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8話
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王城の中にはメインの大きな厨房があるが、王や王妃などは専属の料理人と厨房も持っていた。もちろんジェレマイアも例外ではないが、皇后が毎食用意をしていたため、ほとんど利用されていなかった。
ジェレマイアの厨房は、彼の執務室と同じ階にある。
「ここが殿下の厨房になります」
ビオラを案内してくれている男性は、部屋の扉を開けてそう言った。
「ん?誰だ?」
厨房には1人の若い男性がいた。ジェレマイアのためにほとんど使われていない場所だが、埃一つ落ちておらず、よく手入れされていることが一目で分かる。
「もしかして。何か殿下に軽食でも作るのか!」
若い料理人レグアンは目をキラキラとさせて立ち上がる。
「さっきは久しぶりに人が来たかと思ったら、ぐつぐつ土瓶で薬なんか煮やがって」
ぶつぶつと言いながら男性は、ビオラの方に歩いてくる。
「この侍女の言う通りにするように」
案内人の男性はそう言うと、すぐに厨房を出てしまった。
「おーおー。相変わらず殿下の使いは無愛想なもんだな。で、侍女さん。殿下は何と言っているんだ?」
やれやれ、とばかりに首を振った男性は、気を取り直したようにビオラの方を向き直す。
「今晩のお食事から、殿下のご飯を作って欲しいのですが、使っていただきたい材料がありまして」
ビオラはそう言うと、いくつかの薬草の名前と、加熱の有無について説明する。また、調理法や野菜を多くして欲しいということも伝えた。
「調理法については問題ねぇ!殿下の食事があまりにもおかしいのは、使用人みんなわかってんだ。言われた条件通りに作れば、今晩からここで!殿下の!ご飯が用意できるってことか!!」
興奮のあまり最後は叫ぶように、ビオラの顔の目の前でレグアンが目を見開き言った。
(――こ、怖い)
「そ、そうです。殿下の健康を良くするため、食べてくださると仰っていました」
ビオラの言葉に「おおお」とレグアンが目を閉じて震える。
「ついについに!俺の料理を殿下が!!こうしちゃいられねぇ。サボってる馬鹿どもを連れ戻して準備をしねぇと!」
それじゃあな!とレグアンが走って厨房を出て行った。
厨房に取り残されたビオラは、少しの間レグアンを待っていたが、帰ってこなかったため屋敷へと帰ることにした。
王城からアルゼリアの住む屋敷までは、歩いて行ける距離にある。
(――早くお嬢様のところに帰らなきゃ!)
アルゼリアのところへ早く行きたい!と屋敷に入るとすぐアルゼリアに会いに行こうとするが、その前に応接間の様子が目に飛び込む。
「お嬢様!」
「誰ですか。この無礼な子は」
そこにあったのは、眼鏡をかけた中年の女性に対し、びしょ濡れのアルゼリアが床に頭を付けて平伏している姿だった。
「私の侍女です。ビオラ下がりなさい」
頭を下げた状態でアルゼリアが指示をする。ぽたり、と顎を伝ってしずくが落ちる。アルゼリアが両手をついている床も、ぐっしょりと濡れていた。
「かしこまりました。申し訳ございません」
(――相手が誰なのか、状況が分からない!この状況で文句を言ったらお嬢様の立場が悪くなるかもしれない)
ぐっと唇を噛み締め、謝罪をするとビオラは応接間から出ていく。
「ビオラ。大丈夫?止めようとしたんだけど間に合わなくて」
「アイリーン。状況を教えてくれる?」
アイリーンは王城から派遣された若い侍女の1人だ。ビオラとは年が近いこともあり、よく雑談もする仲だった。
「第二妃様お付きの侍女であるミレイユ様が来て、直接挨拶に来なかったことに関してお怒りになったの」
「そんな!でも第二妃様ならともかく、侍女が第三妃であるアルゼリア様に頭を下げさせるなんてことおかしいよ!」
「第二妃様だと思って誠意を見せろって。第二妃様直筆の文を持ってきたの。それでもう一刻はあの姿勢なの」
「そんな……」
一刻もの間、ずっと侍女に対して土下座をしていたことにショックを受けビオラはよろめいた。
「わ、わたし。止めてくる!」
「だめよ。私たちが行ってもアルゼリア様のご迷惑になるだけだわ」
「そんな。それなら、誰か助けてくれる人を呼ぶしか!」
(――ジェレマイア様)
ぱっと頭に浮かんだのは、先ほどまで話をしていたジェレマイアだった。
「とにかく行ってくる!」
考えている間もアルゼリアは頭を下げさせられている。ビオラはじっとできずに屋敷から飛び出そうとした。その時。
「あれ?何だか騒々しいね?」
「ライ様!」
目をぱちくりさせながら現れたライが、オレンジ色の頭を軽くかいた。
ジェレマイアの厨房は、彼の執務室と同じ階にある。
「ここが殿下の厨房になります」
ビオラを案内してくれている男性は、部屋の扉を開けてそう言った。
「ん?誰だ?」
厨房には1人の若い男性がいた。ジェレマイアのためにほとんど使われていない場所だが、埃一つ落ちておらず、よく手入れされていることが一目で分かる。
「もしかして。何か殿下に軽食でも作るのか!」
若い料理人レグアンは目をキラキラとさせて立ち上がる。
「さっきは久しぶりに人が来たかと思ったら、ぐつぐつ土瓶で薬なんか煮やがって」
ぶつぶつと言いながら男性は、ビオラの方に歩いてくる。
「この侍女の言う通りにするように」
案内人の男性はそう言うと、すぐに厨房を出てしまった。
「おーおー。相変わらず殿下の使いは無愛想なもんだな。で、侍女さん。殿下は何と言っているんだ?」
やれやれ、とばかりに首を振った男性は、気を取り直したようにビオラの方を向き直す。
「今晩のお食事から、殿下のご飯を作って欲しいのですが、使っていただきたい材料がありまして」
ビオラはそう言うと、いくつかの薬草の名前と、加熱の有無について説明する。また、調理法や野菜を多くして欲しいということも伝えた。
「調理法については問題ねぇ!殿下の食事があまりにもおかしいのは、使用人みんなわかってんだ。言われた条件通りに作れば、今晩からここで!殿下の!ご飯が用意できるってことか!!」
興奮のあまり最後は叫ぶように、ビオラの顔の目の前でレグアンが目を見開き言った。
(――こ、怖い)
「そ、そうです。殿下の健康を良くするため、食べてくださると仰っていました」
ビオラの言葉に「おおお」とレグアンが目を閉じて震える。
「ついについに!俺の料理を殿下が!!こうしちゃいられねぇ。サボってる馬鹿どもを連れ戻して準備をしねぇと!」
それじゃあな!とレグアンが走って厨房を出て行った。
厨房に取り残されたビオラは、少しの間レグアンを待っていたが、帰ってこなかったため屋敷へと帰ることにした。
王城からアルゼリアの住む屋敷までは、歩いて行ける距離にある。
(――早くお嬢様のところに帰らなきゃ!)
アルゼリアのところへ早く行きたい!と屋敷に入るとすぐアルゼリアに会いに行こうとするが、その前に応接間の様子が目に飛び込む。
「お嬢様!」
「誰ですか。この無礼な子は」
そこにあったのは、眼鏡をかけた中年の女性に対し、びしょ濡れのアルゼリアが床に頭を付けて平伏している姿だった。
「私の侍女です。ビオラ下がりなさい」
頭を下げた状態でアルゼリアが指示をする。ぽたり、と顎を伝ってしずくが落ちる。アルゼリアが両手をついている床も、ぐっしょりと濡れていた。
「かしこまりました。申し訳ございません」
(――相手が誰なのか、状況が分からない!この状況で文句を言ったらお嬢様の立場が悪くなるかもしれない)
ぐっと唇を噛み締め、謝罪をするとビオラは応接間から出ていく。
「ビオラ。大丈夫?止めようとしたんだけど間に合わなくて」
「アイリーン。状況を教えてくれる?」
アイリーンは王城から派遣された若い侍女の1人だ。ビオラとは年が近いこともあり、よく雑談もする仲だった。
「第二妃様お付きの侍女であるミレイユ様が来て、直接挨拶に来なかったことに関してお怒りになったの」
「そんな!でも第二妃様ならともかく、侍女が第三妃であるアルゼリア様に頭を下げさせるなんてことおかしいよ!」
「第二妃様だと思って誠意を見せろって。第二妃様直筆の文を持ってきたの。それでもう一刻はあの姿勢なの」
「そんな……」
一刻もの間、ずっと侍女に対して土下座をしていたことにショックを受けビオラはよろめいた。
「わ、わたし。止めてくる!」
「だめよ。私たちが行ってもアルゼリア様のご迷惑になるだけだわ」
「そんな。それなら、誰か助けてくれる人を呼ぶしか!」
(――ジェレマイア様)
ぱっと頭に浮かんだのは、先ほどまで話をしていたジェレマイアだった。
「とにかく行ってくる!」
考えている間もアルゼリアは頭を下げさせられている。ビオラはじっとできずに屋敷から飛び出そうとした。その時。
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