【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス

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 パーティー、と言うからには、華やかなものだと想像していた。

「怖いっ」

 部屋に入った途端、そう言って花梨はゼフィルドの冷ややかな目線を貰った。

 確かに、煌びやかに着飾った女性は居る。しかし、表情厳しくした男性達が何人も居るのだ。

 皆、王であるヴィラの発表が気になっているだけなのだが、花梨にとっては表情の険しい男達の居る場所には行きたくない。

「これって、元々何のパーティーだった?」

 声を潜めて、ゼフィルドに訊ねる。ゼフィルドはテーブルの上をグラスを、花梨に手渡して答えた。

「両国の使者を労う為、だ」

 受け取ったグラスの中身を確認せずに、緊張で喉が渇いていた花梨は一気に飲んだ。

(――美味しい、何の果物のジュースだろ?)

「あ、じゃあゼフィルド主役だね。そんな顔してたら駄目」

 ぐいぐいと眉間の皺を指で押す。

「やめろ、面倒だ」

 花梨の後ろの何かを見て、ため息混じりに言った。

「面倒って?」

 手を押し戻されて、花梨は首を傾げる。

 花梨との状態は、部屋の入り口へ顔を向け、ゼフィルドと話している。部屋の人たちは、皆花梨の後ろにいるわけで。その中にはちゃんとヴィラも居る。

 一方的にじゃれる花梨とゼフィルドは、傍から見れば仲の良い夫婦に見える。

「後ろを見ろ」

「へ?」

 くるっと振り返れば、花梨はヴィラと目が合う。するとヴィラは、にっこりと何時もどおりの笑みを浮かべた。そのヴィラの笑顔にゼフィルドが再度ため息。

 そのままヴィラは、ライヤを連れて花梨の元まで向かってくる。

(――ヴィラと来る人、誰だろ?)

 謁見の間にて顔は見たはずなのだが、花梨の頭からライヤの存在は消えていた。

「初めまして、龍の娘」

 そう言うと、軽く跪き(ひざまずき)花梨の手の甲へ口を落とした。

「ひゃっ」

 顔を真っ赤にして、慌てて手を引く。

(――え、映画以外で初めて見た!というか、された!)

「可愛らしい方ですね」

 その言葉は花梨を見ずに、ヴィラに向かって。その言葉に、ヴィラはむっとしたようにライヤを軽く睨んだ。

 その時、面倒ごとに関わりたくないと思ったのだろう。ゼフィルドは、無言で別の場所へ移動した。

「ライヤ・シャーズ。気軽にライヤとでも呼んで下さいね」

 ぱちっとウィンクをされる。それが妙に型にはまっていた。

「え~と」

「一応、この国の宰相だ」

「宰相……って、お偉いさんですか!」

 思わず一歩引けば、ライヤはふふっと笑みを零す。

「私より偉い人なら、居るじゃないですか。それに」

 言葉を区切った後、急に目が真剣になる。

「貴方にはこの国のことを学んでいただかないと困るみたいですね。まぁ、その話は後ほど。花梨様、30分ほど後には部屋へ帰ってくださいね」

「え?あ、後。様付けはちょっと」

 年上の、それも宰相に。花梨は気まずそうに言う。

「その辺りも勉強していただきます。龍の娘は誰よりも、それこそ王より尊い存在ですよ?」

「は、はい」

 しょぼん、と項垂れながら、花梨が頷いた。

「まぁ、私は花梨って呼び捨てにさせてもらいますけどね?」

 ふふっと含むように笑えば、ヴィラが厳しい視線を送る。

「ネルだけに、良い思いはさせません」

 そう言って、早々にライヤが立ち去った。

「ネル? ネルって?」

「……私ですよ。ヴィラーネルトから取って、ネル」

 はぁ、とため息を吐いて、首を数度振る。

「ねぇ、30分後って何かあるの?」

「その辺りで、発表するので。それまでには部屋に戻ってください」

「え?発表って、龍の娘ってだよね?だったら余計に私居なくちゃ駄目じゃない?」

 思わず声のトーンが上がりかけて、抑える。

「ライヤも言いましたよね? 駄目なんですよ、もう少し花梨さんが自覚を持たなければ。龍の娘はいわば、神と同等です。質問をぶつけられて、ふさわしい回答が今出来ますか?」

 淡々といわれた言葉に、ぐっと押し黙る。

 その様子を見て、ヴィラが困ったように笑みを浮かべた。

「だから、部屋で勉強していてください」

「え?」

「本、用意させましたから」

 悪戯っぽくそう言うヴィラに、花梨が嬉しそうに笑みを浮かべた。

「ただ、文字は読めますか?」

「あ、読めないけど。ミケが居るから」

『お呼びですか~』

 え? と足元を見てみれば、ミケが嬉しそうに纏わり付いている。花梨は少し笑って、ミケを抱えあげた。

「今の声は?」

 訝しげに訊ねるヴィラに、花梨は首を傾げる。

「もしかして、聞こえた?」

『王の血筋の方には、時々いるですー』

「……聖獣ですか」

 複雑そうな表情のヴィラを、花梨は不思議に思う。聖獣が居たら、困ることであるんだろうか、と。

「戦争に関係する気はありますか?無いのなら、ミケ様のことは黙っておいたほうが」

『いや~ん。ミケ様だなんてくすぐったいですー!』

 真剣な表情のヴィラが、その言葉で崩れる。花梨も何だか、肩透かしをくらったようだ。

「ミケ、ちょっと静かにね。あと、ヴィラも。呼び捨てでもいいと思うよ。この際私も」

「それじゃあ、花梨は戦争に関わる気は?」

 花梨、と呼び捨てにされて、花梨は少し頬を染めた。

「あ~、と。とにかく龍の娘の権限最大限に使って、戦争自体を止められないか頑張ってみる。戦争に関わるかどうかは、その後に考えたいって思ってるから」

 駄目かなぁ、とヴィラを見れば、大好きな空色の瞳を細めて穏やかな笑みを浮かべていた。

「そうですか、なら……花梨?どうかしました?」

「へ、い、いや。なんでもないよ」

(――やけに頬に熱が集まる!うわぁ!どうしよ)

 両手で頬を押さえて、軽く唸る。頬が熱くなるだけではなく、ぐらぐらと視界が揺れるほど。

「花梨?」

 顔を覗き込まれて、ノックアウトされそうになるのをぐっと堪える。

『ご主人様、もしかしてお酒飲みましたー?』

「花梨、酒に弱いんですか?」

「さ、酒?」

 頭の中に浮かぶのは、美味しい果実のジュース、いや果実酒。災難とは続くもので。

「あれ? 花梨だよね? どうしたの」

 そう言ってルファムアが近づいてきた。目を閉じればぐるぐると何かが回るので、目を無理やりに開ける。

 ふわふわとした感覚に身を任せるように、花梨はふにゃりと笑った。

「ちょうど、帰るところだよ」

「まだ始まったばかりだよ?」

 面白いものを見つけた、とばかりに目を輝かせるルファムア。牽制するようにヴィラが冷えた目線を送れば、ルファムアはさらに楽しげに目の色を変えた。

「ル、ル……」

 ぼうっとする頭の中、ルファムアの名前が思い出せない。

「ルーファさんは、楽しんでて~」

 適当につけたあだ名に、ピタっとルファムアの動きが固まった。そして、にっこりと笑っていた表情から、表情が消えた。

 そんなことも確認出来ない花梨は、そのまま部屋からふらふらとした足取りで出て行った。
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