【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス

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 真っ直ぐ、ヴィラの部屋まで走る。この姿をライヤに見られたら怒られそうだ。龍巫女らしく、と言うライヤの姿が、花梨の頭には容易に浮かんだ。それでも、けしかけたのはライヤのようなものだから、花梨は気にしない。

「イガーに行かなきゃ」

 口から漏れた言葉に、花梨はぎゅっと唇を結んだ。

 つくほうが決まった。と言うことは、戦争が始まるということ。それならば、より好戦的なイガーへ行き、ぎりぎりまで説得を試みたかったのだ。

(――上手くいくか分からないけど……ヴィラ許可くれるかな)

 意外と心配性なヴィラに、花梨の頬が少しだけ緩む。

「おい」

「なっ。わ」

 ドン、と頭からぶつかり、花梨は慌てて頭を下げた。

「ごめんね。ちょっと急いでるから」

 走り出した花梨の手が、強く掴まれる。

「何?! って、ゼフィルド?」

「今更気がついたのか」

 呆れるようなゼフィルドに、花梨は足を止める。

 走っていたのを、突然止めたために、心臓が激しく動機を刻んだ。

「ちょ、ごめんね。ヴィラに相談があって」

 余裕のない表情の花梨の額を、ゼフィルドが指で押した。

「わわっ」

 人差し指とはいえ、結構な力で押されて、花梨はよろっと体勢を崩した。

「深呼吸してみろ。まずは、落ち着け」

「え? あ、うん」

 言われたとおりに、ゆっくりと深呼吸をする。

 こんな事してる場合じゃない、と頭のどこかで思うの。でも、それよりも、体の方が勝手に反応した。

「何だか分からんが、そんな様子ではまともな話も出来んだろう」

 ポンポン、と肩を叩かれて、花梨は少し唖然とした後で、にこっと笑った。

「うん! ありがとう」

「あぁ……行け」

 ばしっと背中を押されて、花梨はそのまま歩き出した。先ほどとは違い、自分を落ち着かせるためになるべくゆっくりと。

『ご主人様~』

「ん? って、わぁ!」

 上から振ってきたミケを、慌てて両手でキャッチ。そのままミケが擦り寄ってきた。微かに甘い匂いがすることから、厨房に今まで居たのだろう。

 花梨は、くるっと振り返ると、笑顔でゼフィルドに手を振った。ゼフィルドは表情を変えずに、片手を軽く花梨に向かってあげた。その様子を見ると、花梨は少し微笑んでミケを床に下ろした。

『どこに行くんですかー?』

「うん、ちょっとヴィラのところにね。急いでるんだ」

 そう言って歩き出そうとした花梨、しかし体がふわりと浮いた。

『急いでるなら、僕に任せるですー』

「え? ま、ちょ、ちょっと!」

 走り出したミケに、花梨は慌ててしがみつく。

『最近食べてばっかりで、運動不足でしたから、ちょうどいいです~』

(――それが本音か!)

 ミケの言葉に、ツッコムことも出来ずに花梨は黙ってしがみついた。













 部屋についたときには、花梨はぐったり。その様子を見て、慌てたのはヴィラだ。

「か、花梨? まさか! 怪我を……」

 ぐったりしているところから、そう思ったのだろう。ヴィラの表情が心配の色に曇る。

「あ~、そうじゃないから、大丈夫」

 片手で頭を抑えて、ミケの上から降りる

「ちょっとヴィラに相談事があってね」

 ふらふらと頼りない足取りで、花梨はベットに腰掛ける。

「相談事?」

 首を傾げながらも、ヴィラも花梨の隣に腰掛けた。

「つくほうが決まったって、ライヤから聞いたんだけど」

 花梨の言葉に、ヴィラの表情が変わった。あぁ、これが王としてのヴィラーネルトの顔なんだなぁ、と花梨は思う。

「それで?」

「うん。それでね、私イガーの方に説得をしてみたいんだよ。だからほんの少し時間をもらえないかな?私が説得できなかったら、そのままつきたいほうについてくれても良いから」

「駄目です」

 即答されて、花梨はぎょっと目を開いた。

「ど、どうしても?」

「まぁ、冗談ですけどね。どうせ止めても行くんでしょうし」

 あ、拗ねてる。と思い、花梨の表情が自然と緩んだ。

「行くよ。だって決めたもの」

「それって、相談事って言いますか?」

「あ、言わないかもね」

 そう言って花梨が笑い声を上げると、ヴィラはガックリと肩をおろした。

「それに、止める云々の問題ではなく、実はルファムア殿が正式に花梨をイガーへ招くことを要請してきたんです」

「ルーファが?」

 愛称で呼べば、ぴくっとヴィラの片眉が持ち上がる。

「……なので、スムーズにイガーへは行けるでしょうね。でも、ルファムア殿には、説得するとは言わないでください。この時期に花梨が説得しに行くなんて王族がつくほうを決めた事を、告げるような事ですから」

「うん。それは大丈夫だよ。黙っておくから」

 あ~、良かった。と言って花梨はそのままベットに倒れこんだ。

「でも、心配ですね」

 はぁ、とため息交じりに言うヴィラの目は真剣その物。

「大丈夫だよ。私だって子供じゃないし」

「分かってますよ。寧ろだからこそ心配なんです」

 ヴィラの言葉に、花梨は意味が分からず怪訝そうな表情を浮かべた。

「二つ約束してください。一つ、無理は絶対にしないこと。二つ、何があってもここへ帰ってくること、ルファムア殿に止められてもです」

 花梨の方を振り向いて、しっかりと両手を握るヴィラ。

「え、と」

「約束出来ますね?」

 じっと空色の瞳に見つめられて、花梨はこっくりとほぼ無意識のうちに頷いた。

「約束ですよ?」

 ちゅ、と自然な動作で額に唇を落とされて、花梨は目を見開いてそのまま固まった。

「それでは、私はライヤに用事があるので」

 花梨の頭を一撫でして、ヴィラはそのまま部屋を出た。ヴィラの首筋が、真っ赤に染まっていたのは、ミケしか見ていない。

 ぼっと花梨の頬が真っ赤に染まり、火照った頬に両手をあてた。
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