41 / 51
41
しおりを挟む
真っ直ぐ、ヴィラの部屋まで走る。この姿をライヤに見られたら怒られそうだ。龍巫女らしく、と言うライヤの姿が、花梨の頭には容易に浮かんだ。それでも、けしかけたのはライヤのようなものだから、花梨は気にしない。
「イガーに行かなきゃ」
口から漏れた言葉に、花梨はぎゅっと唇を結んだ。
つくほうが決まった。と言うことは、戦争が始まるということ。それならば、より好戦的なイガーへ行き、ぎりぎりまで説得を試みたかったのだ。
(――上手くいくか分からないけど……ヴィラ許可くれるかな)
意外と心配性なヴィラに、花梨の頬が少しだけ緩む。
「おい」
「なっ。わ」
ドン、と頭からぶつかり、花梨は慌てて頭を下げた。
「ごめんね。ちょっと急いでるから」
走り出した花梨の手が、強く掴まれる。
「何?! って、ゼフィルド?」
「今更気がついたのか」
呆れるようなゼフィルドに、花梨は足を止める。
走っていたのを、突然止めたために、心臓が激しく動機を刻んだ。
「ちょ、ごめんね。ヴィラに相談があって」
余裕のない表情の花梨の額を、ゼフィルドが指で押した。
「わわっ」
人差し指とはいえ、結構な力で押されて、花梨はよろっと体勢を崩した。
「深呼吸してみろ。まずは、落ち着け」
「え? あ、うん」
言われたとおりに、ゆっくりと深呼吸をする。
こんな事してる場合じゃない、と頭のどこかで思うの。でも、それよりも、体の方が勝手に反応した。
「何だか分からんが、そんな様子ではまともな話も出来んだろう」
ポンポン、と肩を叩かれて、花梨は少し唖然とした後で、にこっと笑った。
「うん! ありがとう」
「あぁ……行け」
ばしっと背中を押されて、花梨はそのまま歩き出した。先ほどとは違い、自分を落ち着かせるためになるべくゆっくりと。
『ご主人様~』
「ん? って、わぁ!」
上から振ってきたミケを、慌てて両手でキャッチ。そのままミケが擦り寄ってきた。微かに甘い匂いがすることから、厨房に今まで居たのだろう。
花梨は、くるっと振り返ると、笑顔でゼフィルドに手を振った。ゼフィルドは表情を変えずに、片手を軽く花梨に向かってあげた。その様子を見ると、花梨は少し微笑んでミケを床に下ろした。
『どこに行くんですかー?』
「うん、ちょっとヴィラのところにね。急いでるんだ」
そう言って歩き出そうとした花梨、しかし体がふわりと浮いた。
『急いでるなら、僕に任せるですー』
「え? ま、ちょ、ちょっと!」
走り出したミケに、花梨は慌ててしがみつく。
『最近食べてばっかりで、運動不足でしたから、ちょうどいいです~』
(――それが本音か!)
ミケの言葉に、ツッコムことも出来ずに花梨は黙ってしがみついた。
部屋についたときには、花梨はぐったり。その様子を見て、慌てたのはヴィラだ。
「か、花梨? まさか! 怪我を……」
ぐったりしているところから、そう思ったのだろう。ヴィラの表情が心配の色に曇る。
「あ~、そうじゃないから、大丈夫」
片手で頭を抑えて、ミケの上から降りる
「ちょっとヴィラに相談事があってね」
ふらふらと頼りない足取りで、花梨はベットに腰掛ける。
「相談事?」
首を傾げながらも、ヴィラも花梨の隣に腰掛けた。
「つくほうが決まったって、ライヤから聞いたんだけど」
花梨の言葉に、ヴィラの表情が変わった。あぁ、これが王としてのヴィラーネルトの顔なんだなぁ、と花梨は思う。
「それで?」
「うん。それでね、私イガーの方に説得をしてみたいんだよ。だからほんの少し時間をもらえないかな?私が説得できなかったら、そのままつきたいほうについてくれても良いから」
「駄目です」
即答されて、花梨はぎょっと目を開いた。
「ど、どうしても?」
「まぁ、冗談ですけどね。どうせ止めても行くんでしょうし」
あ、拗ねてる。と思い、花梨の表情が自然と緩んだ。
「行くよ。だって決めたもの」
「それって、相談事って言いますか?」
「あ、言わないかもね」
そう言って花梨が笑い声を上げると、ヴィラはガックリと肩をおろした。
「それに、止める云々の問題ではなく、実はルファムア殿が正式に花梨をイガーへ招くことを要請してきたんです」
「ルーファが?」
愛称で呼べば、ぴくっとヴィラの片眉が持ち上がる。
「……なので、スムーズにイガーへは行けるでしょうね。でも、ルファムア殿には、説得するとは言わないでください。この時期に花梨が説得しに行くなんて王族がつくほうを決めた事を、告げるような事ですから」
「うん。それは大丈夫だよ。黙っておくから」
あ~、良かった。と言って花梨はそのままベットに倒れこんだ。
「でも、心配ですね」
はぁ、とため息交じりに言うヴィラの目は真剣その物。
「大丈夫だよ。私だって子供じゃないし」
「分かってますよ。寧ろだからこそ心配なんです」
ヴィラの言葉に、花梨は意味が分からず怪訝そうな表情を浮かべた。
「二つ約束してください。一つ、無理は絶対にしないこと。二つ、何があってもここへ帰ってくること、ルファムア殿に止められてもです」
花梨の方を振り向いて、しっかりと両手を握るヴィラ。
「え、と」
「約束出来ますね?」
じっと空色の瞳に見つめられて、花梨はこっくりとほぼ無意識のうちに頷いた。
「約束ですよ?」
ちゅ、と自然な動作で額に唇を落とされて、花梨は目を見開いてそのまま固まった。
「それでは、私はライヤに用事があるので」
花梨の頭を一撫でして、ヴィラはそのまま部屋を出た。ヴィラの首筋が、真っ赤に染まっていたのは、ミケしか見ていない。
ぼっと花梨の頬が真っ赤に染まり、火照った頬に両手をあてた。
「イガーに行かなきゃ」
口から漏れた言葉に、花梨はぎゅっと唇を結んだ。
つくほうが決まった。と言うことは、戦争が始まるということ。それならば、より好戦的なイガーへ行き、ぎりぎりまで説得を試みたかったのだ。
(――上手くいくか分からないけど……ヴィラ許可くれるかな)
意外と心配性なヴィラに、花梨の頬が少しだけ緩む。
「おい」
「なっ。わ」
ドン、と頭からぶつかり、花梨は慌てて頭を下げた。
「ごめんね。ちょっと急いでるから」
走り出した花梨の手が、強く掴まれる。
「何?! って、ゼフィルド?」
「今更気がついたのか」
呆れるようなゼフィルドに、花梨は足を止める。
走っていたのを、突然止めたために、心臓が激しく動機を刻んだ。
「ちょ、ごめんね。ヴィラに相談があって」
余裕のない表情の花梨の額を、ゼフィルドが指で押した。
「わわっ」
人差し指とはいえ、結構な力で押されて、花梨はよろっと体勢を崩した。
「深呼吸してみろ。まずは、落ち着け」
「え? あ、うん」
言われたとおりに、ゆっくりと深呼吸をする。
こんな事してる場合じゃない、と頭のどこかで思うの。でも、それよりも、体の方が勝手に反応した。
「何だか分からんが、そんな様子ではまともな話も出来んだろう」
ポンポン、と肩を叩かれて、花梨は少し唖然とした後で、にこっと笑った。
「うん! ありがとう」
「あぁ……行け」
ばしっと背中を押されて、花梨はそのまま歩き出した。先ほどとは違い、自分を落ち着かせるためになるべくゆっくりと。
『ご主人様~』
「ん? って、わぁ!」
上から振ってきたミケを、慌てて両手でキャッチ。そのままミケが擦り寄ってきた。微かに甘い匂いがすることから、厨房に今まで居たのだろう。
花梨は、くるっと振り返ると、笑顔でゼフィルドに手を振った。ゼフィルドは表情を変えずに、片手を軽く花梨に向かってあげた。その様子を見ると、花梨は少し微笑んでミケを床に下ろした。
『どこに行くんですかー?』
「うん、ちょっとヴィラのところにね。急いでるんだ」
そう言って歩き出そうとした花梨、しかし体がふわりと浮いた。
『急いでるなら、僕に任せるですー』
「え? ま、ちょ、ちょっと!」
走り出したミケに、花梨は慌ててしがみつく。
『最近食べてばっかりで、運動不足でしたから、ちょうどいいです~』
(――それが本音か!)
ミケの言葉に、ツッコムことも出来ずに花梨は黙ってしがみついた。
部屋についたときには、花梨はぐったり。その様子を見て、慌てたのはヴィラだ。
「か、花梨? まさか! 怪我を……」
ぐったりしているところから、そう思ったのだろう。ヴィラの表情が心配の色に曇る。
「あ~、そうじゃないから、大丈夫」
片手で頭を抑えて、ミケの上から降りる
「ちょっとヴィラに相談事があってね」
ふらふらと頼りない足取りで、花梨はベットに腰掛ける。
「相談事?」
首を傾げながらも、ヴィラも花梨の隣に腰掛けた。
「つくほうが決まったって、ライヤから聞いたんだけど」
花梨の言葉に、ヴィラの表情が変わった。あぁ、これが王としてのヴィラーネルトの顔なんだなぁ、と花梨は思う。
「それで?」
「うん。それでね、私イガーの方に説得をしてみたいんだよ。だからほんの少し時間をもらえないかな?私が説得できなかったら、そのままつきたいほうについてくれても良いから」
「駄目です」
即答されて、花梨はぎょっと目を開いた。
「ど、どうしても?」
「まぁ、冗談ですけどね。どうせ止めても行くんでしょうし」
あ、拗ねてる。と思い、花梨の表情が自然と緩んだ。
「行くよ。だって決めたもの」
「それって、相談事って言いますか?」
「あ、言わないかもね」
そう言って花梨が笑い声を上げると、ヴィラはガックリと肩をおろした。
「それに、止める云々の問題ではなく、実はルファムア殿が正式に花梨をイガーへ招くことを要請してきたんです」
「ルーファが?」
愛称で呼べば、ぴくっとヴィラの片眉が持ち上がる。
「……なので、スムーズにイガーへは行けるでしょうね。でも、ルファムア殿には、説得するとは言わないでください。この時期に花梨が説得しに行くなんて王族がつくほうを決めた事を、告げるような事ですから」
「うん。それは大丈夫だよ。黙っておくから」
あ~、良かった。と言って花梨はそのままベットに倒れこんだ。
「でも、心配ですね」
はぁ、とため息交じりに言うヴィラの目は真剣その物。
「大丈夫だよ。私だって子供じゃないし」
「分かってますよ。寧ろだからこそ心配なんです」
ヴィラの言葉に、花梨は意味が分からず怪訝そうな表情を浮かべた。
「二つ約束してください。一つ、無理は絶対にしないこと。二つ、何があってもここへ帰ってくること、ルファムア殿に止められてもです」
花梨の方を振り向いて、しっかりと両手を握るヴィラ。
「え、と」
「約束出来ますね?」
じっと空色の瞳に見つめられて、花梨はこっくりとほぼ無意識のうちに頷いた。
「約束ですよ?」
ちゅ、と自然な動作で額に唇を落とされて、花梨は目を見開いてそのまま固まった。
「それでは、私はライヤに用事があるので」
花梨の頭を一撫でして、ヴィラはそのまま部屋を出た。ヴィラの首筋が、真っ赤に染まっていたのは、ミケしか見ていない。
ぼっと花梨の頬が真っ赤に染まり、火照った頬に両手をあてた。
2
あなたにおすすめの小説
異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。
和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……?
しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし!
危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。
彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。
頼む騎士様、どうか私を保護してください!
あれ、でもこの人なんか怖くない?
心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……?
どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ!
人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける!
……うん、詰んだ。
★「小説家になろう」先行投稿中です★
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる