美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました

葵 遥菜

文字の大きさ
1 / 21
第一章 前世とぬりかべ破壊計画

前世を思い出しました

しおりを挟む
「あなたは強い。幸せになることを諦めないで」

 そう言った瞬間、私は前世を思い出した。
 その衝撃で少しフリーズしてしまったが、とりあえずこの状況からなんとかしなければ。

 目の前にはびっくりするくらいかわいい女の子。
 丁寧に作られたビスク・ドールのように現実離れした顔立ちに、真っ白な髪、真っ赤な目が神秘的だ。前世で「アルビノ」と呼ばれていた色合いかもしれない。年頃は中学生くらいだろうか? 雪うさぎを彷彿とさせてとてもかわいい。
 
 ただ、彼女はその色合いゆえに偏見の目を向けられているのだという。誰も彼もが自分のことを奇異な目で見ているように感じ、周囲の目が気になり、たまらなくなって後先考えずに家を飛び出してきてしまったそうだ。
 そして迷って帰り道がわからなくなってしまって、疲れてその場に座り込んでいたところに私が通りがかり、心配して声をかけたという経緯だ。
 名前はラヴィー。両親と二人の兄がいて、兄は二人とも自分をとてもかわいがってくれること。特に二番目のお兄さんと遊ぶのが好きなこと。私と話をしているうちに、周囲になんと言われたとしても大切な家族に変わりないと言ってくれた二番目のお兄様の言葉を思い出して、元気が出てきたところだった。
 
 私は今、この瞬間に前世の記憶が戻ったおかげで唯一の特技を思い出した。だから「周囲の目が気にならなくなるくらい、私がラヴィーをかわいくしてあげる」と約束した。

 その後、彼女の護衛らしい方々が彼女を迎えにきて一緒に帰って行った。見た目は質素のように見えて、一目でいいものだとわかる生地を使ったワンピースを着ていたし、どこか名家のご令嬢だろうという予測はしていたからさして驚かなかった。
 お礼をしたいからと名前と居住地を聞かれたが、私は彼女の話をただ聞いていただけなので固辞した。その代わり、私はきっと化粧品を売る仕事に就いてみせるから、その夢が叶ったら私の職場で再会しようと約束した。
 最後に泣きそうな笑顔で「お姉さん、ありがとう!」と言ってもらえた。その言葉だけで充分だった。女の子からの「ありがとう」は昔から私のパワーの源だから。

✳︎✳︎✳︎

 前世では、私は神上こうがみ愛梨あいりという名前だった。一人っ子で、体の弱い母親と二人暮らしだった。父親は私が幼い頃に病気で亡くなったと聞いた。
 母は女手一つで、文字通り身をにして一生懸命働いてくれたが、無理がたたってもともと弱かった体を壊し、私が高校生の頃に亡くなってしまった。

 それから私は児童養護施設に身を寄せ、新聞奨学生として働きながらもなんとか高校を卒業し、新聞社から推薦状をもらって面接を受けた某化粧品メーカーの販売会社に雇ってもらえた。職種は美容部員だった。

 美容部員として働く日々は、もちろん大変なこともあったけれど、毎日キラキラしていて別世界のようだった。今まで基礎化粧品を買って肌の手入れをする余裕もなかったし、メイクに気を使う余裕もなかったから、学ぶこと全てが新しく、楽しかったのでどんどん吸収できた。
 最初は座学で基礎をみっちり身につけ、そしていざ実践となったときの感動たるや……!
 初めて基礎化粧品をきちんとつけたときの手に吸い付くような肌のしっとり感。ぎこちない手つきで初めてベースから順に目元、口元までフルでメイクしたときの別人になれたような高揚感。あの感動は一生忘れない。私が初めて女性として生まれた幸せを感じた瞬間だった。それから私は化粧の魅力に取り憑かれた。美容部員は私の天職だったのだ。
 
 記憶を探っていると前世と今が混在しそうになっていたが、今まで過ごしてきた日々も自分が生きてきた記憶として残っている。
 
 今の私はアイリーン・グレン。グレン伯爵家の次女。絹糸のように美しい金色のストレートロングの髪に色白の肌、ぱっちり二重の理想的なアーモンドアイと薔薇色の唇。私の容姿は前世の黒髪黒目の姿からはかけ離れている。
 前世では真っ黒だった髪の毛は、染めようにも食費や生活費を考えると難しくて、黒以外の髪色を楽しむことに密かに憧れていたのだ。前世を思い出した今、地毛がこんなにきれいな金色なんて夢みたいで興奮した。何より、配置や形は整っているが、全体的に化粧映えしそうな色素薄めの顔なのでメイクがしたくてうずうずしている。
 
 今、私は前世でいう西洋風の土地に住んでいる。でも「アイレヴ王国」という前世では聞いたことがない王国の伯爵家に生まれた貴族令嬢なのだ。
 どうやらここは前世で暮らしていた世界とは別の世界であるようだった。貴族とは華やかで優雅な生活をしているイメージだったのだけれど、私はそういう立場には当てはまらないらしい。というのも、姉のソフィアはグレン伯爵夫人が母親なのだけれど、私の母親は違ったからだ。
 私はグレン伯爵とその妻とは別の女性との間に生まれた「非嫡出子」という存在なのだと聞いた。私の産みの母親は既に亡くなっているため、仕方なくグレン伯爵が引き取ってくれたようなのだ。けれど、そういう場合はそのまま捨て置かれる子も多い中、引き取ってくれたことは本当にありがたいと思っている。グレン伯爵夫人はさぞ心中穏やかでなかっただろうと察せられる。
 そういう経緯もあって家族とは仲がいいとは言えないけれど、ものすごく美人で素敵なお姉様がいるなんて、前世一人っ子だった私にとって夢のような環境である。つまり、私はとても幸せです!
 
 ……そう、幸せな環境なのは間違いないのだけれど、私はグレン伯爵家の本邸ではなく、その敷地内にある「離れ」と呼ばれる場所に住んでいる。なので、残念ながら家族と関わることはほぼないのだ。
 この「離れ」は、もとは庭の手入れに使う道具が収められていた倉庫なのだが、手狭になってきたことを理由に別の場所に新しいものが建てられた際、その後の扱いが決まらず放置されたままになっていたのだ。そこに十歳の私がやってきて、ちょうどいいとばかりに私の部屋として充てがわれることになったようなのである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~

北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!** 「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」  侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。 「あなたの侍女になります」 「本気か?」    匿ってもらうだけの女になりたくない。  レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。  一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。  レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。 ※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません) ※設定はゆるふわ。 ※3万文字で終わります ※全話投稿済です

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

異世界転生公爵令嬢は、オタク知識で世界を救う。

ふわふわ
恋愛
過労死したオタク女子SE・桜井美咲は、アストラル王国の公爵令嬢エリアナとして転生。 前世知識フル装備でEDTA(重金属解毒)、ペニシリン、輸血、輪作・土壌改良、下水道整備、時計や文字の改良まで――「ラノベで読んだ」「ゲームで見た」を現実にして、疫病と貧困にあえぐ世界を丸ごとアップデートしていく。 婚約破棄→ザマァから始まり、医学革命・農業革命・衛生革命で「狂気のお嬢様」呼ばわりから一転“聖女様”に。 国家間の緊張が高まる中、平和のために隣国アリディアの第一王子レオナルド(5歳→6歳)と政略婚約→結婚へ。 無邪気で健気な“甘えん坊王子”に日々萌え悶えつつも、彼の未来の王としての成長を支え合う「清らかで温かい夫婦日常」と「社会を良くする小さな革命」を描く、爽快×癒しの異世界恋愛ザマァ物語。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

【完結】悪役令嬢は折られたフラグに気が付かない〜王子たちは悪役令嬢の平穏を守れるのか!?〜【全23話+おまけ2話】

早奈恵
恋愛
エドウィン王子から婚約破棄されて、修道院でいじめ抜かれて死んでしまう予知夢を見た公爵令嬢アデリアーナは、男爵令嬢のパナピーアに誘惑されてしまうはずの攻略対象者との出会いを邪魔して、予知夢を回避できるのか試そうとする。 婚約破棄への道を自分で潰すつもりなのに、現実は何だか予知夢の内容とどんどんかけ離れて、知らないうちに話が進んでいき……。 宰相インテリ子息、騎士団長の脳筋子息、実家を継ぐために養子になったわんこ系義弟、そして婚約者の王太子エドウィンが頑張る話。 *リハビリに短編を書く予定が中編くらいになってしまいましたが、すでにラストまで書き終えている完結確約作品です。全23話+おまけ2話、よろしくお願いします。 *短い期間ですがHOTランキング1位に到達した作品です。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...