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学園編

夏休みの予定と妖精

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 ヘレナが邪神とつぶやいた日から、あっという間に日にちが過ぎた。気がつけば、1学期の期末テストのシーズンになっていた。

 ゲーム内ではヒロインが攻略キャラと勉強イベントがあり、成績自体は魔力の高さによって異なった。成績が上位になると、お金がもらえるシステムだった。

 実際の学園では、期末テストの結果は公表されるものの、ご褒美のお金はない。

 家庭教師をつけて学力に問題はない高位貴族も、この時期になると勉強に多くの時間をかける。

 ベルるんも図書館にて、ローレンやリンと勉強に励んでいた。この中ではリンが出遅れているようで、2人に教えてもらいながら勉強をしている。

 ベルるん、ローレン、リンが並んで座ってると、そこだけ輝くようだ。さすがゲームのメインキャラだな。と一人納得してうんうん、と頷く。

「あ。アリサ戻ってきたの?」

「うん。そろそろ休憩の時間かなーって」

 勉強する3人の側にいるのは暇なので、学園内を散歩して帰ってきたところだ。

 いち早く私に気がついたベルるんが、手のひらを差し出してくれる。その上に飛んで、ふわっと着地をする。

「アリサ様。休憩しながら、甘いものでも食べに行きませんか?」

 開いていた教科書をぱたん、と閉じて、リンが笑顔でそう言った。

「ん?アリサがいるの?私にも見えるようにしてくれないか?」

 ローレンに言われて、とりあえずローレンには見えるように意識をする。

「たまには、私たちが利用する食堂に行きませんか?日替わりのケーキセットが人気なんですよ」

「いいね!そっちなら、ヘレナとかもいないし」

 貴族の利用する食堂で、ヘレナに絡まれることが最近も多発していた。平民が多い無料の食堂なら、ヘレナもチェルシーもいないだろう。

「アリサがいいなら、どこでもいいよ」

 ふわっと笑顔でそう言うと、ベルるんは私を一度机の上に置いた。ノートなどをまとめて、カバンに入れると立ち上がる。

「ローレンは王子様だけど、無料の食堂でいいの?」

 そう聞くと、もちろん大丈夫。とローレンが頷く。

「何度かリンと行っているしね。ね、リン」

「はい」

 ローレンに微笑みかけられて、リンが少し照れくさそうに答える。うーん。甘酸っぱい恋の予感がする。

「アリサおいで」

 ローレンとリンを見ている私に、ベルるんが声をかける。

 ヒロインと攻略キャラが甘酸っぱい空気を出しているのに、ベルるんは全く気にしていないようだった。









 日替わりのケーキは、イチゴのソースがたっぷりかかったチーズケーキだった。

 ベルるんは甘いものがそれほど好きではないため、一人だけコーヒーのみを注文していた。

「美味しそう」

 イチゴソースがキラキラ輝いて見える。ワクワクしながら、アイテムボックスから、小さなフォークを取り出した。

「いただきます。…うん!美味しい!」

 酸味のあるイチゴソースと、甘みが強いチーズケーキが合う。また、チーズケーキの底の部分は、クッキー生地になっており私好みだ。

「美味しそうに食べるね」

「ベルるんも一口食べる?」

 頬杖をつきながら、ベルるんが笑顔で私を見ている。

 フォークで一口分を取ると、ベルるんの顔近くまで飛んだ。

「はい。私の一口だから小さいけど」

「ありがとう。ん。美味しいね」

 にこっと笑顔で言ってくれて、嬉しくなって私もニヤニヤする。

 親との関係が良好になるまで愛情に飢えていたベルるんは、こうやって食べさせてもらうのが好きだ。

 食事の時も時々私の分をあげると、喜んでくれていた。最初こそ推しとの間接キスやん!!って興奮していたけど、今となっては慣れたものだ。

「おーい。二人の世界に入ってない?」

「まあまあ。ローレン様。私たちも食べましょう」

 ローレンとリンも仲良くおしゃべりしながら、美味しそうにケーキを食べている。

「あ。そういえば。ベルンハルトは休暇中、侯爵領に帰るのかい?」

 ローレンの問いに、ベルるんがちらっと私を見る。

「いや。多分帰らないことになるかな」

「風の里に行くことになると思う」

 ベルるんの言葉に続いて話す。まだパーシヴァルには声をかけていないけれど、レベルを確認したら20まで上がっていた。

 テスト期間が終わったらすぐに、風の里に行くことを提案するつもりだ。

 できるだけ早く妹の病気を治したいパーシヴァルであれば、確実に風の里行くことを許可してくれるだろう。

「そっか。侯爵領に帰るなら遊びに行こうと思ったけど、またにするよ」

「リンは?」

「私は、そうですね。神殿の方で巫女としてのお仕事がありますので」

「お休みの過ごし方じゃないよね!」

 真面目なリンの回答に驚いて言うと、「そんなことないですよ」とリンが微笑む。

「神殿は私の家のようなものですから、家業を手伝う感覚ですよ」

「リンは家族想いなんだね。久しぶりに帰れるから、楽しみだね」

「はい」

 休みじゃないなんて失礼だったかな?と思ったけれど、リンは微笑んでくれている。

 ケーキを食べ終われば、再び勉強の時間だ。3人が図書館に行くのを見送り、私は食後の散歩に噴水へ向かった。

「あ。パーシヴァルだ」

 噴水のベンチには、一人でパーシヴァルが座っている。姿は見えないが、私の声が聞こえたんだろう。きょろきょろと周りを見ている。

「アリサ殿?ここにいるのでござるか?」

「いるよ。ごめんね。思わず声出ちゃった」

 そう言ってパーシヴァルから見えるように、私は姿を現した。
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