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しおりを挟む「ぐわ~、何か重い」
のっそりとベットから起き上がると、花梨は頭を押さえた。軽い二日酔いのようだ。気持ち悪いまではいかないが、少し体が重い。
『大丈夫ですかー?』
ミケが膝へ飛び乗り、くてっと首を傾けた。
「ん……何とか。それよりも何だか騒がしいね」
部屋の外、昨日までは静かだったはずなのに今では色々な音がする。
『多分、ご主人様が龍の娘だって発表したためだと思うです~。皆涙流して喜んでましたよっ』
嬉しそうにいうミケと違い、花梨の表情は明るくない。
「涙、流して?」
『はい~。今の人って皆藁(わら)にも縋る勢いですから』
ミケの言葉を聞くと、花梨は突然立ち上がった。その勢いで、ミケが転げ落ちる。
『ご、ご主人様?』
情けない声を上げるミケに苦笑を浮かべる。
「多分、ドアの前で人待ってるよね? 微妙に話し声聞こえるし」
(――期待されてるなら、その分頑張らないと!)
ぎゅっと拳を握って、ドアを開けた。
ドアの前に立っていたのは、可愛らしい少年だった。
花梨の顔をきょとんと見た後、慌ててその場に平伏す。
「初めまして!僕はチュイと言います。龍巫女様のお世話をさせて頂くことになりました」
床に頭を擦り付けるほどの勢い。思わず苦笑してしまうほど緊張が伺える。
「龍、巫女って私のことだよね?」
「はい!」
キラキラと輝く瞳、絶対的な期待と畏怖が見える。その表情に、花梨は複雑そうに笑みを浮かべた。
「リルさんは?」
ずっと居てくれた侍女の姿がなく、花梨は何気なく聞いた。
「彼女は侍女、僕は神官。龍巫女様のお世話をさせて頂くのは神官の者でないと駄目なんです」
そう言うと、不安そうに俯いた。
「僕では、不足ですか?」
「あ、そんな事はないよ!」
慌てて言えば、ぱぁっと表情が明るくなる。
(――何か、ちょっとミケに似てるかも)
いつの間にか肩の上に乗ってきたミケとチュイを見比べる。
「今日の予定を話しても良いですか?」
「うん、お願い」
「基本的に龍巫女様に委ねますが、今日中に大神官様に会ってもらえませんか?」
「大神官さ……大神官。名前は?」
様を付けるのを、昨夜のライヤの言葉を思い出しぐっと堪える。それで合っているのか、不安げな表情を浮かべてチュイを見る。
「ライヤ様です」
「えっ?ライヤさんって宰相じゃないの?」
確かに、昨日はそう言われたはずだ。それとも別人なのだろうか?
「代々シャーズ家の嫡男が大神官の役を務めるんです。ライヤ様の場合は特例で、大伸官兼宰相の役目につかれています」
そう話すチュイの顔は輝いていて、純粋にライヤを尊敬していると分かる。
「それじゃあ、ライヤさんに会いに行けばいいんだね?」
「あ、そうじゃなくて。ライヤ様がいらっしゃるので」
あわあわと慌てて、ぶんぶんとチュイが首を横に振りながら言う。
「え?そうなんだ……なら部屋に居ればいいんだよね?」
「はい!あ、僕ったら。こんな所に立たせてしまって!」
にこっと笑ったと思えば、さぁっと顔を青くする。思わず小さな笑みを零して、花梨は部屋へ戻る。
ドアが閉まったのを確認すると、部屋を見渡してぐぐっと拳を握る。
「よし! この本をなるべく多く読むよ!」
部屋の隅には綺麗に並べられた本。ヴィラがパーティーで言っていたものだ。
本を見たときにミケがげんなりとした表情を見せたことは、あえて見なかったことにする。
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