46 / 51
46
しおりを挟む
「やぁ、花梨」
ひらひらと手を振ってみせ、微笑するルーファに、花梨は何も言えずに立ち尽くす。しかしテーブルの上の、ミケが入れられている檻を見ると表情を変えた。
「ルーファ、ミケを返して」
睨み付けてそう言えば、ルーファがすっと立ち上がった。
「ん~。そんな事をしたら、花梨は僕をどうする?」
近づいてくるルーファに、花梨は視線を外せない。
「どうするって、別に。どうもしないよ」
「へぇ、閉じ込めた相手に、何もやらないんだ?」
嘲笑的な笑みを浮かべて、ルーファが馬鹿にするように言った。
「当たり前だよ。それどころじゃないし。今は戦争を止めるのが一番」
花梨の目の前まで近づいたルーファは、ぐいっと花梨の手を掴んだ。
『ご主人様!』
檻の中で、ミケが悲痛な声をあげた。
どんっとそのまま花梨は、壁に押さえつけられる。
「とにかく! ミケを放して。戦争はもう始まっちゃってるんだから!」
「……君さぁ。今の状況わかってる?」
バタバタと暴れ始めた花梨に、呆れたようにルーファがため息を吐いた。
「分かってる! だから、戦争が」
「そうじゃなくて、さ。今の状況」
ぐいっと目の前にルーファの顔が迫り、花梨はパチパチと数度瞬きをした。その色気の無い反応に、再びルーファはため息。
「もういいよ。でも、ミケは檻から出さない」
「なんでっ!」
ルーファは花梨に冷えた目線を送る。
「僕はね、ヴィラーネルト王が好きじゃないんだ。だからだよ」
「それとこれとは、全然関係ないよ!」
「関係無くないね。君だって王のために戦争を止めるんだろう?」
「何言ってるの? 私は、自分が大事だから戦争止めるの!」
胸を張って花梨が言えば、予想外の言葉にルーファが固まる。
「止められるかもしれないのに、止められなかったら。私が絶対後悔するから」
「……そう。やっぱり花梨は馬鹿だね」
どこか吹っ切れたようにルーファが呟いて、花梨の腕から手を放した。
「早く行きなよ」
「え? 良いの?」
ルーファから鍵を渡されて、花梨は確かめるようにそう訊ねた。
「まぁね。僕がやるべきことは他にあるから」
「は?」
「気にしないでよ。それより早く出したらどう?」
くいくい、と指でミケの入った檻を指す。
「あ、そうだ。ミケ」
花梨が慌てて檻の鍵を開けると、ミケが嬉しそうに花梨に擦り寄った。
『ご主人様、無事でよかったです~』
「うん、ミケも良かった」
少し微笑んで、ミケの頭をぐりぐりと撫でる。
「ま、今行けば戦争はまだ止まると思うよ」
いつのまにか、椅子に腰を下ろしたルーファが言った。
「でも、良かったの? 私逃がしちゃって。ほら、マイヤさんに怒られるとか」
おずおずとそう訊ねると、ルーファがにやっと笑った。
「捕まえて欲しいなら、鎖で繋いで牢へ入れてあげようか?」
「け、結構です」
「冗談だよ、半分ね」
引きつった笑みを浮かべる花梨の様子に、ルーファが満足そうに笑みを浮かべた。
『ご主人様、急がないと駄目ですー!』
元の姿に戻って、ミケが花梨を急かすように鳴く。
「あ、そっか。それじゃあね、ルーファ」
「ん。早く行きなよ」
ミケの背に乗ると、花梨はルーファの方を振り向いた。
「平和になったら、また遊びに来てね。あ、それともこっちからここに来ようかな」
「いいから、さっさと行ったらどう?」
軽く花梨の背中を叩いて、ルーファは呆れ果てた様子。
「それじゃあ、ミケ急いで。しがみついてるから、最高の速度でお願い」
『了解です!』
開いた窓から雨が、ぴちゃんと花梨の頬を濡らした。
「雨か……こんな時に青空でも出てれば、やる気も出るのに」
小さく呟いて、花梨は一つ深呼吸をした。パン、と軽くミケの肩を叩くと、それを合図としてミケが窓から飛び出した。
「思ったよりも、花梨に僕は執着してるみたいだ……まぁ、それよりも、やるべきことが僕にはあるからね。花梨には構っていられない」
花梨が出て行った窓を閉めて、ルーファは自嘲するように呟いた。
ひらひらと手を振ってみせ、微笑するルーファに、花梨は何も言えずに立ち尽くす。しかしテーブルの上の、ミケが入れられている檻を見ると表情を変えた。
「ルーファ、ミケを返して」
睨み付けてそう言えば、ルーファがすっと立ち上がった。
「ん~。そんな事をしたら、花梨は僕をどうする?」
近づいてくるルーファに、花梨は視線を外せない。
「どうするって、別に。どうもしないよ」
「へぇ、閉じ込めた相手に、何もやらないんだ?」
嘲笑的な笑みを浮かべて、ルーファが馬鹿にするように言った。
「当たり前だよ。それどころじゃないし。今は戦争を止めるのが一番」
花梨の目の前まで近づいたルーファは、ぐいっと花梨の手を掴んだ。
『ご主人様!』
檻の中で、ミケが悲痛な声をあげた。
どんっとそのまま花梨は、壁に押さえつけられる。
「とにかく! ミケを放して。戦争はもう始まっちゃってるんだから!」
「……君さぁ。今の状況わかってる?」
バタバタと暴れ始めた花梨に、呆れたようにルーファがため息を吐いた。
「分かってる! だから、戦争が」
「そうじゃなくて、さ。今の状況」
ぐいっと目の前にルーファの顔が迫り、花梨はパチパチと数度瞬きをした。その色気の無い反応に、再びルーファはため息。
「もういいよ。でも、ミケは檻から出さない」
「なんでっ!」
ルーファは花梨に冷えた目線を送る。
「僕はね、ヴィラーネルト王が好きじゃないんだ。だからだよ」
「それとこれとは、全然関係ないよ!」
「関係無くないね。君だって王のために戦争を止めるんだろう?」
「何言ってるの? 私は、自分が大事だから戦争止めるの!」
胸を張って花梨が言えば、予想外の言葉にルーファが固まる。
「止められるかもしれないのに、止められなかったら。私が絶対後悔するから」
「……そう。やっぱり花梨は馬鹿だね」
どこか吹っ切れたようにルーファが呟いて、花梨の腕から手を放した。
「早く行きなよ」
「え? 良いの?」
ルーファから鍵を渡されて、花梨は確かめるようにそう訊ねた。
「まぁね。僕がやるべきことは他にあるから」
「は?」
「気にしないでよ。それより早く出したらどう?」
くいくい、と指でミケの入った檻を指す。
「あ、そうだ。ミケ」
花梨が慌てて檻の鍵を開けると、ミケが嬉しそうに花梨に擦り寄った。
『ご主人様、無事でよかったです~』
「うん、ミケも良かった」
少し微笑んで、ミケの頭をぐりぐりと撫でる。
「ま、今行けば戦争はまだ止まると思うよ」
いつのまにか、椅子に腰を下ろしたルーファが言った。
「でも、良かったの? 私逃がしちゃって。ほら、マイヤさんに怒られるとか」
おずおずとそう訊ねると、ルーファがにやっと笑った。
「捕まえて欲しいなら、鎖で繋いで牢へ入れてあげようか?」
「け、結構です」
「冗談だよ、半分ね」
引きつった笑みを浮かべる花梨の様子に、ルーファが満足そうに笑みを浮かべた。
『ご主人様、急がないと駄目ですー!』
元の姿に戻って、ミケが花梨を急かすように鳴く。
「あ、そっか。それじゃあね、ルーファ」
「ん。早く行きなよ」
ミケの背に乗ると、花梨はルーファの方を振り向いた。
「平和になったら、また遊びに来てね。あ、それともこっちからここに来ようかな」
「いいから、さっさと行ったらどう?」
軽く花梨の背中を叩いて、ルーファは呆れ果てた様子。
「それじゃあ、ミケ急いで。しがみついてるから、最高の速度でお願い」
『了解です!』
開いた窓から雨が、ぴちゃんと花梨の頬を濡らした。
「雨か……こんな時に青空でも出てれば、やる気も出るのに」
小さく呟いて、花梨は一つ深呼吸をした。パン、と軽くミケの肩を叩くと、それを合図としてミケが窓から飛び出した。
「思ったよりも、花梨に僕は執着してるみたいだ……まぁ、それよりも、やるべきことが僕にはあるからね。花梨には構っていられない」
花梨が出て行った窓を閉めて、ルーファは自嘲するように呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。
和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……?
しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし!
危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。
彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。
頼む騎士様、どうか私を保護してください!
あれ、でもこの人なんか怖くない?
心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……?
どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ!
人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける!
……うん、詰んだ。
★「小説家になろう」先行投稿中です★
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる