30 / 55
30話
しおりを挟む
ララの店で服を買った後は、工房へ行き装飾品をいくつも購入した。その時に買った一つが、ビオラの胸元で輝くネックレスだ。
ジェレマイアはイヤリングも購入しようとしたが、お嬢様に貸してもらったからとビオラが頑なに断った。
工房の他にもカフェで軽食とケーキを食べ、また別の工房へも行った。ジェレマイアはとにかくビオラに何かを与えることが、嬉しくて仕方がない様子だった。
そして、最後に寄りたい場所がある。とジェレマイアは言い、馬車は城から離れた場所にある森の方へ向かっていた。
「殿下。ずっと聞きたかったことがあるんです」
今日ビオラが訪れた店の多くは、ララのようにジェレマイアに救われたところが多かった。
「なんだ?」
「殿下は本当にたくさんの人を殺したんですか?なぜ、第三妃は何人も亡くなっているんですか?」
(――殿下のことを好きになればなるほど。このことが気になる。聞かずに避けたかった気持ちもあるけど、やっぱり聞かなきゃ)
ぐっと唇を噛みながら、ビオラはジェレマイアの返事を待つ。目の前にいる優しい彼の姿が、変わってしまうのが怖かった。
「何人も殺したのは事実だ。理由もなく殺したことはないがな。お前に出会って、生活を変えるまで全てに腹が立って仕方がなかった」
「そんな」
何人も殺した、と話すジェレマイアにビオラは首を振る。
「なぜ食事を改めなかったのですか?」
「あの飯がそんなに悪いとは思っていなかった。気がついたときには、皇后の用意したものを食べていたからな」
「第三妃は?」
「ああ。死んでいるのは確かだが、殺したのは俺じゃない。皇后だ。元々殺す予定の弱い貴族を嫁がせて、すぐに殺させていたようだな」
「なんでそんなことを?」
皇后の名前が出ると思っていなかったビオラが、驚いて聞き返す。
「あの女はサレオスが王になることを諦めていない。そのために俺は血に濡れた暴君である必要があった。その評判を作るためにだけに、何人も殺したんだろう」
「そんな。それじゃあ、アルゼリア様も?」
「ああ。だが、アルゼリアの場合は俺が初めて護衛を付けたからな。皇后も手が出せなかった。あとは、子爵家は後ろ盾には弱いから、無理して殺す必要もなかったんだろう。評判も十分に落ちたしな」
アルゼリアも狙われていた、と聞いてビオラは心臓が掴まれたようなショックを感じた。まさか、命を狙われていたとは思わなかったのだ。
「クレア様は狙われないんですか?」
「侯爵家はタキアナ皇后の手の者だ。クレアは俺の子を産み、国母になることを夢見ているが。父親の侯爵は、サレオスを王にするつもりだ」
「そんな」
「お前はあいつを俺の妻だと言ったが、一度も抱いたことはないし。あの女が俺のことを愛していたこともない」
ふん、と鼻で笑うジェレマイア。クレアの心の声はいつも自分を愛しており、ジェレマイアに純粋な愛を持っていることはなかった。
「抱かれたことがないんですか?」
「ああ。毎月侯爵の動向を知るために、自白剤を焚いている」
「あんなに魅力的な方なのに。本当に一度もないんですか?」
「ああ。頬への口付けだって、お前が初めてだ」
「え?」
思わず出てしまったジェレマイアの言葉に、ビオラが驚く。
「男としてカッコよくはないだろうが。触れたいと思ったのお前が初めてだったし、触れたのも初めてなんだ」
ジェレマイアがそっぽを向いてそう言う。ビオラからは、耳の先が赤く染まっているのが見える。
(――なんて可愛い人なんだろう。もう殺してしまった命は返ってこないけど、これから先に無駄な殺生を止めることはできる)
ビオラは目の前の青年が、愛しくてたまらなくなった。時期王だというのに、可愛くて仕方がなかった。
「殿下は可愛い人です」
「それは。喜んで良いのか分からないな」
そっぽを向いたまま言うジェレマイアの頭を、ビオラが優しく撫でた。
ジェレマイアはイヤリングも購入しようとしたが、お嬢様に貸してもらったからとビオラが頑なに断った。
工房の他にもカフェで軽食とケーキを食べ、また別の工房へも行った。ジェレマイアはとにかくビオラに何かを与えることが、嬉しくて仕方がない様子だった。
そして、最後に寄りたい場所がある。とジェレマイアは言い、馬車は城から離れた場所にある森の方へ向かっていた。
「殿下。ずっと聞きたかったことがあるんです」
今日ビオラが訪れた店の多くは、ララのようにジェレマイアに救われたところが多かった。
「なんだ?」
「殿下は本当にたくさんの人を殺したんですか?なぜ、第三妃は何人も亡くなっているんですか?」
(――殿下のことを好きになればなるほど。このことが気になる。聞かずに避けたかった気持ちもあるけど、やっぱり聞かなきゃ)
ぐっと唇を噛みながら、ビオラはジェレマイアの返事を待つ。目の前にいる優しい彼の姿が、変わってしまうのが怖かった。
「何人も殺したのは事実だ。理由もなく殺したことはないがな。お前に出会って、生活を変えるまで全てに腹が立って仕方がなかった」
「そんな」
何人も殺した、と話すジェレマイアにビオラは首を振る。
「なぜ食事を改めなかったのですか?」
「あの飯がそんなに悪いとは思っていなかった。気がついたときには、皇后の用意したものを食べていたからな」
「第三妃は?」
「ああ。死んでいるのは確かだが、殺したのは俺じゃない。皇后だ。元々殺す予定の弱い貴族を嫁がせて、すぐに殺させていたようだな」
「なんでそんなことを?」
皇后の名前が出ると思っていなかったビオラが、驚いて聞き返す。
「あの女はサレオスが王になることを諦めていない。そのために俺は血に濡れた暴君である必要があった。その評判を作るためにだけに、何人も殺したんだろう」
「そんな。それじゃあ、アルゼリア様も?」
「ああ。だが、アルゼリアの場合は俺が初めて護衛を付けたからな。皇后も手が出せなかった。あとは、子爵家は後ろ盾には弱いから、無理して殺す必要もなかったんだろう。評判も十分に落ちたしな」
アルゼリアも狙われていた、と聞いてビオラは心臓が掴まれたようなショックを感じた。まさか、命を狙われていたとは思わなかったのだ。
「クレア様は狙われないんですか?」
「侯爵家はタキアナ皇后の手の者だ。クレアは俺の子を産み、国母になることを夢見ているが。父親の侯爵は、サレオスを王にするつもりだ」
「そんな」
「お前はあいつを俺の妻だと言ったが、一度も抱いたことはないし。あの女が俺のことを愛していたこともない」
ふん、と鼻で笑うジェレマイア。クレアの心の声はいつも自分を愛しており、ジェレマイアに純粋な愛を持っていることはなかった。
「抱かれたことがないんですか?」
「ああ。毎月侯爵の動向を知るために、自白剤を焚いている」
「あんなに魅力的な方なのに。本当に一度もないんですか?」
「ああ。頬への口付けだって、お前が初めてだ」
「え?」
思わず出てしまったジェレマイアの言葉に、ビオラが驚く。
「男としてカッコよくはないだろうが。触れたいと思ったのお前が初めてだったし、触れたのも初めてなんだ」
ジェレマイアがそっぽを向いてそう言う。ビオラからは、耳の先が赤く染まっているのが見える。
(――なんて可愛い人なんだろう。もう殺してしまった命は返ってこないけど、これから先に無駄な殺生を止めることはできる)
ビオラは目の前の青年が、愛しくてたまらなくなった。時期王だというのに、可愛くて仕方がなかった。
「殿下は可愛い人です」
「それは。喜んで良いのか分からないな」
そっぽを向いたまま言うジェレマイアの頭を、ビオラが優しく撫でた。
11
あなたにおすすめの小説
私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど
紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。
慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。
なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。
氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。
そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。
「……俺にかけた魅了魔法を解け」
私、そんな魔法かけてないんですけど!?
穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。
まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。
人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い”
異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。
※タイトルのシーンは7話辺りからになります。
ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。
※カクヨム様にも投稿しています。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
無能聖女の失敗ポーション〜働き口を探していたはずなのに、何故みんなに甘やかされているのでしょう?〜
矢口愛留
恋愛
クリスティーナは、初級ポーションすら満足に作れない無能聖女。
成人を迎えたことをきっかけに、これまでずっと暮らしていた神殿を出なくてはいけなくなった。
ポーションをどうにかお金に変えようと、冒険者ギルドに向かったクリスティーナは、自作ポーションだけでは生活できないことに気付く。
その時タイミングよく、住み込み可の依頼(ただしとても怪しい)を発見した彼女は、駆け出し冒険者のアンディと共に依頼を受ける。
依頼書に記載の館を訪れた二人を迎えるのは、正体不明の主人に仕える使用人、ジェーンだった。
そこでクリスティーナは、自作の失敗ポーションを飲んで体力を回復しながら仕事に励むのだが、どういうわけかアンディとジェーンにやたら甘やかされるように。
そして、クリスティーナの前に、館の主人、ギルバートが姿を現す。
ギルバートは、クリスティーナの失敗ポーションを必要としていて――。
「毎日、私にポーションを作ってくれないか。私には君が必要だ」
これは無能聖女として搾取され続けていたクリスティーナが、居場所を見つけ、自由を見つけ、ゆったりとした時間の中で輝いていくお話。
*カクヨム、小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる