【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス

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 賑やかな部屋から抜け出して、廊下を二人で歩く。ヴィラは入る部屋を探しているようで、それも中々見つからない様子。

 結局二人の入った部屋は、ヴィラの私室だった。

「抜けてきて良かったの?」

 伺うように花梨が訊ねれば、ヴィラは苦笑した。

「私が居なくても、ライヤが何とでもしますよ」

 ふぅん、と相槌を打ちながら、花梨はベットの上に座った。椅子はあるにはあるが、書類などで埋まっており座れる状態ではなかった。

「えぇと。話って?」

 首を傾げて訊ねれば、ヴィラが花梨の隣に腰を下ろす。

「そうですね……」

 緊張した面持ちで花梨の顔を見てから、今気がついたかのように少し笑ってみせた。

「花梨、綺麗ですね。ドレスが似合っています」

 ふっと笑って、自然に言ったヴィラに、パチパチと数度瞬きをする。嬉しさや照れよりも、ヴィラがそんなことを言った事に対しての驚きの方が大きい

 しかし少しすると、花梨は頬を薄っすらと染めた。

(――何か、違うよ~)

 変な雰囲気だ、と花梨は内心で冷や汗をかく思いだった。恋愛事に関わったことがないから、乙女のように恥らったり、喜んだりと心はついていかない様子。

「花梨」

 名を呼んで、そっと花梨の頬にヴィラが触れた。

「ヴィ、ヴィラ?」

 戸惑ったように言えば、ヴィラが緊張した顔に微笑を浮かべた。

「伝えたいことがあるんです。それはとても大事な事で……聞いてもらえますか?」

 しっとりとした声に、花梨はこくこくと頷く事しかできない。

「好きです、いえ。愛しています」

「愛し?」

 頭に言葉が追いつかずに、オウム返しをしてしまい、花梨は頬を真っ赤に染めた。

 そんな花梨に対して、ヴィラの表情は真剣そのもので、花梨は思わず見とれてしまった。

「これでも、私にしてみれば七年越しの片思いなんですよ?」

 ふっと何かを思い出すように、ヴィラが少し笑う。

「そういえば、最初にあったときは、ヴィラまだ子供だったもんね」

「えぇ。花梨にしてみれば、最近まで私は子供扱いでしたけれど」

 少し拗ねたように言うヴィラに、花梨が何とも言えずに誤魔化すように笑った。

「戸惑うとは思ってます。花梨は何も気にせずに、ただ正直な気持ちを聞かせてください」

 そう言うとヴィラは立ち上がり、そのままドアの前まで歩く。

「え、ちょっと待って! その……何時までに言えば良いかな?」

「いつでも、花梨の気持ちが決まるまでは、いつでも私は待ちますよ」

 微笑を浮かべてそう言うと、ヴィラはそのまま部屋から出て行った。

 ヴィラが部屋から出て行って、花梨は自分の頬の熱を確かめるように両手を当てた。

(――あれって告白だよね。ヴィラが、私に)

 キャーと叫んで、ベットの上を転げまわりたい衝動に駆られる。

 頬の熱は収まらず、心臓も未だ忙しく動き続けている。

「どーしよ、どーしよっ」

「龍巫女様、居ますか?」

「ひひゃぁい!」

 突然聞こえたチュイの声に、思わず奇声のような声が出る。それを返事と受け取ったのか、チュイがドアを開けた。

「一応、戻っていただかないと困ります」

 八の字に眉を下げて、チュイが情けなそうに言った。

「あ、ごめんね。すぐに行くよ」

 気を取り直すように頬を軽く叩くと、花梨は立ち上がってチュイの元へ歩み寄る。

「ん? 花梨じゃないか」

「あ、ルーファ」

 どうやら部屋に戻る途中らしいルーファが、花梨に向かってにっこりと笑みを向けた。

「王様と何か話でもしてたのかな?」

 王様、という言葉に妙に棘を花梨は感じる。

「うん、まぁね」

 ぼっと正直な花梨の顔は、真っ赤に染まる。それを見てルーファは不快そうに眉を顰めた。

「全てが解決したころに、結婚してくれ、とでも言われたの?」

「結婚って、そこまでは言われて無いよ!」

 あわあわ、と傍目に哀れなほどに慌てて、花梨が勢いよく否定する。

「ふぅん。花梨って馬鹿でしょう? 王様に告白されたのなら、それは婚姻を申し込まれたのと同じ事だよ」

「えぇー! そうなの?」

 おずおずと訊ねる花梨に、ルーファは呆れたような視線を送った。

「そうだよ。王様と恋愛するのは大変だよね。やめたほうが良いよ?」

 ふふっと笑って、ルーファはそのまま花梨の前を通って行った。花梨は突然現れた言葉に、未だ呆然としている。

「チュイ、結婚って本当?」

「龍巫女様と交際なされるなら、民衆への発表はありますけれど」

「それって、事実上」

「結婚、ですね」

 チュイの言葉に、花梨は一つため息をついた。確かにルーファの言うとおり、王との交際には色々と大変そうだ。

『ご主人様~』

「え?」

 聞こえた声に花梨は、驚愕の表情で振り向いた。

『大切な話があるんです!』

「ご、ごめん。チュイ。ちょっと行けなくなったから!」

「え? わ、待ってくださいー!」

 ミケをぎゅっと抱いて、花梨は部屋に再び入った。そして、中からしっかりと鍵をかけてしまう。

「龍巫女様~。僕怒られちゃいます」

 泣き声のようなチュイの声が聞こえるが、それよりも重大な事がおきたのだから。

「ミケ、何で話せるの? もう、力は戻ってきたの?」

 嬉しさを隠し切れずに、にこにこと笑って言う花梨とは違い、ミケの表情は、どこか曇っているように見える。

『力が戻ったわけじゃありません。ただ、今回は龍様の言葉を伝えるために
一時的に会話が、出来るようにしてもらっただけです~』

「伝える? 龍さんが?」

『はい~。龍様が言うに、ご主人様は十分に役目を果たしたと言うんです。ですから、ご主人様に一つの選択をしてもらいたい、と言ってました~。

 その選択は帰るか、それとも帰らないか、です。ただ、この機会を逃すと、二度と元の世界には帰る事が出来ません』

 辛そうににゃぁ~ん、と喉の奥で搾り出すような声でミケが言う。

(――今日は重要な決め事が二つも出来た……)

 朝には暇だ暇だと嘆いていたのが、今では嘘のように思える。

「……そのまま返事を返さずに、ミケと話せる状態でいるっていうのは無し?」

『無しです! 最初に言ったとおり、一週間が期限なんです!』

 だよねぇ、と花梨は諦めるようにつぶやいた。
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