【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス

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計10回。これはヴィラの部屋までに花梨がぶつかった回数。

 相手も相手で避ければいいのだが、龍の娘がふらふらと歩いていたら避けることも出来ないみたいだ。

(――考えながら歩ける人って器用だよね)

 鼻っ面を軽く撫でて、一つため息。
そろそろ考え事をしながら何かをする癖は、やめようと密かに誓う。

「ヴィラ、入るよ」

 軽くノックをして、そう言うが、何故か返事が帰ってこない。

 不在なのかな? と思いながらドアを開けてみれば、ベットの上にどっかりと座るヴィラの姿。
その横には、うとうととまどろむミケが居る。

『おかえりなさいです~』

 上機嫌で寄ってきたミケとは違い、ヴィラは憮然とした表情で花梨の方も見ない。

「怒ってる?」

 慌てて寄り、ヴィラの隣に腰を下ろす。
花梨が傍に寄るのが分かると、ヴィラは俯いた。

「ヴィラ?」

 反応のないヴィラに不安になった花梨は、ヴィラの顔を覗き込んだ。

「……どっち?」

 思わず言ってしまった言葉に、慌てて口を塞ぐ。

 花梨の反応も無理もなかった。
俯いたヴィラの表情は相変わらずの憮然としたものだが、顔は真っ赤。とにかく複雑そうな表情。

「え~と。ルーファの熱もう下がったよ」

「気にしてません」

 つん、というようにヴィラが言えば、少し花梨の瞳が潤んだ。

 悲しいわけではなく。怒ってるのか照れてるのか。よく分からない反応に困ってしまったのだ。
そんな花梨の考えなんて、ヴィラに分かるわけもなく。
花梨が泣き出しそう、という事実だけが分かり、ヴィラの表情がぴくっと引きつった。

「か、花梨。本当に気にしてませんから」

 完全に花梨の方を向いて、引きつった微笑を浮かべてヴィラが言った。

「そっか。良かった」

 にっこりと花梨が嬉しそうに笑みを浮かべれば、ほっとヴィラは胸を撫で下ろす。

『そうですー。ヴィラさんの場合は嫉妬です~』

「ミケ!」

「え?」

 ミケの言葉に、空気が固まる。

(――嫉妬ってあれだよね。ヤキモチとかそんなアレだよね。いやいや、えー!)

 パチパチと数度瞬きをして、そのまま花梨は俯いた。じわじわと気恥ずかしいような、嬉しいような感情がこみ上げてくる。

(――落ち着け、私。本人が言ったわけじゃないし。あ、あれだ子供がおもちゃを取られて、それ俺のなのにぃ。ってぷうって膨れるみたいな!そんな感じだ! 可愛いなぁじゃなくて!……なんだ、びっくりしたなぁ)

 勝手な結論にたどり着いた花梨は、ほっと息をついた。しかし、胸の動機はまだ落ち着かない。

 ぎゅっとベットのシーツを握って、意を決したように顔を上げた。

 ヴィラも同じタイミングで顔を上げ、同時に目が合う。に、にこ。と引きつった笑みを花梨が浮かべれば、ヴィラも同じような笑みを返してくる。

(――こ、これはまずい。別の話題を出さなきゃ。え~と)

「あ!」

 思わず大きな声を上げた花梨は、恥ずかしそうに頬を染めた後。わざとらしく咳をしてみせた。

「前の龍の娘の事なんだけど、一度会ってみたいな」

「前の、ですか?」

 ヴィラの言葉に神妙な表情で頷いてみせる。

「ちょうど良かった。実は来週までには来ると文が来ているんですよ」

「え? 本当?」

「えぇ」

 やった! とガッツポーズをとって、ヴィラに抱きついた。突然の行動に、ヴィラは身動きが出来ない。

「実は龍の娘で、ちょっと分からないこととか相談したかったんだ~。これで相談できる!」

「そ、そうですか」

 嬉しそうな花梨に対し、ヴィラは顔を真っ赤に染め上げて困ったように目を彷徨わせていた。

「どんな人かなぁ。あ~楽しみ」

 うずうずとする体を抑えられずに、花梨はそのまま突然立ち上がった。そのままくるっとヴィラの方を振り返ると、嬉しそうに微笑んだ。

「来たら教えてね」

「はい。勿論」

 ヴィラの顔が何故か真っ赤なことに、少し首を傾げるが今の上機嫌の花梨にとっては、あまり気にならなかった。
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