【完結】推しの悪役にしか見えない妖精になって推しと世界を救う話

近藤アリス

文字の大きさ
33 / 57
学園編

夏休みの予定と妖精

 ヘレナが邪神とつぶやいた日から、あっという間に日にちが過ぎた。気がつけば、1学期の期末テストのシーズンになっていた。

 ゲーム内ではヒロインが攻略キャラと勉強イベントがあり、成績自体は魔力の高さによって異なった。成績が上位になると、お金がもらえるシステムだった。

 実際の学園では、期末テストの結果は公表されるものの、ご褒美のお金はない。

 家庭教師をつけて学力に問題はない高位貴族も、この時期になると勉強に多くの時間をかける。

 ベルるんも図書館にて、ローレンやリンと勉強に励んでいた。この中ではリンが出遅れているようで、2人に教えてもらいながら勉強をしている。

 ベルるん、ローレン、リンが並んで座ってると、そこだけ輝くようだ。さすがゲームのメインキャラだな。と一人納得してうんうん、と頷く。

「あ。アリサ戻ってきたの?」

「うん。そろそろ休憩の時間かなーって」

 勉強する3人の側にいるのは暇なので、学園内を散歩して帰ってきたところだ。

 いち早く私に気がついたベルるんが、手のひらを差し出してくれる。その上に飛んで、ふわっと着地をする。

「アリサ様。休憩しながら、甘いものでも食べに行きませんか?」

 開いていた教科書をぱたん、と閉じて、リンが笑顔でそう言った。

「ん?アリサがいるの?私にも見えるようにしてくれないか?」

 ローレンに言われて、とりあえずローレンには見えるように意識をする。

「たまには、私たちが利用する食堂に行きませんか?日替わりのケーキセットが人気なんですよ」

「いいね!そっちなら、ヘレナとかもいないし」

 貴族の利用する食堂で、ヘレナに絡まれることが最近も多発していた。平民が多い無料の食堂なら、ヘレナもチェルシーもいないだろう。

「アリサがいいなら、どこでもいいよ」

 ふわっと笑顔でそう言うと、ベルるんは私を一度机の上に置いた。ノートなどをまとめて、カバンに入れると立ち上がる。

「ローレンは王子様だけど、無料の食堂でいいの?」

 そう聞くと、もちろん大丈夫。とローレンが頷く。

「何度かリンと行っているしね。ね、リン」

「はい」

 ローレンに微笑みかけられて、リンが少し照れくさそうに答える。うーん。甘酸っぱい恋の予感がする。

「アリサおいで」

 ローレンとリンを見ている私に、ベルるんが声をかける。

 ヒロインと攻略キャラが甘酸っぱい空気を出しているのに、ベルるんは全く気にしていないようだった。









 日替わりのケーキは、イチゴのソースがたっぷりかかったチーズケーキだった。

 ベルるんは甘いものがそれほど好きではないため、一人だけコーヒーのみを注文していた。

「美味しそう」

 イチゴソースがキラキラ輝いて見える。ワクワクしながら、アイテムボックスから、小さなフォークを取り出した。

「いただきます。…うん!美味しい!」

 酸味のあるイチゴソースと、甘みが強いチーズケーキが合う。また、チーズケーキの底の部分は、クッキー生地になっており私好みだ。

「美味しそうに食べるね」

「ベルるんも一口食べる?」

 頬杖をつきながら、ベルるんが笑顔で私を見ている。

 フォークで一口分を取ると、ベルるんの顔近くまで飛んだ。

「はい。私の一口だから小さいけど」

「ありがとう。ん。美味しいね」

 にこっと笑顔で言ってくれて、嬉しくなって私もニヤニヤする。

 親との関係が良好になるまで愛情に飢えていたベルるんは、こうやって食べさせてもらうのが好きだ。

 食事の時も時々私の分をあげると、喜んでくれていた。最初こそ推しとの間接キスやん!!って興奮していたけど、今となっては慣れたものだ。

「おーい。二人の世界に入ってない?」

「まあまあ。ローレン様。私たちも食べましょう」

 ローレンとリンも仲良くおしゃべりしながら、美味しそうにケーキを食べている。

「あ。そういえば。ベルンハルトは休暇中、侯爵領に帰るのかい?」

 ローレンの問いに、ベルるんがちらっと私を見る。

「いや。多分帰らないことになるかな」

「風の里に行くことになると思う」

 ベルるんの言葉に続いて話す。まだパーシヴァルには声をかけていないけれど、レベルを確認したら20まで上がっていた。

 テスト期間が終わったらすぐに、風の里に行くことを提案するつもりだ。

 できるだけ早く妹の病気を治したいパーシヴァルであれば、確実に風の里行くことを許可してくれるだろう。

「そっか。侯爵領に帰るなら遊びに行こうと思ったけど、またにするよ」

「リンは?」

「私は、そうですね。神殿の方で巫女としてのお仕事がありますので」

「お休みの過ごし方じゃないよね!」

 真面目なリンの回答に驚いて言うと、「そんなことないですよ」とリンが微笑む。

「神殿は私の家のようなものですから、家業を手伝う感覚ですよ」

「リンは家族想いなんだね。久しぶりに帰れるから、楽しみだね」

「はい」

 休みじゃないなんて失礼だったかな?と思ったけれど、リンは微笑んでくれている。

 ケーキを食べ終われば、再び勉強の時間だ。3人が図書館に行くのを見送り、私は食後の散歩に噴水へ向かった。

「あ。パーシヴァルだ」

 噴水のベンチには、一人でパーシヴァルが座っている。姿は見えないが、私の声が聞こえたんだろう。きょろきょろと周りを見ている。

「アリサ殿?ここにいるのでござるか?」

「いるよ。ごめんね。思わず声出ちゃった」

 そう言ってパーシヴァルから見えるように、私は姿を現した。
感想 6

あなたにおすすめの小説

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。