【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス

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 城内をうろうろと歩く花梨。兵士や侍女が訝しげな視線を向けているが気にしない。

「ねぇ。前の龍の娘っていつ来るのかなぁ」

 肩の上でもぐもぐと口を動かしているミケに、落ち着き無く訊ねた。何を食べているのか分からないが、良くミケは厨房の食べ物を貰って食べている。

「ご主人様そればっかりです~」

 呆れたように言われて、花梨は照れたように笑みを浮かべた。

「やっぱり気になっちゃって。来たら教えてくれるって分かってるけどね」

 初めて聖獣を呼んだ龍の娘。気にならないはずがない。来週来る、と言われてからまだ三日しか経っていないので、ミケが呆れるのもしょうがないのだが。

「前の聖獣っていったら、ミケと違って凄いよね」

 自分の右手人差し指を見て、うんうんと頷いた。

 花梨の指には、ペガサスが描かれた指輪が収まっている。王都へ来る途中に、ゼフィルドに買ってもらった物だ。

『失礼ですー。でも、エリィさんが凄いのは本当です』

 ぶぅと頬を膨らましたかと思えば、すぐに嬉しそうに笑みを浮かべる。

「エリィさんが好きなんだ?」

 少しのからかいを含めてそう訊ねると、ミケはにっこりした。

『勿論です! それにエリィさんは僕の先輩でもあるのです。好きにならないはずがないのです~』

 くねくねと体をくねらせて喜ぶミケに、花梨は手を掲げて待ったをかけた。

「エリィさんって性別はどっち?」

 花梨の言葉にミケは、気の抜けた鳴き声を返す。

「だから、性別は?」

『聖獣に性別はないですよ、ご主人様?』

「え? そうなの?」

 一般常識、とばかりに見つめてくるミケの視線に、花梨は思わず明後日の方向を向いた。

 その時、突然ミケが、んにゃ! と大きな声で鳴いた。

「ど、どうしたの?」

『エリィさんの気配がするのです! きっと龍の娘も一緒ですよ~』

 最後まで言い終わる前に、ミケは元の姿に戻った。

「え? 本当に? だって、予定はまだ先じゃ……」

『良いから、乗るのです!』

 急かされるままにミケの背中に乗れば、ミケが走り出した。

 その姿を目撃した侍女や兵士が、ぎょっとした表情を浮かべていたのを見て、花梨は心の中で、驚かせてごめんなさい! と謝った。

 ミケのスピードは凄く早く、喋れば舌を噛みそうだ。

(――ミ、ミケ。本気で走ってる!!)

 怖い、かなり本気で怖い。ぎゅっとミケの背の毛を掴んで、花梨は目を瞑った。






 走り出して5分ほど、花梨の体感時間では30分ほどで、ミケは足を止めた。

「ミ、ミケ。早すぎるよ」

 息も絶え絶えにそう言って、目を開けると予想もしない人物が目の前に立っていた。

 にっと笑みを浮かべて、その女性は花梨に向かって軽く手を上げて見せた。その後ろには、真っ白な翼を持つペガサス。

「久しぶりだね」

 女性、タグミは前と変わらぬ態度でそう言った。

「タ、タグミ?!」

 花梨が目も口も大きく開くと、タグミは花梨の表情を見て微かに笑った。

『エリィさんっ!』

『わわ、相変わらず落ち着きがないわね』

 タグミの後ろに居たペガサス、エリィへとミケが飛びつく。ごろにゃん、と甘える姿は本物の猫より猫らしい。それを穏やかな表情で受け入れるエリィは、心が優しいことが伺える。

「何でタグミが居るの!?」

「お、言葉が上手になったじゃないか」

 ポンポン、と肩を叩いて言われた言葉に、とりあえず素直に頷く。

「まぁ、私が居る理由は簡単さ。なぁ、エリィ?」

 くるっと振り向いて、エリィの首元を軽く叩く。

『えぇ。それにしても。タグミったら本当に花梨さんに何も言ってなかったなんて』

 呆れたようにため息をつくエリィに、タグミはにっと笑う。

「驚く姿を見るのは、楽しいじゃないか」

「タ、タグミ。もしかして、前の龍の娘だったりする?」

 話の流れから混乱する頭を必死で使って、はじき出した答え。

「そうなるさね」

「えぇー! だって、年齢おかしいよ。タグミって30代でしょ?」

「それは見た目で勝手に花梨が判断しただけさ。それより、早くヴィラ坊に会いに行かないとねぇ」

 混乱する花梨に、少し困ったような表情を浮かべてそう言う。

「あ、私も着いてく」

 歩き出したタグミの後ろを慌てて追う。

(――タグミの年っていくつなんだろう? ヴィラのおじいさんの時の龍の娘だし)

 ぐるぐると考え事が頭を回る。うんうん唸って歩いていたら、ガツっと頭が柱にぶつかった。

「ったい!」

 ほんのりと赤くなった額を押さえようと手を伸ばすと、それよりも先に暖かい手が花梨の額に触れた。

「全く、その辺は成長してないね」

 呆れたように笑うタグミに、うっと花梨は押し黙った。そのままぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。

 そのタグミの行動に、ほっと花梨は胸を撫で下ろした。

 龍の娘だとしても、タグミはタグミなんだ。とある意味当たり前のことを考えてタグミににこっと笑みを向けた。
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