【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス

文字の大きさ
31 / 51

31

しおりを挟む
 治癒の出張大サービス(花梨命名)をやり始めて一週間。

 花梨の想像通り、王都といえど病人は沢山居た。それを一人ずつ回って治していくのは、大変ながらも、ある意味充実した役目と花梨は思えていた。

「つ、疲れた」

 きっと今の自分は、疲れきったサラリーマンみたいに違いない! と心で思いながら、城内を重い足取りで歩いていく。

 顔元には白いヴェール。顔が見えないようにとライヤの配慮だ。

『最初より、体力出てきたです~』

 ミケは肩には乗らずに、花梨の足元を歩いてついてきている。猫一匹を肩に乗せるのは、疲れた状態ではかなり辛かったからだ。

「ん。確かに最初よりは治せる人数増えてきたからね」

 毎日治療に専念しているおかげで、体力がついたのは自覚していた。それと同時に、城内にいるからといってヴィラに会えるわけでもないことも分かった。

 話がしたくて、でもこの前のように仕事の途中に会いに行くのは気が引けて。時々ライヤにヴィラは今暇? と訊ねるのだが、そのたびににっこりと笑顔で無理だと言われるのだ。

「ねぇ。そういえば前の龍の娘に会うには、どうしたらいいと思う?」

 ふと足を止めて、ミケに訊ねた。

『会うには。そうですねー、やっぱりヴィラさんに聞くのが一番だと思うです!』

「だよね」

 はぁ、とため息をつくと、突然背中を叩かれた。気分は憂鬱。目線は足元のミケにだけ向けていて、後ろから近づく人には気がつかなかった。


「邪魔だ」

「なっ?! って、ゼフィルド。久しぶり」

 相変わらずの無表情で、ゼフィルドが立っていた。どうやら、道の真ん中で立ち止まっている花梨が邪魔だったよう。

「ねぇねぇ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「ことわ……何だ」

 断ると言う途中で、がしっと花梨はゼフィルドの手を掴んだ。それを見て、ゼフィルドは諦めたようだ。

「ヴィラっていつ休みあるか分かる?」

「王か?」

 ぴく、と片眉を上げて、どこか憮然とした表情を浮かべた。

「休みはないだろう」

「えっ?! 何で!」

「王に休みがあると思うか?」

 花梨が多少白熱して、声を大きくしてもゼフィルドはそのまま淡々とした声色だ。

「ん~。そっか。ありがとう」

 あからさまに肩を落とす花梨の様子に、ゼフィルドは浅くため息をついた。

「王に用でもあったのか」

「ちょっと聞きたいことがあって」

 その場に座り込んで、ミケの頭を何となくぐりぐりと撫でた。

 休みがないなら、ずっと会えないじゃないか。と心底落ち込んでいた。

「……王の職務に入ってるだろう」

「え?」

 ぱっと顔を上げて、首を傾げる。

「龍の娘と会うのが予定に入っているだろう」

「本当に?」

 ぱぁっと目に見えて表情を明るくした花梨に、ゼフィルドは何も言わずに頷いた。

「そっか。うん! そうだよね。だって私龍巫女様だし」

 冗談口調で言っても、勿論相手はゼフィルド。冷えた目線をくれるだけ。

『やっぱり、ゼフィルドさんは優しいです~』

 ミケが嬉しそうに、ぴょんとゼフィルドの肩に乗った。すりすりとそのまま頭を頬に擦り付けてくるミケに、ゼフィルドは追い払うことも出来ずに固まっている。

 強張った表情だが、花梨には困った表情に見える。

「よし! そうと決まれば、練習かな。もっともっと体力つけないと」

 ゼフィルドの肩から離れないミケを、自分の肩に乗せると足取り軽く歩き出した。

「それじゃあ、またね」

 ばいばい、と手を振れば、ゼフィルドは眉を寄せてひらひらと少し手を動かした。

 花梨は気がついていない。ヴィラとは一週間会っていないだけだが、ゼフィルドとの会話は、宴の時以来だということを……






「早い、な」

 花梨の背中が見えなくなった頃、小さくゼフィルドが呟いた。その表情は穏やかな物でもあり、どこか悲しげなものだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

処理中です...