お嬢様のために暴君に媚びを売ったら愛されました!

近藤アリス

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48話

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 ビオラのために用意された公爵家の部屋だが、住んでいられた日にちは数日だけだった。城にある部屋の準備ができたのだ。

「今までの妃と同じで、お城に住まなかったら一緒にいられたのに」

 拗ねたレティシアは、ビオラの背中にしがみついて言った。ビオラの私物はほとんどなく、用意された日と変わりのない綺麗な部屋がそこにあった。

「ビオラちゃん。いつでも帰ってきていいからね」 

 背中にしがみつくレティシアをぺしん、と扇で優しく叩いた公爵夫人が微笑む。

「これからたくさん会いに行くからね」

「はい。先生」

 ジェレマイアの妃になるため、ビオラには勉強しなければいけないことが山ほどあった。これからジェレマイアが王になれば、皇后として表に出ないといけないためだ。

 そんなビオラに歴史やマナーなどを教える役を買って出たのが、公爵夫人だった。レティシアと共に、頻繁にビオラの指導のために城へ行く予定だ。




 
 公爵家から馬車に乗ると、すぐに城に着く。門のところにはライが立っており、馬車から降りようとしたビオラへ手を差し出した。

「ありがとうございます」

「殿下がずいぶんと待ち望んでるよ」

 そう言ってビオラの手を引くと、ビオラのために用意された部屋に連れて行く。

「この部屋がビオラちゃんの部屋」

「わあ。ありがとうございます。なんだか、落ち着きます」

 初めて見るはずの部屋なのに、居心地の良い印象だった。ビオラの言葉にライが肩をすくめる。

「殿下からのご命令でね。カーテンや絨毯は子爵家で使われていたものとデザインを近づけているらしい。後
 、ビオラちゃん付きの侍女はこの2人だよ。中に入って」

 ライが手を叩いて合図をすると、部屋の中に2人の女性が入ってくる。

「アイリーン!リヨッタ様!」

「もうびっくりしたわよ。ビオラ」

 2人の顔を見てビオラが駆け寄ると、アイリーンがビオラに抱きついた。

「ビオラ様でしょう。アイリーン」

「できれば他に人がいないときは、前と同じ感じで接して欲しいです」

「ビオラ様。殿下と結婚したならそれは無理です。アイリーンもですよ」

 ぴしゃり、と注意したリヨッタは、少し間を空けて温和な笑みを浮かべた。

「でも。今日だけはそうさせてもらおうかね?」

「リヨッタ様」

「様付けは今日からやめてもらわないと。殿下に聞かれたら怒られそうだね」

「今日からビオラ様付きになったから、これからもよろしくね」

「うん。2人がそばにいてくれるなら、すごく心強いよ」

 アイリーンと手を取り合い、喜ぶビオラにライも満足気だ。しばらく喜んでいたビオラだが、部屋の奥にある扉に気がつき首を傾げる。

「部屋の奥に扉がありますが、あれは?脱出用の扉とかですか?」

「ああ。開けてみる?」

 ライがニヤリと笑って扉の方へ歩くので、ビオラもついて行く。廊下に繋がる扉とは違い、少し小さめの扉だ。

「はい」

「え?これって」

 扉を開けた先にあったのは、大きなベッドが置いてある寝室だった。寝室にはもう一つ扉がついている。

「あの扉を開けると殿下のところに繋がるからね。それじゃあ、僕はこれで」

 顔を真っ赤にして固まるビオラを見て、声を出してライが笑うと部屋から出て行った。

「ビオラ様!今日はお肌ピカピカにしてあげるから、任せてね」

「アイリーン。もしかして、私ってここで寝るのかな?」

「何言ってるの。結婚したなら夫婦の寝室を使うのが当たり前じゃない」

 うふふ、と笑うアイリーンがビオラの背中を軽く押す。

「さあ。夜まで時間は限られてるんだから、早速始めよう」

 腕まくりをして気合が入るアイリーンと、同じく気合いの入っているリヨッタがビオラを見た。







「こ、これって本当にあってるのかな?」

 大きなベッドの端っこにちょこん、と座りビオラが呟く。薄い水色の肌着のみを身につけており、化粧はしていないものの赤い紅だけ唇に塗ってある。

 アイリーンとリヨッタによって手入れされた肌は輝き、ほんのりと香油の良い香りがする。

 ベッドサイドにはキャンドルの明かりがゆらめき、サイドテーブルにお酒とグラス、そして軽食が置いてある。

「とりあえず。飲んじゃおう」

 よし。と気合を入れたビオラは自身の頬をぺちんと叩くと、グラスを手に取り酒を注ぎ入れた。

「え。このお酒美味しい」

 まるで果汁をそのまま飲んでいるかのような味に、ビオラは口元をおさえて喜ぶ。緊張をほぐすために、そのままぐいぐいとグラスをあおる。

 しばらくして、執務室とつながる扉がゆっくり開いた。

「すまない。遅くなってしまった」

 部屋に入ってきたジェレマイアは、湯浴みを済ませた様子だ。ぽたりぽたり、と雫が落ちる黒髪を煩わしそうにかきあげ、ビオラの隣に腰を下ろす。

「あ。殿下。お疲れ様です」

「結構飲んだな。頬が赤い」

 酒瓶を手に取り、振って残量を確認すると、ジェレマイアが手の甲で優しくビオラの頬を撫でる。

「くすぐったいです。あ、それよりも。髪の毛は拭かないと風邪をひきますよ」

「俺は病気にはならないんだ」

「でも、冷たいでしょう?」

 そう言って笑うとジェレマイアの手からタオルをうばい、頭をがしがしと拭く。

 (――じっとしていて、犬みたいで可愛い)

 くすくす上機嫌に笑うビオラに、ジェレマイアは困惑顔だ。

「酔っているのか?初めてが酔っていたらダメだよな」

 はぁ、とため息をついて俯くジェレマイアの膝に手を置き、ちゅっとキスをする。

「気分はいいですが、記憶無くすほどは酔ってないです」

「いや、でもな」

 ちゅ、ちゅ、とビオラを止めようとするジェレマイアに、ついばむようにキスをする。頬まで上がってきた熱が、唇から全身に流れるようだった。

 (――必死で止めようとしてる。可愛い人だな)

「殿下。私ずっと家族に憧れがあって、私だけの家族が欲しかったんです。一緒に幸せな家庭を作りましょう。これから先は、私が殿下のことを支えますから」

 そっとジェレマイアの両頬に手を添え、目を見てそう言った。

 (――やっとプロポーズの返事が返せた)

 ふふふ、と笑うビオラに、ジェレマイアは泣き笑いのような表情を浮かべた。

「ああ。俺たちだけの幸せな家庭を作ろう」

 そう言ってジェレマイアがビオラを抱きしめる。その温かさにうっとりと目を閉じていると、ジェレマイアが離れて立ち上がった。

「初夜はまたにしよう。俺は向こうで寝る」

 そう言って離れようとしたジェレマイアの手首を掴んで、ベットの方に引っ張る。バランスを崩したジェレマイアが横になると、その上にビオラが乗った。

「今日がいいんです。ダメですか?」

 上に乗ったビオラがそう言うと、ジェレマイアは両手で自身の顔を覆った。そして――

「お前が煽ったんだからな。責任とってくれよ」

 そう言ってビオラの腰をぐいっと引き寄せると、ジェレマイアの熱い唇が触れる。舌で唇をなぞられて、ビオラの身体がびくん、と跳ねた。

 そして、そのまま深くなっていく口付けに、ビオラはそっと身を委ねた。

 
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