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30話
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ララの店で服を買った後は、工房へ行き装飾品をいくつも購入した。その時に買った一つが、ビオラの胸元で輝くネックレスだ。
ジェレマイアはイヤリングも購入しようとしたが、お嬢様に貸してもらったからとビオラが頑なに断った。
工房の他にもカフェで軽食とケーキを食べ、また別の工房へも行った。ジェレマイアはとにかくビオラに何かを与えることが、嬉しくて仕方がない様子だった。
そして、最後に寄りたい場所がある。とジェレマイアは言い、馬車は城から離れた場所にある森の方へ向かっていた。
「殿下。ずっと聞きたかったことがあるんです」
今日ビオラが訪れた店の多くは、ララのようにジェレマイアに救われたところが多かった。
「なんだ?」
「殿下は本当にたくさんの人を殺したんですか?なぜ、第三妃は何人も亡くなっているんですか?」
(――殿下のことを好きになればなるほど。このことが気になる。聞かずに避けたかった気持ちもあるけど、やっぱり聞かなきゃ)
ぐっと唇を噛みながら、ビオラはジェレマイアの返事を待つ。目の前にいる優しい彼の姿が、変わってしまうのが怖かった。
「何人も殺したのは事実だ。理由もなく殺したことはないがな。お前に出会って、生活を変えるまで全てに腹が立って仕方がなかった」
「そんな」
何人も殺した、と話すジェレマイアにビオラは首を振る。
「なぜ食事を改めなかったのですか?」
「あの飯がそんなに悪いとは思っていなかった。気がついたときには、皇后の用意したものを食べていたからな」
「第三妃は?」
「ああ。死んでいるのは確かだが、殺したのは俺じゃない。皇后だ。元々殺す予定の弱い貴族を嫁がせて、すぐに殺させていたようだな」
「なんでそんなことを?」
皇后の名前が出ると思っていなかったビオラが、驚いて聞き返す。
「あの女はサレオスが王になることを諦めていない。そのために俺は血に濡れた暴君である必要があった。その評判を作るためにだけに、何人も殺したんだろう」
「そんな。それじゃあ、アルゼリア様も?」
「ああ。だが、アルゼリアの場合は俺が初めて護衛を付けたからな。皇后も手が出せなかった。あとは、子爵家は後ろ盾には弱いから、無理して殺す必要もなかったんだろう。評判も十分に落ちたしな」
アルゼリアも狙われていた、と聞いてビオラは心臓が掴まれたようなショックを感じた。まさか、命を狙われていたとは思わなかったのだ。
「クレア様は狙われないんですか?」
「侯爵家はタキアナ皇后の手の者だ。クレアは俺の子を産み、国母になることを夢見ているが。父親の侯爵は、サレオスを王にするつもりだ」
「そんな」
「お前はあいつを俺の妻だと言ったが、一度も抱いたことはないし。あの女が俺のことを愛していたこともない」
ふん、と鼻で笑うジェレマイア。クレアの心の声はいつも自分を愛しており、ジェレマイアに純粋な愛を持っていることはなかった。
「抱かれたことがないんですか?」
「ああ。毎月侯爵の動向を知るために、自白剤を焚いている」
「あんなに魅力的な方なのに。本当に一度もないんですか?」
「ああ。頬への口付けだって、お前が初めてだ」
「え?」
思わず出てしまったジェレマイアの言葉に、ビオラが驚く。
「男としてカッコよくはないだろうが。触れたいと思ったのお前が初めてだったし、触れたのも初めてなんだ」
ジェレマイアがそっぽを向いてそう言う。ビオラからは、耳の先が赤く染まっているのが見える。
(――なんて可愛い人なんだろう。もう殺してしまった命は返ってこないけど、これから先に無駄な殺生を止めることはできる)
ビオラは目の前の青年が、愛しくてたまらなくなった。時期王だというのに、可愛くて仕方がなかった。
「殿下は可愛い人です」
「それは。喜んで良いのか分からないな」
そっぽを向いたまま言うジェレマイアの頭を、ビオラが優しく撫でた。
ジェレマイアはイヤリングも購入しようとしたが、お嬢様に貸してもらったからとビオラが頑なに断った。
工房の他にもカフェで軽食とケーキを食べ、また別の工房へも行った。ジェレマイアはとにかくビオラに何かを与えることが、嬉しくて仕方がない様子だった。
そして、最後に寄りたい場所がある。とジェレマイアは言い、馬車は城から離れた場所にある森の方へ向かっていた。
「殿下。ずっと聞きたかったことがあるんです」
今日ビオラが訪れた店の多くは、ララのようにジェレマイアに救われたところが多かった。
「なんだ?」
「殿下は本当にたくさんの人を殺したんですか?なぜ、第三妃は何人も亡くなっているんですか?」
(――殿下のことを好きになればなるほど。このことが気になる。聞かずに避けたかった気持ちもあるけど、やっぱり聞かなきゃ)
ぐっと唇を噛みながら、ビオラはジェレマイアの返事を待つ。目の前にいる優しい彼の姿が、変わってしまうのが怖かった。
「何人も殺したのは事実だ。理由もなく殺したことはないがな。お前に出会って、生活を変えるまで全てに腹が立って仕方がなかった」
「そんな」
何人も殺した、と話すジェレマイアにビオラは首を振る。
「なぜ食事を改めなかったのですか?」
「あの飯がそんなに悪いとは思っていなかった。気がついたときには、皇后の用意したものを食べていたからな」
「第三妃は?」
「ああ。死んでいるのは確かだが、殺したのは俺じゃない。皇后だ。元々殺す予定の弱い貴族を嫁がせて、すぐに殺させていたようだな」
「なんでそんなことを?」
皇后の名前が出ると思っていなかったビオラが、驚いて聞き返す。
「あの女はサレオスが王になることを諦めていない。そのために俺は血に濡れた暴君である必要があった。その評判を作るためにだけに、何人も殺したんだろう」
「そんな。それじゃあ、アルゼリア様も?」
「ああ。だが、アルゼリアの場合は俺が初めて護衛を付けたからな。皇后も手が出せなかった。あとは、子爵家は後ろ盾には弱いから、無理して殺す必要もなかったんだろう。評判も十分に落ちたしな」
アルゼリアも狙われていた、と聞いてビオラは心臓が掴まれたようなショックを感じた。まさか、命を狙われていたとは思わなかったのだ。
「クレア様は狙われないんですか?」
「侯爵家はタキアナ皇后の手の者だ。クレアは俺の子を産み、国母になることを夢見ているが。父親の侯爵は、サレオスを王にするつもりだ」
「そんな」
「お前はあいつを俺の妻だと言ったが、一度も抱いたことはないし。あの女が俺のことを愛していたこともない」
ふん、と鼻で笑うジェレマイア。クレアの心の声はいつも自分を愛しており、ジェレマイアに純粋な愛を持っていることはなかった。
「抱かれたことがないんですか?」
「ああ。毎月侯爵の動向を知るために、自白剤を焚いている」
「あんなに魅力的な方なのに。本当に一度もないんですか?」
「ああ。頬への口付けだって、お前が初めてだ」
「え?」
思わず出てしまったジェレマイアの言葉に、ビオラが驚く。
「男としてカッコよくはないだろうが。触れたいと思ったのお前が初めてだったし、触れたのも初めてなんだ」
ジェレマイアがそっぽを向いてそう言う。ビオラからは、耳の先が赤く染まっているのが見える。
(――なんて可愛い人なんだろう。もう殺してしまった命は返ってこないけど、これから先に無駄な殺生を止めることはできる)
ビオラは目の前の青年が、愛しくてたまらなくなった。時期王だというのに、可愛くて仕方がなかった。
「殿下は可愛い人です」
「それは。喜んで良いのか分からないな」
そっぽを向いたまま言うジェレマイアの頭を、ビオラが優しく撫でた。
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