【完結】推しの悪役にしか見えない妖精になって推しと世界を救う話

近藤アリス

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学園編

テストの結果と妖精

 1週間ほどあったテスト期間も終わり、今日が1学期の終業式だ。そして、期末テストの結果が分かる日でもある。

 終業式ともなると、過保護な親は学園まで迎えに来ることも多いらしい。親も見ることができるように、とこの日に結果を貼り出すようだ。

 ざわざわ、とみんなが集まり、壁に貼り出された紙を見ている。私もベルるんと人ごみをかき分け、紙の前まで行く。

「わ!ベルるんすごい。3位だね」

 上から、ローレン、タイロン、ベルるんと続いている。ヒロインであるリンは、8位と健闘していた。

「うーん。まあ、これくらいは取らないとね」

 ローレンとタイロンに負けたのが少し悔しいのか、ベルるんは納得していない顔をしている。

 ざわざわ、と声が大きくなる。そして、固まっていた生徒たちが動き、1本の道ができる。歩いてくるのは、ローレンとリンだ。

「リンー。8位だって、すごいね!」

 ふわふわ飛びながら近寄ると、リンがぱっと表情を明るくする。

「本当ですか?わあ、嬉しい。10位以内が目標だったんですよ」

「うんうん。リンすごい頑張ってたもんね」

 二人できゃっきゃっと盛り上がる。

「ローレン。君が1位だよ」

「まあ。私が1位を取らないと、周りも気を使うし。当然の結果かな」

 第一王子で次期国王のローレンは、常に人よりも優れていなければいけないと思っている。ゲーム中では、そんな完璧なローレンが素をさらけ出せるのが、ヒロインだけという美味しい設定だ。

「リンもよく頑張ったね」

 ローレンがリンにそう声をかけると、リンが嬉しそうに微笑む。

「ありがとうございます。教えてくだったローレン様とベルンハルト君のおかげです」

「平民が生意気ですのよ」

 ぼそぼそ、と喜びに水をさすように、数名の女児生徒が陰口を叩く。

 リンは慣れたものなのか、全く反応を見せない。けれど、私の方が腹が立つ。

 悪口が聞こえた方を見ると……いた!またチェルシー達だった。

「平民は何も持っていないから、勉強だけが取り柄ですよの」

「勉強以外に、男性への媚び売りも得意みたいですわ」

 よくもまあ、王子と仲良くしてるリンに聞こえるように悪口が言えたものだな、と思う。

 私はチェルシー達の目の前に行き、パッと姿を現す。

「いい加減にしてくれない?」

「よ、妖精様」

 先ほどまでの威勢はどこへやら、私の姿を見るとアワアワと慌て出す。

「はっきり言わせてもらうけど。私がベルンハルトの次に、気に入ってるのがリンだからね。リンへの悪口は、私への悪口だと思って。サイレント」

 言いたいことだけ言って、チェルシー達にサイレントをかける。学園内の保健室に行けば、きっと治してもらえるだろう。

 ぱっと姿を消すと、その場には口をパクパク動かし続ける数名の女子生徒が残される。

 周りの生徒達は関わりたくないようで、遠巻きに様子を見ている。

 よし。これでリンをいじめると、私に何かされるってイメージがついたでしょ。

 女神信仰の強いこの世界で、女神の使徒である妖精に嫌われるのは中々のダメージのはずだ。

 みんなが集まっている場所で、ベルるんの次にリンが気に入っている。と発言をすることで、もう誰もリンをいじめないだろう。

 ベルるんの方へ戻ると、なぜかやたらとベルるんの機嫌が良い。ヒロインのリンを助けたからかな?

「やっぱり、アリサは僕が1番なんだね」

 そこか。と思いながら、ベルるんが差し出してくれた手に乗る。

「アリサ様。ありがとうございます。あの、私のアリサ様のこと好きです」

 ぽっと頬を染めたリンが嬉しそうにそう言って、私の手をちゃんと指先で握る。

「私からも礼を言うよ」

「大丈夫。それよりも、人がもっと増えてきたし、移動しよう」

 そう言ってテスト結果の貼り出された廊下から、教室へ移動をした。教室内で、ローレンとリンとは別れた。








 馬車乗り場は、多くの貴族達の迎えのため混んでいる。学園では身分を問わないという理念があるため、迎えも早いもの順のようだった。

 私たちは侯爵家には帰らないため、迎えの馬車はない。なのに、なぜ馬車乗り場にいるかというと…

「ベルンハルト殿。こちらでござるよ」

 そう。パーシヴァルの馬車に相乗りして、風の国へ行くためだった。風の国へ入国し、そのままパーシヴァルの故郷である忍者の里へ行く予定だ。

「よいしょっと。パーシヴァルよろしくね」

 馬車に乗ると私は姿を現して、にこっと笑う。パーシヴァルが返事をしようとした瞬間、ベルるんが私とパーシヴァルの間に入る。

「君が女性を口説くのが趣味なのは構わないけど、アリサのこと口説いたら、帰るから」

「おお。怖いでござるな。拙者は口説くのが趣味ではなく、美しい女性を見ると素直に心の声が出てしまうだけでござるよ」

 つん、と冷たい態度を取るベルるんに、パーシヴァルは穏やかな対応だ。

「この度は、拙者の妹のために協力をしてくれて感謝するでござる。ベルンハルト殿にも、改めて感謝したい」

 そう言って頭を下げるパーシヴァルに、ベルるんは気まずそうに頬を指でかく。

 ベルるんは意外と感謝され慣れてないので、感謝されるとこういう可愛い反応をするのだ!尊い!

「まあ。アリサが決めたことだし、やるからにはしっかりやるから。安心してよ」

「さようでござるか」

 にこっと笑うパーシヴァル。コミュ力の高さがうかがえる。

 全員が座ると、ゆっくりと馬車が出発した。行き先は風の国の忍者の里。頑張って風の珠手に入れるぞ。
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