてるけど。これは喜ぶべきなの?)
乱暴に掴まれた腕は、痛みを感じない。あくまでもゼフィルドが、優しく掴んでくれているおかげだ。
複雑な表情を浮かべる花梨を、慰めるようにミケが「にゃぁん」と一鳴きした。
お城、という事で花梨の頭に浮かんでいたのは、日本のお城。実際に目にしたのは、城。と言うよりも宮殿と言う感じだった。
「おっきいー」
無駄にでかすぎるじゃないだろうか、と思えるほどにでかい。
(――無駄に装飾が多い気がするなぁ。あの壁、少し貰ったらきっと1年は生活出来るよ)
じーと狙いを定めるように見つめる花梨の顔面に、ミケのパンチが当たる。
『ご主人様!何変な事考えてるんですかー!僕の責任にもなるんですよ?』
ぷくぅと頬を膨らませるミケに、心の中で謝り、謝罪を込めてぐりぐりと撫でた。
「ねぇ。ゼフィルド。あれって門番だよね?どうやって中に入るの?」
花梨の見つめる先では、一人の男が兵士に追い出されている様子だった。
「許可書がある」
そういって取り出したのは、一枚の紙。
「ほほぅ。中々にやるね!」
そう感心したように言えば、何故か冷たい視線。
「お前は、俺が中に入る術を持っていないとでも思っていたのか?」
「うん」
即答すると、軽く頭を叩かれた。
痛いじゃないか! と睨みつけても、ゼフィルドは飄々としている。と、いうか。相変わらずの無表情。
『こんなところで漫才してないで、早く行ってくださいー』
急かすようなミケに、曖昧な笑みを浮かべると、バシっとゼフィルドの背中を叩いた。
「さ、行こう?」
よくもまぁ、お前が言うな?と言うようなゼフィルドの視線を合えて無視。
その腕を掴むと、そのまま引っ張るように歩き出した。
「ねぇ、ゼフィルド」
ミケのおかげで大分上達した言葉で、話しかける。
「何だ」
「何か、裕福な人。多いような気がする」
ミケのおかげで本当に10日で、王都へ到達できた。王都へ付いてから、真っ先に花梨が感じた違和感はそれだ。
「あぁ。土地が高いからな、基本的に金持ちばかりになる」
「へ? なんで、高いの?」
確かに都会の土地は高いけど、と首を傾げる。
「王都までは、戦争の被害は来ないからな。元々住んでいた人間に高い金払って買う奴が多い」
嘲笑し、そう吐き捨てるようにゼフィルドが言った。
【ねぇ。ミケ】
『はい?』
花梨が話しかけたのは、両手に抱える小さな猫。さすがにあのままでは、街に入れないので、ミケに小さくなってもらったのだ。
『ご主人様! 言葉が戻ってますー』
「あ、ごめんね」
慌てて共通語に戻す。早く言葉を覚えるために、ミケにも日本語は使わないようにしているのだ。
猫に話しかける花梨に、訝しげな視線を向ける人たち。花梨は慌てて口をつぐんだ。
(――ミケの声って、私にしか聞こえないもんなぁ。や、聞こえたらそれはそれで、困るけど)
ミケの鼻先を撫でれば、目を細めて「にゃん」と鳴いた。
ふぅ、とため息をついて歩いていると、急に視界が変わった。
「わわっ」
「っと、危ない」
倒れそうになった花梨を抱きとめたのは、ゼフィルドではなく初対面の青年。
「ありがとう……ございます」
「ふふ。無理に敬語なんて使わなくても良いよ」
そう言って微笑んだ青年。その笑みは花が綻ぶような可憐な笑み。しかし、けして女性的ではなく、どこか中性的な印象を与える。
「気をつけろ」
何故か不機嫌になったゼフィルドに言われ、花梨は申し訳なさそうに謝る。
「もしかして、王都は初めてなのかな?」
「うん。今日着いたばっかりで」
困ったように笑ってみせる。
「ふぅん。何か行く場所があるなら案内するけど。どう?」
微笑む青年は、まるで天使の姿!その背中には、純白の羽の錯覚まで見える。
「なら、お願い……もぐぁ」
お願いします、といおうとした口を、途中でゼフィルドにふさがれた。
その押さえつけ方が優しいものとは到底言えぬ動作だったため、変な声が花梨の喉から漏れる。
「生憎だが、場所は分かっている」
人の親切を無駄にするのか!とゼフィルドを睨みつければ、花梨の睨みを軽く上回る冷たい視線が返ってくる。
「そう? それじゃあね」
そう言って歩き出した青年は、くるっと突然振り返った。
「お姫様くらい、守れないとね?ゼフィルド」
そう言って、クスリと笑うと今度は立ち止まらずに歩き去った。
「あー。名前聞いてなかったのにっ!……って、あれ?ゼフィルドって名乗ったっけ?」
ゼフィルドが渋い顔をして、首を横に振った。
「まだだ。あれ、とは関わらんほうが良い」
「あれって」
人に向かって『あれ』は無いだろう、と花梨が苦笑をする。
「そんなことより、さっさと城へ行くぞ。余計な時間は無い」
「……本当だったら、最低でも二ヶ月かかったのに?」
そう小声で呟くと、ゼフィルドが花梨の頬をむにっと抓んだ。
そして、そのまま横に伸ばす。
「い、いひゃいよ」
「ふん」
パッと手を離すと、花梨の腕を掴んで歩き出した。
(――かなり、友好的になってきてくれてるけど。これは喜ぶべきなの?)
乱暴に掴まれた腕は、痛みを感じない。あくまでもゼフィルドが、優しく掴んでくれているおかげだ。
複雑な表情を浮かべる花梨を、慰めるようにミケが「にゃぁん」と一鳴きした。
お城、という事で花梨の頭に浮かんでいたのは、日本のお城。実際に目にしたのは、城。と言うよりも宮殿と言う感じだった。
「おっきいー」
無駄にでかすぎるじゃないだろうか、と思えるほどにでかい。
(――無駄に装飾が多い気がするなぁ。あの壁、少し貰ったらきっと1年は生活出来るよ)
じーと狙いを定めるように見つめる花梨の顔面に、ミケのパンチが当たる。
『ご主人様!何変な事考えてるんですかー!僕の責任にもなるんですよ?』
ぷくぅと頬を膨らませるミケに、心の中で謝り、謝罪を込めてぐりぐりと撫でた。
「ねぇ。ゼフィルド。あれって門番だよね?どうやって中に入るの?」
花梨の見つめる先では、一人の男が兵士に追い出されている様子だった。
「許可書がある」
そういって取り出したのは、一枚の紙。
「ほほぅ。中々にやるね!」
そう感心したように言えば、何故か冷たい視線。
「お前は、俺が中に入る術を持っていないとでも思っていたのか?」
「うん」
即答すると、軽く頭を叩かれた。
痛いじゃないか! と睨みつけても、ゼフィルドは飄々としている。と、いうか。相変わらずの無表情。
『こんなところで漫才してないで、早く行ってくださいー』
急かすようなミケに、曖昧な笑みを浮かべると、バシっとゼフィルドの背中を叩いた。
「さ、行こう?」
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その腕を掴むと、そのまま引っ張るように歩き出した。
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