【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス

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「ミケ、また何処に行ってるんだか」

 姿の見えない聖獣に、花梨は困ったように呟いた。

 聖獣はご主人様に付き添うのが普通です! と言うくせにミケは、よく花梨の前から姿を消す。大抵は厨房や食べ物のある場所にいるのだが。

「また厨房かなぁ。まったくもう」

 ぶつぶつと呟き、下を向いて歩く。

「龍巫女様、ちょっと良いでしょうか?」

「へ? わ、へぶっ」

 声に体が反応できず、そのまま顔面から誰かにぶつかった。

「ごめん、えっと。ライヤ」

 顔を上げれば、楽しげに口元に笑みを浮かべるライヤが立っていた。

「少し、ここでは出来ぬ話ですので」

 ライヤに案内されるままに、一つの部屋に入る。

 その部屋は良い意味で質素だ。使っている人の感性が良く出ている。

「ここは?」

「私の部屋ですよ。ここに座ってください」

 ライヤの部屋か、と妙に花梨は納得した。
差し出された椅子に腰掛けて、ライヤに向き直る。

「えっと、どうしたの?」

「実は、二つほど花梨に話がありまして」

 真剣な表情のライヤに、花梨の表情も自然と引き締まる。一体なんの話なのか、花梨には検討もつかない。

「まずは、ネルの事です。ドヒュル殿を覚えていますね?」

「うん。ヴィラのお兄さんでしょ?」

 花梨の言葉に、ライヤは満足そうに微笑した。

「えぇ。ネルには敵が多いのですよ。ドヒュル殿だけじゃありません」

「何で? だって、皆のこと良く考えてるのに」

 ライヤの言った事に、花梨が眉を顰めた。

「ネルに兄上が居たのも知ってますね? その方が本来の第一王位継承者でした。能力も、家柄も。全てが王にふさわしく、誰もがその方が王になると信じて疑いませんでしたよ。

 逆に、正室により生まれた次男にも関わらず、ネルは全く期待はされていませんでした。青色の目を持って生まれたため、寧ろ、疎まれて育ったんですよ」

 一呼吸置いて、ライヤが悲しげな表情を浮かべた。

「お兄さんが亡くなって、ヴィラはすぐに第一継承者になれたの?」

「えぇ。ネルの場合も青の目以外は完璧と言われましたから。ただ、困ったのは王族や重臣達です。ネルではなく、兄の方へ媚っていました。そして、ネル前で堂々と仕事をやらなかったり……ネルは王位についてすぐしたのが、そうした地位だけを持つ者の排除でしたよ」

 くっと、ライヤの口元が皮肉気に歪む。

「それで、恨まれてるの?」

 納得できない! と花梨の表情が、ライヤに訴えかける。

「えぇ。まぁ、私も影ながら排除してますけどね」

 突然表情を変えて、ばちっとライヤがウィンクをした。

「えっ」

「私は、稀に見る最高の宰相ですよ? そんな人間をどうにかする事なんて、たやすいことです。さて、と。何故花梨にこんな話をしたかというと……」

「言うと?」

 にぃっとライヤが猫のように笑う。

「花梨がネルと一生居ると思ったからです」

「私が?」

「そうですよ。まぁ、それがどういう形かは花梨次第ですけどね」

 ふふっと笑うライヤに、花梨も少し微笑した。

「話は終わり?」

「えぇ。もうこれで終わりです」

 ライヤの言葉に、花梨はミケを探すために部屋から一歩出る。しかし、違和感を感じて振り向いた。

「最初に、二つって言ってなかったっけ?」

 そう花梨が言えば、わざとらしくライヤはぽんっと手を叩いた。

「そうそう。つくほうが決まりそうですよ?」

「つくほう?」

「えぇ。王族がつくほうが、もう決まりそうです」

「そ、それって。忘れるのおかしくない?」

 ひくっと口元が引きつるのが分かる。そんな花梨に比べて、ライヤはのほほんと笑うだけ。

「ちょっと、ヴィラに相談してくるね! それじゃあ」

 走り出した花梨は、部屋のドアを閉めるのも忘れていった。



「真っ先に頼るのが、ネルねぇ……これは花梨がネルに嫁ぐ日も遠くはなさそうですね」

 ふふ、と笑うと、ライヤはドアをゆっくり閉めた。

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